タグ別アーカイブ: R11s

oppo R11sが日本で売れないこれだけの理由

世界シェアでTOP5に食い込んでいる中国のスマホメーカーoppoが、2018/02/09にR11sを日本で発売した。あえてハイエンド機種で日本市場に参入した理由がまったく分からない。

この際、oppo R11sが日本で売れない理由として考えつく論点をすべて書いておく。

日本市場の特殊性

日本のスマホ市場はiPhoneの寡占状態だ。その理由は日本のアメリカ好きと、日本社会の同調圧力、つまり「みんな同じでなきゃ」という考え方の強さだ。statcounterによれば日本の2017/01~2018/01メーカー別シェアは以下のとおり。

oppo R11sは超高画質のインカメラと美顔機能が売りの一つだが、若い女性の友だちグループを考えてみよう。ほぼ全員iPhoneのなかで一人だけoppo R11sを持っていたとする。

「何それ?」
「尾っぽ?」
「なんかウラにoppoって書いてあるし」
「なんで中国なの?」
「個人情報とか盗まれない?」
「中国製で6万とか高すぎでしょ」
「なんでiPhoneじゃなくてそれ買ったの?」

このように日本社会の同調圧力によってoppoユーザは気まずくなる。これが中学、高校ならイジメになる。

スマホに限らず日本人が商品を選ぶとき、重要な判断基準の一つは「みんなが使っていて安心」「身近に使っている人がいる」だ。

「テレビのコマーシャルでやってる」というのも「みんなが使っていて安心」と同じことだ。「CMでやってた」という共通の話題になり、共通の話題になれば一人だけヘンということにならない。

逆に「誰も使っていないけれど買う」ことがプラス評価されるのは、その商品が欧米製であり、カッコいいアーリーアダプターと認識してもらえる場合だけだ。

中国をふくむ旧東側諸国の製品を「誰も使っていないけど買う」場合、普通の日本人にはヘンな人と見られる。

例えば日本の量販店のSIMフリースマホのコーナーにモトローラーがある。ほとんどの日本人はレノボではなく米国製だと思う。また、ASUSは台湾製と聞いて「台湾は親日国だ」と安心する。

筆者自身はiPhoneが嫌いで、Xiaomi、Oneplus大好きだが、自分が中華スマホ好きであることを職場で話したいと思わない。ヘンな奴だと思われるだけだ。

筆者はAndroidがまだ2.xの時代から「中華パッド」を中国から取り寄せて、到着翌日に動かなくなるトラブルを楽しんでいたし、まだ低品質だった頃のHUAWEIやZTEのローエンドスマホも使っていた。

その後たった五、六年でXiaomiのような価格性能比の高いスマホが出てきたことに驚き、今でも中華スマホを使っている。Xiaomi Redmi Noteシリーズに至っては、2、3、4の3台を買っている。

ただ、筆者が中華スマホを使いこなせるのは、IT関係の仕事をしており、中国語と英語ができ、自力で端末をUnlockしてROMの書き換えをすることができるからだ。

自撮り訴求の間違い

oppo R11sは自撮り機能だけが同じ中華スマホのHUAWEIハイエンド機に勝てる唯一の点といえる。

自撮りしたい人は若い女性だが、日本で若い女性に自撮り機能を訴えてもあまり響かない理由がある。それは日本人が個人情報やプライバシーに異常に敏感で、自撮りを公開したがらないからだ。

中国の女性は日本人の筆者からすると、そこまでプライバシーをさらして大丈夫?と思うほど、新浪微博で自撮りをツイートしまくっている。女性が自拍杆(自撮り棒)で街中で直播(生放送)してプライバシーを晒すなど日本では考えられない。

日本の若い女性は自撮りの背景などから住所を割り出され、ストーカーなどの犯罪にあうことを恐れるので、自撮りを貼るとしてもせいぜいLINEの仲間内だけだ。

おそらく自分の顔をSNSに平気でさらすのは、Facebookなどで人間関係を広げたい中年男性だろう。もちろん中年男性がわざわざ自撮りのために6万円もする中国スマホを買うことはない。

「カメラスマホ」というキャッチコピー

R11sはメインカメラも高機能とのことで、レンズが2つあり、明るい場合と暗い場合でレンズが自動で切り替わったり、ズーム機能がなくても背景のボケ味を作れたりするようだ。

ただ、そこまで写真の仕上がりにこだわる消費者が、デジタル加工されたボケ味と、ミラーレス含む一眼レフカメラのレンズを開放絞りにしたときの、本物の光学的なボケ味のどちらにお金を出すか。

間違いなくスマホは安く済ませて、コンパクトデジカメのハイエンドか、ミラーレス一眼レフのローエンドを買う。わざわざ中華スマホのメインカメラにこだわる理由はどこにもない。

デジタル一眼レフを単独で購入できない所得水準の国なら、電話にもなるし、高画質の写真も撮れるし、自撮りもきれいに撮れるR11sは売れるだろう。しかし日本の所得水準には当てはまらない。

サポート体制

スマホの使い方が分からなくなったら、普通の日本人は家族か友だちに聞く。そのため家族や友だちと同じ機種を買うことになる。

日本市場がiPhone寡占状態になっている目立たない理由の一つは、人に聞くのが恥ずかしい、申し訳ない、という日本人の心情だ。

質問できる家族や友だちがいなくても、量販店の店頭で質問すれば店員さんが親切に教えてくれる。店員さんも大半がiPhoneユーザだからだ。

これがoppoの「ColorOS」となると、誰に聞いても分からない事態になる。ネットを検索して自力で解決できる人しか使えない。

日本市場に参入するなら、せめて最近のAndroid One端末のように素のAndroidにすべきだ。XiaomiでさえXiaomi Mi A1でMIUIでない端末を発売したのだから。

中国と日本の好感度ギャップ

しばしばニュースになるが、全世界の先進国で日本だけが中国に対する好感度が異常に低い。

↓日本の中国に対する好感度は10パーセント台。

↓日本の米国に対する好感度は約6割。

今回の日本市場進出で、oppo経営層は中国がどれだけ日本人から嫌われているか理解していないのだろうか。

日本人はBtoBの仕事をするときは中国企業と取引できる。しかし一般消費者が中国からBtoCでものやサービスを購入することはない。消費者としての日本人は中国を信用していない。

最近、日本の一部の論者がむしろ中国企業の方が効率的で意思決定が速く、日本企業より優れているのではないか、という論調もあるが、これも企業間のビジネスの話しで、一般消費者の中国に対する好感度とは無関係だ。

筆者の勤務先は中国なしには事業が成立しないほど密接な取引関係にあるが、昼休みになると平気で中国について偏見に満ちた雑談をする社員がいる。仕事中とプライベートで、日本人が中国に見せる顔は違う。

プロモーション手段の限界

日本で商品やサービスの知名度を高めようと思えば、リスクをとっても著名タレントでテレビCMを打つしかない。その理由の一つはすでに述べた。みんな知ってるから安心という同調圧力だ。

日本ではネットの口コミはあくまでマスメディアが起点となった補完的役割しか果たさず、商品やサービスの知名度や世間の評価のほとんどはキー局のテレビCMで決まる。

日本はますます東京一極集中が進んでおり、かつテレビCMの制作は一部広告代理店の寡占状態にある。

したがって日本のベンチャー企業が短期間に知名度を上げるには、無理して広告宣伝費を使ってでも有名タレントを起用したTVコマーシャルを打たざるを得ない。

国際WiFiルータのレンタルサービス「イモトWiFi」や、名刺管理の「Sansan」の「早く言ってよ」などがその典型だ。

ただ、仮にoppoが口コミ戦略ではなくテレビCMを打とうとしても、中国製品のCM出演オファーにOKを出すタレント事務所は少ないだろう。中国製品の宣伝をするだけで右寄りのネット世論に叩かれる。

oppoはテレビCMを打つとすれば、日本人が知っている華人タレントを連れてくるしかないが、一般の日本人が知っている華人タレントは少ない。香港か台湾の華人タレントになるだろう。

日本のSIMフリースマホ市場でHUAWEIが数パーセントながらシェアを得たのは、BtoBの世界でモバイルWiFiルータの実績があり、会社員の間でじわじわと知名度を高めてきたからだ。

もちろん今はWiFiルータはスマホのテザリングで代替できるので、oppoがここから参入することはできない。やはりローエンド端末から参入するしか方法がないのだ。

インタビュー記事の問題点をすべて列挙

その他の問題点について、ここまで書いたこととかなり重複するが、下記リンク先にあるoppo経営層のインタビュー記事にもとづいて逐一指摘してみる。記事の内容がoppoの回答を正確に書いている前提だが。

「OPPO日本参入、キャリア対応や防水性能など日本戦略を聞く」(ケータイwatch 2018/01/31 21:41)

3キャリアや、MVNOとの交渉

キャリア、MVNOとの交渉で、通信料とセットで端末価格を下げられればR11sはある程度売れる可能性がある。

それを先にやらずに日本市場に参入して、走りながら考えるのが中国企業の動きの速さなのかもしれないが、あまりに拙速すぎるし、一般の日本人は「日本人をなめているのか」と感じるだろう。

防水やFelica

防水はそれほどニーズが高いとは思えないが、6万円という価格帯でFelica機能がないのは日本市場では大きなマイナスだ。非接触IC機能について「ニーズに応じて提供していきたい」というのんびりした回答は、本気で日本市場に参入するつもりがないと解釈される。

VoLTE、IOTについて

この部分の回答は具体性がなく、3大キャリアと本気で提携する気はないと誤解されるおそれがある。

日本のセルフィ―文化

この部分はインタビュアーの質問が間違っている。

日本には昔からプリクラがあるので、他の国のセルフィ―文化とは違うかもしれないと質問しているが、日本のプリクラの延長線上にあるのは自撮りスマホではなく、「B612」や「SNOW」などのアプリだ。

こうしたアプリが若い女性の間に流行しているのは日本も中国も同じだ。oppo R11sが狙っている高機能な自撮り・美顔機能は、プリクラとは関係ない。

プリクラやこれらアプリのように極端な加工ではなく、ナチュラルかつ美しく見せるからこそR11sのような高画質インカメラと高度な画像編集技術が必要なのだ。

ただ、ナチュラルな美顔機能には「B612」や「SNOW」のような遊び心がない。若い女性がわざわざ6万円も出して自撮り・美顔を売りにしたスマホを買えば、たとえ中国メーカーでなくても「自分大好きの痛い子」と思われる。

アプリなら高くても数百円で入手でき、スマホのカメラ自体の性能はそこそこあれば十分だ。

質問そのものが間違っているので、「仮に”プリクラ”が必要なら、開発していきたい」と回答するのも間違いだ。プリクラ以外の路線で、日本の若い女性に自撮りのニーズはない。「B612」に類するアプリの機能のほうが重要だ。

気軽に撮れるのが若者、一般大衆にとって重要

「我々のカメラフォンは、気軽に撮れる。それが、最も多くのユーザーにとって必要な機能。若い人、多くの一般大衆にとって重要な事だ」とあるが、気軽に撮るにしては、若者や一般大衆にとって6万円は気軽な価格ではない。

ここまで述べたようにoppoの「カメラフォン」は日本に存在しない市場だ。気軽に撮るなら既存のスマホのカメラで十分だし、不満ならコンパクトデジカメやミラーレス一眼のローエンド機種を買う。

「この点で日本のユーザーに受け入れられる自信はある」と回答している点に、日本市場を理解していないことがはっきり表れている。

5年以内に4位

iPhoneとソニーには勝てないことはoppoも理解しているはずなので、日本市場ではシャープ、富士通、京セラのスマホ事業の今後次第になる。

↓こちらが日本の2017年の年間ベンダー別出荷台数。IDC調べ。

富士通はすでにスマホ事業を売却したが「arrows」ブランドは残る。京セラはKDDIと資本関係があるので早期の撤退は考えづらい。シャープはすでに鴻海傘下だがブランド力は残っている。

これより下はHUAWEI、ASUS、SAMSUNGとなるので、oppoは少なくともHUAWEIとASUSに勝つ必要がある。

ただ、HUAWEI、ASUSはローエンドでシェアを獲得しており、ローエンドで勝負していないのはSAMSUNGだけだが、SAMSUNGはハイエンドに特化しすぎたせいでiPhoneとの競争で日本でシェアを落とした。

仮にシャープ、富士通、京セラがシェアを落としたとして、その後もっとも可能性が高いのはさらにiPhoneの寡占化が進むことだろう。

先進国・地域への進出は初めてではない

「先進国・地域への進出は、初めてではない。オーストラリアやシンガポール、台湾などにも参入しており、オーストラリアではキャリアを通じて提供している」とある。

まず一般の日本人からすると台湾を「地域」と呼んでいる時点で違和感があるだろう。オーストラリア、シンガポール、台湾は日本人にとってすべて「先進国」であり、「先進地域」は一つもない。

それは余談として、2017/01~2018/01の1年間、オーストラリアはAppleとSAMSUNGの寡占状態で、キャリアを通じて提供しているのにい数パーセントではoppoが成功しているとは言えない。

同期間、シンガポールはAppleを除けばSAMSUNG、Xiaomiが上位で、確かにoppoが5%強のシェアを持っているが、華人が多いという特殊事情がある。

同期間、台湾はApple、SAMSUNGの次は地元のHTC、ASUSと続き、さすが「親日国」でソニーのシェアも高い。oppoは健闘しているが、シェアはシンガポールと変わりない。

いずれも日本進出のお手本になる事例ではないことは明らかだ。

日本ユーザーとのコミュニケーションが新たな海外市場の開拓につながる

日本ユーザーとのコミュニケーションが新たな海外市場の開拓につながらない理由は以下の3点。

・日本スマホ市場は極端なiPhone寡占であること。
・世界でほぼ唯一、日本メーカーのスマホが上位を占めていること。
・中国に対する日本人の好感度が低すぎること。

ここまで特殊な日本市場の経験は他の国では活かせない。

日本は広告を単純に見て買い替える市場ではない

たしかに中国製スマホではなおさら広告で買い替えは起こらない。日本でHUAWEIが数パーセントのシェアを得ているのは、ヤフーモバイルやMVNO業者と提携しているからだ。

「美術館や旅行先などの、実際にスマートフォンが活用される場所」の意味が分からない。日本や欧米の美術館は中国と違って原則撮影禁止だ。そんなことも知らずに日本市場に進出しているのだろうか。

また旅行先は自撮りではなく風景を中心にメインカメラを活用する場所である。

ふつう旅行先できっちり写真を残したい場合、コンデジや一眼を持っていき、スマホのカメラに頼らないだろう。性別、年齢に関わらず、いっしょに旅行に行く誰かが必ずコンパクトデジカメか一眼レフを持っているものだ。

また、年に数回いくだけの美術館や旅行先だけのために、普段づかいのスマホを買い替えるはずがない。

「実際にスマートフォンが活用される場所」は、当然「美術館や旅行先」ではなく通勤・通学の電車であり、近所のショッピングモールであり、大都市の街中である。

この部分の回答はoppo経営層側に「カメラスマホ」という自社製品の特長ありきで、そこから「美術館や旅行先」が「実際にスマートフォンが活用される場所」であるとする誤った結論を導いている。

プロダクトアウトの発想にもとづく誤りだ。

デザインにこだわったスーパー旗艦店なら展開余地がある

渋谷、表参道などに旗艦店を出してみるとよい。そういう街を歩いている日本人は間違いなくiPhoneのハイエンド機のユーザである。

「尾っぽ(oppo)」の旗艦店に間違って足を踏み入れても、中国製だと分かった瞬間に「どうしてiPhoneから中国製のスマホに買い替えなきゃいけないの?」とほとんどの客はすぐ店を出ていく。

サポート拠点として店頭サービスはない

上述のように日本人はまず家族や友だちに使い方を聞く。結果として家族や友だちつながりでiPhoneの寡占状態が出来上がっている。家族や友だちに聞けない人は、近所の量販店の店頭で聞く。

白物家電やAV家電と違って、スマホは毎日肌身離さず使うもので、電話として使えないのは致命的だ。使い方を聞きたいときは、画面を見せながらすぐに聞きたい。

したがってサポートが電話だけというのは365日であっても日本市場では無意味である。

ターゲットは若者で、具体的には20~40代に絞っている

他の年代と比較して、この年齢層はもっとも中国嫌いが多い。50~60代なら日中関係が良好だった1970年代の記憶があるので中国アレルギーは少ない。

何度も書いているが、日本は世界でも突出して中国に対する好感度が低い国である。またネットのバズ・マーケティングはあっという間に反中・嫌韓の右寄りに歪められる。

この年齢層でoppoに興味をもつのは、筆者のような特殊な人種に限られる。

40代以上でデザインや個性を追求している人もターゲットになる

40代以上でデザインや個性を追求している人は間違いなくiPhoneユーザになる。デザインを追及するために中国製スマホを買う日本人はいないと断言できる。

また、個性を追求するiPhoneユーザはApple製品のエコシステムの一部としてiPhoneを活用する。Apple製品はそれ自体で個性をアピールするポーズになるからだ。

個性は製品で表現されるのではなく、その製品を使って何をするかで表現される。中国製スマホにAppleのような生態系はなく、自己表現の道具には使えない。

oppoのような中華スマホを愛する筆者のような日本人は「個性を追求」しているのではなく、ただの「ヘンな人」である。

何をどう勘違いすれば、「iPhoneが人気ということは、デザインや、ユーザー体験を重視しているユーザーが多い」からoppoが売れる余地があると判断できるのか、日本人には全く理解できない。

iPhoneに似ているColorOSを見た日本人のほとんどが「また中国がパクリってる」と思うはずだ。

目標は、市場のニーズを理解し、それに基づいて開発していくこと

すでに日本市場のニーズを誤解している。まずは誤解しているという自覚を持ち、迅速にマーケティング戦略を修正する必要がある。

今すぐそれが出来ないなら、反中感情が世界でも例外的に強い日本の一般消費者が、6万円もする中国産の「尾っぽ」を購入するとは考えづらい。