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ヤマト運輸のトホホな中国進出

今朝の情報番組で、香港に進出したヤマト運輸の社員が、孤軍奮闘する様子が紹介されていた。
正直な感想を言えば、ヤマト運輸の中国大陸担当の営業統括責任者は、どうかしているのではないかと思った。
香港へ単身赴任したこの男性社員が、とてもマジメで、日本では非常に有能な人材であることは、映像からも見て取れた。
そんな社員を、北京語や広東語や英語のごく基本的な教育さえせず、しかも単身赴任で香港に送り込む。
香港支店には、日本人社員は彼を含めて2人だけ、日本語のできる現地通訳は1人しかいない。そんな場所へ丸腰で赴任させ、現地スタッフの教育から新規取引先の開拓までの全責任を負わせるのだ。
中国に単身赴任して、うつ病になる日本人サラリーマンが多いのも、なるほどとうなずける。ヤマト運輸のような大企業さえ、こんなバカげたことをするのだから。
北京語も広東語も英語もできないこの社員は、当然、現地採用スタッフとほとんどコミュニケーションができない。その様子も番組で紹介されていた。
そんな日本人社員が、香港の現地スタッフを、ヤマト運輸の名に恥じないサービスレベルにまで教育するのに、いったいどれだけの時間がかかるか。
それに比べれば、例えば日本に3年程度の滞在経験があり、かんたんな日本語なら不自由なく話せる中国人留学生を、インターンシップのような形で期間を定めて採用し、香港に駐在させるコストと、どれほど差があるのか。
もっと言えば、日本で中国人留学生を雇用するのは、ヤマト運輸にとってもメリットがあるのではないか。
これから中国大陸へ本格的に進出するこのタイミングで、期間限定であれ中国人を受け入れておけば、ヤマト運輸本社にとっても、中国人社員をどのように管理すればよいか、人事管理上のノウハウが蓄積される。
それに、日本の本社で中国人を採用した実績としてアピールすれば、今後、中国で現地スタッフを採用するとき、当然、より有能な人材を獲得しやすくなるだろう。
丸腰の日本人社員をいきなり香港へ単身赴任させるのに比べて、どう考えても、日本で雇用した中国人を通訳としてつける方が、ヤマト運輸にとってメリットが大きい。
それとも、ヤマト運輸は慢心しているのだろうか。
FedExなど、すでに香港で実績のある外資系に比べても、ヤマト運輸は日本企業であるというだけで、中国で圧倒的なブランド力があるという、とんでもない勘違いをしているのだろうか。
番組の中でも、かの日本人社員と現地スタッフが、香港の街中を、クロネコのマークがついた緑色の台車を押して歩きまわるのを、現地の人たちがけげんな目で追っている様子が映っていた。
いつまでも高度経済成長期のイケイケドンドン的な、頭の悪い体育会系ノリで、日本のサービス業が海外でも通用すると考えているらしいのは、いかにも滑稽だ。

自宅PCの静音化を中国ツイッターでつぶやいてみたら...

昨日ここにに書いた自宅PCの静音化について、中国ツイッター(新浪微博)で、ケースファンと電源交換のことだけにしぼってつぶやいたら、意外にちゃんと反応がかえってきて驚いた。
中国ツイッターでパソコンの話題をつぶやいたのは初めてだった。いつもながら速攻でかえってきたコメントは以下のとおり。
R君 「自分で付けたの?」
@R君 「そうだよ~」
P君 「何ワットの電源?」
@P君 「700W。旧電源は400W、新電源は700W。だから新電源のファンの回転数は上がらず、静かというわけ」
P君 「なるほど~ふふ~うちのパソコンはどうしよう~ホコリをとらなきゃ~ケースの中はホコリだらけで、もう花でも植えられそうだよ~汗」
G君 「gooood~~~」
C君 「僕のPCのファンは交換すればするほど、うるさくなるよ、まったく」
V君 「いいねぇ~」
S君 「君、パソコンも得意だったの!?」
R君 「ふふ、ほんと才能あるね」
L君 「700W…..君のパソコンにはいったい何が入ってるの」
これで分かるのは、中国大陸のalanファンの傾向(笑)。

しつこいようだがalanはエイベックス所属、中国四川省出身、チベット族の女性歌手。エイベックスが北京で初めて開いたオーディションで、ただ一人選ばれた、人民解放軍芸術学院出身の音楽エリートである。
ただ、性格的には、いわゆる「天然ボケ」。カタコトの日本語も可愛すぎると評判。
僕がいつも中国ツイッターや、中国2ちゃんねる(検索エンジン「百度パイドゥ」の掲示板サービス)でやりとりしているalanファンは、10代から20代の学生さんやホワイトカラーがほとんどだ。女性ファンも多い。
日本で単身がんばっている中国人のalanを応援するため、彼らの給与水準からするとかなり高価な日本版CDを買い集めるくらいだから、中国の都市部でも恵まれた生活環境にある人たちだと思う。
なかでもいちばん頻繁にやりとりするP君には、中国版「ジャスミン革命」騒動について、こことここには近づかない方がいいよと、本家ツイッターの方で注意してあげた。
ご存知のように中国大陸からでもプロキシーを使えば、本家ツイッター(Twitter)が使える。
P君からの返事は、「じゃあ騒ぎの見物(=囲観)にでも行こうかな。でもそんなの僕っぽくないから、家でじっとしてるよ」。
休日出勤も当たり前という多忙な会社員で、休日の趣味はニセモノではない、日本製の本物のガンプラづくり、中島美嘉の曲は『FIND THE WAY』なら知っている、ガンダムのエンディング曲だから、というP君にとって、中国版「ジャスミン革命」など、あまり関係ないことなのだ。

続・NHKニュースウォッチ9に登場した安替(anti)なる人物の謎

先日、NHKニュースウォッチ9に出演していた,安替なる中国人ジャーナリストの件。日本版ニューズウィーク誌のウェブサイトで、決定的な記事を見つけてしまった。
『反日デモの知られざるメカニズム』(日本版NEWSWEEK 2010/10/26 12:02)
この記事を書いた長岡義博氏はいちおう信頼して、安替氏の講演会の内容を正確に伝えていると見なす。この記事から一部を引用する。
「中国人ジャーナリストでブロガーの安替氏が先日、東京で講演会を開いた。その中で、南京生まれである安替が興味深いことを言っていた。曰く、『ネットで情報を得るまでは、世の中のすべての悪いことは日本が起こしていると思っていた』『だから、中国では放っておけば毎日どこかの都市で反日デモが起きる』」
時期的に尖閣諸島問題に関連した発言に違いないのだが、あたかも中国のデモの大半が反日を動機としているかのような見方は、たしかに欧米や日本の反中勢力に受けがいいだろう。
マイケル・ムーアの『華氏911』のあら探しをするニューズウィーク誌が、米国の保守勢力よりの意見を代弁していることは間違いない。
そんなニューズウィーク誌にとって、安替氏の反中世論をあおるような講演会の内容は、尖閣諸島問題がホットだった2010/10/26頃にはうってつけだったに違いない。
つまり、安替氏は決して中国のふつうの市民の意見を代表しているわけではなく、欧米人や日本人に分かりやすい、反自由主義的な中国像を伝えているだけ、ということだ。
もっと言えば、安替氏は、どういうことをしゃべれば自由主義国のメディアにうけるか、そして自分がジャーナリストとして食べていけるかを知った上で、確信犯的に語っている。
その安替氏の意見を、中国国内に「潜伏」(?)するリベラルな知識人として紹介する、ニューズウィーク誌やNHKのような視点は、はっきり言ってナイーブすぎるだろう。
新浪微博で安替氏について僕にコメントをくれた、日本語の堪能な中国人が、人権方面の活動をしてるからでしょ、と言い、「こいつ新浪微博まで持ってたのか」と言い捨てた理由も、たぶんそこにある。
中国政府の検閲をくぐりぬけて、日常的に日本や米国のネットに接続し、日本語や英語が読める中国人にとって、安替氏のような人物は、中国から自由主義国に脱出した「モノを言う」中国人の典型例の一つでしかない、ということだ。
ふつうの中国人にとっては、きっと日本メディアが反中言説をあおったり、安替氏のような「自由主義寄生型中国人ジャーナリスト」を持ち上げたりしていることよりも、日々の生活で感じる問題の方がはるかに重要だということだ。
そして、時代はすでに変わっていて、仮に北京の共産党政府が倒れたとしても、仮に「言論の自由」(ところで日本に言論の自由などあるのだろうか?)を手に入れたとしても、日々感じている問題が自動的に解決するわけでもないことを、すでに知っているのだ。
ほとんどの日本人や欧米人は、中国人に対して、大いなる「啓蒙主義的勘違い」をしているのだろう。つまり、こういう勘違いだ。
「中国には言論の自由がないので、ほとんどの中国人は、安替氏のような考えを持ったことさえないに違いない。かわいそうだ」
公に発言する自由がないこと、すなわち、自由な考えを持つことができない、という、大いなる勘違いである。仮に、中国人が自由な考えを持つことができないなら、どうして自国政府を冷笑できるだろうか。
一定の教育水準をもち、国営放送のCCTVを「CCAV」(AVは中国ではアダルトビデオのこと)と呼び、国内の新聞やテレビの情報を話半分に受け取る中国人の方が、産経新聞または朝日新聞の記事をうのみにする一部の日本人より、よほどメディアリテラシーが鍛えられている、と言ったら言い過ぎだろうか。
まあ、欧米や日本に、中国に対する「啓蒙主義的勘違い」が存在する限り、安替氏のような「中国人なのに自由主義に啓蒙されている!すごい!」言論人は、食いぶちに困らないので、悪くはないのだけれど。
>>「NHKニュースウォッチ9に登場した安替(anti)なる人物の謎」

NHKニュースウォッチ9に登場した安替(anti)なる人物の謎

うむむ。昨日(2011/01/25)のNHKの9時のニュース、中国特集『巨竜 中国はどこへ』に登場した「気鋭の論客」安替なる人物、いったい何者だったのだろうか。
気になって中国の検索エンジン「百度」で検索してみると、中国版のウィキペディアのような「百度百科」には、こんなあっさりした記述しかない。
安替 百度百科
本名は趙静なので、安替はペンネーム。安替の中国語発音をピンインで書くと「anti」となるので、やはり反体制を暗示させるペンネームをわざと使っているようだ。
実は、僕は自分で「安替=anti」というゴロ合わせに気づいたわけではない。
昨日テレビを見ながら、中国のマイクロブログ「新浪微博」でいつもやりとりしている中国人のネット友だちに「いまNHKの9時のニュースに安替っていう人が出演してるけど、知ってますか?」とつぶやい。
すると、いつもどおりすぐにコメントがいくつか届いたのだが、そのうち3人が氏の名前を「anti」と書き換えて来たのだ。
これは例によって、欧米や日本のメディアは自由主義的な考えの中国人ということでもてはやすけれど、中国では見向きもされていない「かませ犬」かもしれない。
ちなみに今日(2011/01/26)になって、中国人のネット友だち2人から、安替氏を知っているというコメントがあった。
一人は中国の人権方面の活動家だというコメント。中国マイクロブログで「人権」と入力すると検閲にあうので、この友だちはわざわざ「(人,,,権,,,)」と書いてきていた。
もう一人からは、安替氏は「米帝」(米国のこと)に行くとき、本名を「anti」という欧米式の名前に改め、その後、中国語で音訳して安替という名前にした、という情報を頂いた。
ちなみに、安替氏のツイッターは下記のとおり。
安替氏のツイッター
なんだかリツイートばっかりのような気がするし、安替氏の新浪ブログも2010/09以降更新されていないし、本当に気鋭の論客なのか、ますますあやしい。
本当に気鋭の論客なら、中国政府から目をつけられて、とっくに別件逮捕で有罪になり、軟禁されていてもおかしくなさそうだからだ。
ただ、僕の中国マイクロブログの友だちも、ほぼ全員が日本の芸能界やアニメ大好きな20代の皆さんなので、彼らが安替氏を知らないからと言って、安替氏が中国で無名だとは言い切れない。
要するに、中国は一人の人物で代表できるような一枚岩の国ではないということだろう。自分の見ている中国は、中国のごく一部でしかなく、それをもって「今の中国は…」などと論じることは誰にもできない。
昨日のNHKの中国特集でも、貧富の差が拡大し、中国政府は民衆の経済格差に対する不満が反政府運動に向かうことを怖れていると伝えていた。
個人的には、こんな周知の事実を、NHKニュースの中国特集が、わざわざメインコメンテーターを中国出張させてまで伝えることもないだろと思った。
しかし、一部の中国人が中国全体を代表しているかのような論調は、日本や欧米メディアに根強いので、同じことをくり返し伝える必要があるのだろう。
僕ら日本人が「誰それ?」と思うような人物を、米『タイム』誌が大々的に取り上げたりするが、中国人が「誰それ?」と思う安替氏のような人物を、NHKが大々的に取り上げたりすることもある。
その程度のささいな誤解かもしれない。
>>「続・NHKニュースウォッチ9に登場した安替(anti)なる人物の謎」

中国と日本の言論の自由の差は程度の差でしかない

ツイッターで風刺ツイートをした中国大陸の女性が、一年間の強制労働を命じられたという報道があった。
情報源の英国BBC中国語ニュースはこちら「中国女推友推特一句話被判労教(中国の女性ツイッター利用者がひとことのツイートで労働教育の判決)」(2010/11/18 14:54 GMT)
ITmedia Newsのページはこちら「風刺ツイートをRTした中国の女性、強制労働命じられる」(2010/11/19 19:12 JST)
僕がこのニュースを知ったKinbricks Nowのページはこちら「中国政府のツイッター弾圧=たった5文字のつぶやきで1年間の勾留」(2010/11/20)
当然、英国や日本の報道では、この中国人女性がいくら中国大陸の反日デモをはやし立てるようなツイートをしたからといって、それだけで一年間の労働教育の判決を下した中国政府の決定は非人道的だ、という主旨になる。
たぶん、ほとんどの欧米人や日本人は、そういう主旨でこの報道を解釈すると思う。
僕も確かに中国司法当局の判決は不当に重すぎると考え、いつも中国大陸から敏感詞というプロキシーサイト経由でツイッターに入って来ている、中国人のネット友達に、「ツイッターでツイートするときは、注意してね~」と、あえて軽いノリで、上記の英国BBCの中国語ニュースのページのURLを教えてあげた。
すると返ってきた3つの返信が、3つとも全く予想に反する内容だったので、驚いてしまった。
彼らは3人とも、この女性を、冗談にも反日デモに参加した「憤青」、つまり日本で言えば極右・極左思想の若者を扇動したのだから、彼女も「憤青」と同じく、反社会的人物だと解釈していたのだ。
なので、彼女が労働教育の刑に処せられたのは当然であり、僕たちは彼女のような反社会的なことを、ツイッターで軽々しくつぶやかないように注意するよ、アドバイスありがとう、という意味の返信をしてきたのである。
同じ中国人女性歌手のファンどうしとして、今までおたがいに理解し合っていると思いこんで、ツイッターや、中国のマイクロブログ「新浪微博」で楽しくやりとりしてきたけれど、こんなところで根本的な見解の相違に出会うとは思いもしなかった。
中国大陸で、普通の市民生活を送っている普通の中国人にとって、反日デモを冗談にもあおるような発言をするのは、端的に反社会的行為なのであって、そんな発言は言論の自由の行使と見なされないのだ。
もちろん上述の中国人女性は、ツイッターで中国語にしてたった5文字、「憤青たちよ、やっちゃえ!」(Kinbricksさんの上記引用ページから)とつぶやいだだけで、実際にデモの破壊的行為に参加した訳ではない。
なので、欧米や日本の基準からすれば、彼女を勾留した中国政府の決定は、明らかに言論の自由に反する。
しかし、中国大陸で普通に生活している中国人からすると、たった5文字のツイートであっても、日本で言えば極左団体が皇居にお手製のロケット弾を打ち込んだくらいの破壊的行為に見え、かつ、そのように見てしまう自分たちの判断基準に何の疑問も持っていないのだ。
これを中国政府による、社会秩序を維持するための一種の「洗脳」教育の見事な成果と見るのはたやすい。
しかし、言論の自由が、まったく自由のない状態から完全な自由まで、仮にさまざまな段階があるものだとすれば、日本人もこういう普通の中国人の反応に、「だから中国っていう国はダメなんだ」と無条件に非難できる立場にあるかは微妙だ。
というのは、日本における言論の自由の度合いが、果たして世界に誇れるほど自由かと言えば、決してそうではないからである。
記者クラブ制度などがその最たるものだが、普通の日本人の情報リテラシーは欧米ほど高くはないので、メディアがきれいに枝葉を剪定して送り出す情報を、いとも簡単にうのみにしてしまう。
大多数の日本人が、マスメディアが右と言えば右へ向かうし、左と言えば左へ向かう。関東圏ではみのもんた、関西圏ではやしきたかじんなどといった、声の大きなタレントを、良識派の言論人として、いとも簡単に受け入れてしまう。
こういう普通の日本人と、反日デモをはやし立てた女性を当たり前のように反社会的と見なす普通の中国人の間には、程度の差しかない。
たしかに日本では、政府が明示的に一年間の労働教育のような言論弾圧をすることはない。
しかし、草の根的に、地域コミュニティーや、学校内・職場内のコミュニティーから、「いじめ」や「肩たたき」などによって、事実上はじきだされる。
そうした「村八分」的な私刑(リンチ)や、「自粛」という名の暗黙の了解による言論弾圧の伝統が、日本にはれっきとして存在する。
つまり、異質な言論に対する弾圧が、中国では公権力によって明示的に行われるが、日本では多数派の暗黙の空気によって行われる。
極端な逆説をあえて言おう。
言論弾圧が起こったとき、中国なら「中国政府が悪い!」と明確に中国政府を指させるだけ、まだましだ。犯人がはっきりしているから。
ところが日本では、「村八分」や「自粛」による言論弾圧が起こったとき、誰を指させばよいか分からない分、中国の言論弾圧より始末が悪い。
…という具合に、あえて「日本に本当に言論の自由なんて存在するのか?」と疑ってみることで、普通の中国人のこのニュースに対する反応も理解することができる。
僕ら日本人は、ヤクザまがいの恫喝で、無実の人間を犯罪者に仕立て上げる技術を駆使する警察が、治安を守っている国に住んでいることを忘れてはいけない。
中国と日本の言論の自由の差は、単に程度の差でしかなく、日本では言論の自由が完全に保証されている、などという考えは、おめでたい幻想に過ぎない。