月別アーカイブ: 2015年9月

0ABJ型IP電話と050型IP電話の契約数の推移

0ABJ型IP電話の規制緩和に見る、050型IP電話についての政府の考え方

050型IP電話は、0ABJ型IP電話が順調に増加しているのに比べて、契約数は横ばいだ。

0ABJ型IP電話と050型IP電話の契約数の推移

0ABJ型IP電話と050型IP電話の契約数の推移

一方、0ABJ型IP電話は、NTT東日本、NTT西日本、KDDIの事実上の寡占状態になっている。

たとえばソフトバンクグループは、0ABJ型IP電話への参入を、数年前から総務省に要求している。下記がその説明資料の一つだ。(総務省のホームページより)

「IPネットワーク設備委員会 通信品質検討アドホックグループ ヒアリング資料」(2012/04/25 総務省HPより)

これらのことから、総務省は、0ABJ型IP電話の品質要件を一部緩和して、ソフトバンクのような新規事業者の参入を容易にするよう、方向転換している。

それは以下の総務省の資料で分かる。

「『0AB-J IP電話の品質要件の在り方に関する研究会』報告書」(2014/12/16 総務省HPより)

具体的には「R値」「パケット損失率」などの品質規定の一部を緩和するとともに、「アナログ電話と同等の安定性」という一律の品質条件を緩和し、「総務大臣が別に告示するところに従い、伝送役務の安定性が確保されるよう必要な措置が講じられなければならない」と、さまざまな技術的方式による品質確保への可能性を開いている。

上記資料によれば、これは2013/06/14の「規制改革実施計画」の閣議決定にもとづく「IP電話サービス分野におけるイノベーションや競争を通じた新ビジネス創出を促進する観点から、0AB-J IP電話番号取得の品質要件の見直しにつき、安定品質要件の要否を含め検討を行い、結論を得る」という決定から来たものだ。

つまり、日本政府としては、明らかに、国内のインターネット通信品質が全般的に改善している現状をふまえ、消費者が0ABJ型IP電話を選択しやすいように、企業間の競争を促す方向に進んでいる。

結果的に050型IP電話は、より通信品質の低い「その他のIP電話(LINE、Skype等が該当)」のカテゴリへ事実上、徐々に「降格」されることになる(上記報告書の「参考資料」スライド5を下図に引用する)。

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日本企業は、こういった日本政府の方針をふまえれば、今2015年のタイミングで、業務に利用するIP電話として050型IP電話を選択する余地があるのかどうか、冷静に判断する必要があるだろう。

世の中には知らないほうが幸せなことはあるけれど

世の中には、知らないほうが幸せなことは、たしかにある。

でもそれを知らなければ、自分がいかに物を知らないかを知ることができない。

なので、できるだけたくさんのことを知る必要がある。

それはこの世界がいかに広いかを知るためでもあるし、自分がいかに無知かを知るためでもある。

「これ以上は知りたくない!」と目や耳を閉ざしたら、おしまい。

あなたはもう、自分がいかに無知かを知ることさえできなくなる。

050型IP電話契約数は2006年以降減少だが、0ABJ型IP電話は順調に増加

総務省の平成27年版「情報通信白書」第3部「基本データと政策動向」第2節「ICTサービスの利用動向」を見てみよう。

第2節「ICTサービスの利用動向」「2 電気通信サービスの提供状況・利用状況」

このページのいちばん最初にある固定通信、移動通信、OABJ型IP電話、050型IP電話の契約数の推移グラフを見てみる。

緑色の折れ線グラフが「0ABJ型IP電話」、黄色が「050型IP電話」だ。

電気通信サービスの契約数の推移

電気通信サービスの契約数の推移

「0ABJ」というのは、ふつうの東京03、大阪06といった市外局番の電話番号のこと。

「050」というのは、文字どおり「050」で始まる電話番号のことである。

このグラフをタテに引き伸ばして、見やすくしている方がいたので、そちらの画像を引用する。
引用元はこちらの「電話加入者数の推移をグラフ化してみる(2015年)(最新)」ページ(2015/08/04 14:30)というページ。

IP電話利用数・固定電話加入者数・携帯電話加入者数の推移(万件、万契約)

IP電話利用数・固定電話加入者数・携帯電話加入者数の推移(万件、万契約)

IP電話だけに注目すると、050型IP電話は2006年をピークに減少し、横ばいになっている。

それと対照的に、0ABJ型IP電話は急増、2014年度末には非IPの固定電話とほぼ並んでいることが分かる。

IP電話部分だけを拡大してみる。

0ABJ型IP電話と050型IP電話の契約数の推移

0ABJ型IP電話と050型IP電話の契約数の推移

Good社がIPOではなくブラックベリーに買収されるエグジットを選ぶって…

昨日、2015/09/04にスマートフォンの社内メールを同期する企業向けシステム(英語ではEMM:Enterprise Mobility Management)専業のGood社が、何とブラックベリーに買収されるという発表があって、正直がっかりしている。

てっきりGood社は自力でIPOをするものだと思っていた。というのはGood社は、その前身のVisto社時代から、ブラックベリーやマイクロソフトを相手に特許訴訟を起こして、そのメール同期技術のライセンス料収入を基盤として、独立独歩で発展してきた会社だからだ。

ただスマートフォンが世界的に普及し、企業の中でもAndroid端末、iOS端末(iPhone/iPad)が当たり前の存在になった。そのおかげでブラックベリーのような独自ハード・独自ソフトの組み合わせの事業モデルが衰退すると同時に、EMMのようなパッケージソフトも当たり前の存在になった(いわゆるコモディティー化)。

その結果、かつてEMM専業だったZenprise社は仮想デスクトップ最大手のCitrix社に買収され、AirWatch社はサーバ仮想化最大手のvmware社に買収され、MaaS360のFiberlink社はIBMに買収され、という具合に、EMM専業ベンチャーはつぎつぎと大手ITベンダーに買収されていった。

なので今回Goodがブラックベリー社(旧RIM社)に買収されたのも、両社の経営者としてはきわめて合理的な判断といえる。

しかもGoodとブラックベリーは、かつて特許係争を戦っているだけあって、それぞれが保有している企業内メールの即時同期技術や、機密情報の暗号化技術は、とてもよく似ている。なのでひとつの会社になれば、顧客を共有して規模の経済を追求できる。

かつてマイクロソフトのような巨人相手に特許訴訟をしかけて勝訴したベンチャーが、逆にブラックベリーのような縮小均衡型の企業に買収されるということは、Good社自体も、もはやベンチャーではなくて大手になっちゃったということなのだろう。

これでGood社は、いままで競合していたブラックベリー社の顧客層に対しても、iPhone、Android端末向けのEMMを販売できるわけで、経済合理性の観点からはIPOよりもはるかに適切な選択だろう。

ただ、それだけEMM市場でブラックベリーとGoodによる寡占状態が進む可能性が出てきたので、やや面白みがなくなった気もする。

ちなみに、これだけ大きな規模で競争しているEMM製品がある一方で、1ドルで日本の中堅企業に買収された結果、世界市場から消えてしまったEMM製品もあったことをお忘れなく。

あなたの企業がGood社のEMM製品と、世界市場から消えてしまったEMM製品のどちらを選択するのが正しかったか。最初から答えは明らかだったのだが、こんな簡単な判断さえ適切かつタイムリーにできなかったとすれば、それはとても残念なことだ。