月別アーカイブ: 2008年12月

大久保松恵さんが亡くなったことについて(4)

飯島愛(大久保松恵)さんが亡くなったことについて、社会が芸能人に対して、過剰な倫理的要求をしており、彼女はその犠牲者の一人だったのでは、という気がしてきた。
芸能人がメディアを通じて、一般人よりはるかに大きな社会的影響力をもっていることは確かだ。
ただ、一般人は自分自身がどれだけ「正しく生きているか」は棚上げにして、芸能人が大きな社会的影響力を持っていることを口実に、芸能人の倫理的な失態なら、いくら叩いても構わないという「ワル乗り」に走る傾向があるのではないか。
もう一つ、これは大久保松恵さんと僕ら同じ世代の世代性かもしれないが、「強迫自己啓発症」のようなところがあるのではないか。
つまり、何だか理由はよくわからないけど、人間は一生向上し続けなければならないという強迫観念のようなものにとりつかれているのではないか。
例えば仕事で英語を使う機会などないのに、英会話の勉強にいそしんだり、『夢をかなえるゾウ』のような自己啓発本が相変わらずベストセラーになったり。
人間はつねに前向きで、ポジティブでなければならない、つねに向上しなければならないという強迫観念にとらわれているのではないか。
大久保松恵さんも、芸能人としての彼女は、一つは外側からの圧力として、一般人から、一般人以上に倫理的でなければならないという要求の「空気」を感じており、かつ、内側からの圧力として、つねに前向きでポジティブでなければならないという強迫観念にとらわれていたのではないか。
ましてAV女優という過去を背負っていれば、それを埋め合わせるために、余分にそれらの外的、内的な圧力を感じざるを得なかっただろう。
向上心もなく単に生き続けることが端的に悪いことだと言えるのか。

alan中国語ブログ試訳:2008/12/29

2008/12/29、alanさん中国語ブログに久しぶりに内省的な記事がアップされたので日本語に試訳する。日本語ブログと違い、ちゃんと物事の二面性が書かれている点が素晴らしい。

「長いこと本気で何かを書いていない感じがしますが、書きたくないわけじゃなくて、何を言ったらいいか分からないんです----言いたいことが多すぎて。
 この世界であなたに私を知ってもらえたこと、それが私にとって光栄なことで、私たちに縁があったということですね。
 2008年はあっという間に終わろうとしてますが、この一年、私はたくさん学び、たくさんの収穫があり、同時にたくさんのものを失いました。。。。でもはかりにかければ、価値があったと思います。私の今の生活を羨む人がいるかもしれませんが、決して私を羨まないで下さい、むしろ私が羨ましいのは皆さんの方なんですよ。。みなさんは私の今の気持ちがよく分からないかもしれませんね。でも実を言うと:私は今一日一日を楽しんで、今のこういう生活は宿命で、こうなるべくしてなったんだと感じているんですよ。
 2008年はあっという間に終わりです、どう言ったらいいか、楽しいときもあり、悲しいときもあり、寂しいときもあり、本当に悲喜こもごもでした。。。成功した喜びもあったかもしれないし。。。失望もあったかもしれない。。。。でもそんなことは重要じゃない!!!重要なのは喜びです。。。満足することです。。家族がいて、みなさんの思いやりがあって、私は自分が幸福だと思います。。。
 来月『RED CLIFF2』の宣伝で制作スタッフと北京、広東、成都、上海のロードショーPRに参加します、『RED CLIFF1』では中国に仕事に来なかったので、今度は何がなんでも参加しないと。
 ここで皆さんに新年のご挨拶を:皆さんの2009年、思いが実現し!万事思いのままに!努力が天を突き抜けますように!!!!」
最後の「牛劲儿冲天」のニュアンスが不明。辞書に載っている通りに訳すと「馬鹿力が天を衝く」だが。

ビデオニュース・ドットコムの小幡氏出演回は必見

昨日、小幡績著『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)をご紹介したが、著者の小幡氏が金融バブル崩壊後の世界経済について、ビデオニュース・ドットコム「第403回マル激トーク・オン・ディマンド」で宮台真司ととても興味深い議論をしている。
小幡氏によれば、現時点でバブルは米国債に移っているとのこと。小幡氏の「キャンサーキャピタリズム」という比喩を借りれば「転移」しているということか。
米国債が値上がりすると同時に、米国債のCDSも値上がりしていることから、投資家は米国が「倒産」すると期待しつつ米国債を買い続けており、これは明らかにバブルであるというのだ。
そこで小幡氏は、ドルがもはや基軸通貨たりえないのではと考え、基軸通貨が存在しない世界経済も論理的な可能性としてあると論じている。
その帰結は世界経済のブロック化で、そこから「コミュニティー」をめぐり、経済学の枠を超え、宮台氏の専門である社会学とクロスした非常に面白い議論を交わしている。
ぜひビデオニュース・ドットコムの会員になって(月額たった525円)視聴されることをお勧めする。
ビートたけしや爆笑問題の太田など、知識人ぶった芸人の中途半端な社会派バラエティーなど見る必要は全くない。
テレビは純粋な娯楽のために存在すべきであり、社会問題を真剣に考えたいならテレビなど見るべきではない。ビデオニュース・ドットコムさえ見ていれば十分だ。

大久保松恵さんが亡くなったことについて(3)

今朝の『サンデージャポン』を見ていて、爆笑問題の太田の言葉に納得させられた。
飯島愛さん(大久保松恵さん)は、芸能界で他のタレントに妥協を許さない分、自分自身にも一切の妥協を許さない結果、自分で自分を芸能界からはじき出さざるを得なかったのではないか、ということだ。
もっといい加減に生きてもよかったのではないか、というテリー伊藤の言葉もその通りだと感じた。
自分の存在そのものに罪の意識を抱かずに生きている能天気な人間はどうでもいいとして、大久保松恵さんのように、自分の過去も含めて、自分が生きていること自体に罪の意識を持ってしまう自罰的な人間を、どうにかして「赦す」ことはできなかったのだろうか。
大久保松恵さんは2008年1月、精神的に不安定になっていた頃、渋谷警察署に駆け込んでいたというが、そういうエピソードを聞いても、彼女は他人に依存すること、他人に「赦し」を得ることさえ、潔しとしないところまで自分を追い詰めてしまっていたのではないかと推測される。
本来、こういう場面では宗教が機能を果たす。人間にかわって超越的な存在が「赦し」を与えるというフィクションを提供し、自罰的な人間にとっての緩衝材になるはずなのだ。
病理解剖しないと死因が分からないというのは、おそらく神経症関係の薬が原因で、消化器にも残っていなかったためだろう。
大久保松恵さんは自殺でこの世から逃げることさえ、卑怯だと考えていたはずだし、大量に服用していれば胃があったあたりに残っているはずなので、薬の誤った服用など、何らかの事故で亡くなった可能性が高いと思う。
彼女のような人間に対して、今の社会はどのように「赦し」を与えることができるのか。
「赦し」を与える機能を失った社会は、結局、ある種の人たちを死へと追い詰める結果になる。
それが自殺であれ、経済的な困窮死であれ、事故死であれ、本当なら行き続けたい人間が、行き続ける余地を全く失ってしまうほど、今の社会には「のりしろ」がなくなってしまっている、ということだろう。

小幡績著『すべての経済はバブルに通じる』を読んだ

今さらながら小幡績著『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)を読んだ。証券化という金融技術のもつ機能を明快に解説し、世間のバブルについての常識をバッサリ斬っている。
サブプライムローンに端を発する金融危機が、過去のバブルとどう違うのか。現代の金融資本主義において発生するバブルに、とういう本質的な変化が起きているのか。解説は明晰だ。さすが東大経済学部主席卒業。

終盤にある今年2008年の、上海株式市場暴落に始まる世界の株式市場暴落の解説はやや退屈だが、実はその退屈さこそがバブルの本質をよく表現していると言えるだろう。
本書にはたびたび、岩井克人の「貨幣は貨幣であるから貨幣なのだ」という貨幣の定義が引用されている。小幡氏はバブルもあらゆる根拠付けを逃れ、かつ、現代の資本主義に構造的に組み込まれた不可避の現象だと書いている。
では世界経済はもう永遠に金融バブルから逃れられないのか。小幡氏は本書の最後に興味深い見通しを書いている。サブプライムローン問題とは何だったのか。総括する上で必読書。