月別アーカイブ: 2007年3月

情報共有ツールとしてのExchangeの限界

10年来、Lotus Notes/Domino党だった僕が、最近Exchange Server 2003を導入したが、情報共有機能についてNotes/Dominoに比較して根本的な限界が見えてきた。
Exchange Serverの利点は何よりActive Directoryのユーザ管理と完全に連動するので、メールシステムとして運用が非常にやりやすい点だが、情報共有ツールとしては明らかに限界がある。

Exchange ServerでOutlookをクライアントソフトウェアとして情報共有機能を担うのは「パブリックフォルダ」という機能だ。Outlook上から見ると、まるでファイルサーバの共有フォルダのように、メール文書や投稿文書を階層化されたフォルダの形式で共有できる。
フォルダごとにアクセス権も設定できるし、既存のフォームだけでなく、ちょうどNotes/Dominoのように独自のフォームを設計して、独自のデータ項目をもつ文書を蓄積することもできる。
文書一覧(ビュー)についても、Notes/Dominoほど複雑な数式を埋め込むことはできないし、Notes/Dominoのように、一種類のデータに対してさまざまなビューを定義することもできないが、ある程度のカスタマイズは可能だ。
しかし、使い勝手からすると致命的な限界がある。まず一般利用者から見たときの使い勝手として致命的な限界は、未読文書数が表示されない点と、サブフォルダを含む全文検索ができない点だ。
なぜだか理由は知らないが、パブリックフォルダは、Outlook上で「お気に入り」フォルダに登録しないと未読文書数が表示されない。しかも親フォルダを「お気に入り」フォルダに登録すれば、そのサブフォルダもすべて登録されるのだろうと思いきや、親フォルダ部分だけが「お気に入り」に登録される。
したがって、パブリックフォルダの未読文書数を表示させようと思うと、サブフォルダを一つひとつ、すべて「お気に入り」に登録するというバカげたことをやらなければならない。
それに対してNotes/Dominoは、すべてのデータベースの未読文書は表示/非表示の切替が自由にできる。たしかに単一のツリー構造をもつExchangeと、独立した複数のデータベースを持つNotes/Dominoとでは、データ保持の考え方が根本的に違うけれども、受信トレイでは初期状態で未読文書数が表示されて、パブリックフォルダでは表示されないというのは一貫性に欠ける。
また、Outlookではメールボックスについては全てのサブフォルダを含む全文検索ができるのに、なぜかパブリックフォルダについては、サブフォルダを含む全文検索ができず、指定したフォルダ直下にある文書しか全文検索できないのだ。これもOutlookを使う一般利用者から見ると一貫性に欠ける。
ただしこれには対応法がある。Exchange ServerのパブリックフォルダをWindowsクライアントの「マイネットワーク」から「ネットワークプレース」として追加する方法だ。そうすると、エクスプローラから、自分のパソコン内のフォルダや、ファイルサーバ上の共有フォルダとまったく同じように、サブフォルダも含む全文検索ができる。
しかしこの方法にも欠点があり、パブリックフォルダに蓄積した同じメール文書群を、Outlookから見るとmsg形式なのに、ネットワークプレースとして追加してエクスプローラから見るとeml形式になってしまう。
msg形式のファイルはダブルクリックするとOutlookで開くが、eml形式のファイルはOutlookで開くことが出来ないので、Outlook Expressが起動してしまうのだ。
技術的には、同じメールボックスをマイクロソフト独自のMAPIという通信手順でのぞくとmsg形式(おそらくマイクロソフト独自の形式)で見え、WebDAVというインターネット標準の通信手段でのぞくと汎用性のあるeml形式で見えるということなのだろう。
いろいろ事情はあるのだろうが、これも一般利用者から見ると一貫性を欠く振る舞いだ。
全文検索についても、Notes/Dominoは、インデックスを作成したすべてのデータベースが対象になるので、Exchange Serverのようにメールボックスとパブリックフォルダの扱いが違うといったことは起こらない。
また、システム管理者から見たときには、パブリックフォルダのアクセス権設定にユーザグループが使えないという致命的な欠点がある。
パブリックフォルダは、サブフォルダごとに異なるアクセス権を設定することができるのだが、そのとき、Active Directoryから個々のユーザ名を指定することしかできず、Active Directoryで定義されているセキュリティグループは指定できない。これは、多くのユーザにパブリックフォルダを公開したいとき、非常に不便である。
また、システム管理者から見ると、このようなパブリックフォルダの仕様は、やはり一貫性を欠いている。というのも、ファイルサーバなどの共有フォルダのアクセス権設定には、セキュリティグループを指定できるからだ。
やはり情報共有ツールとしてはNotes/DominoはExchange Serverよりもよく考えられている。そもそもExchange Serverはメールサーバであって、情報共有機能はおまけみたいなものなのだから、当然といえば当然なのだが、それにしても、未読文書数と全文検索という、ごく基本的なところでつまずいてしまったのではNotes/Dominoの敵ではない。
しかし、では僕がNotes/Dominoにもどる気があるかと言えば、残念ながらその気はまったくない。何より独自クライアントソフトであるNotesに必要な、IDファイルという認証用ファイルの全社員への配布のことを考えると、それだけでもNotes/Dominoの導入はもううんざりと思ってしまう。
Webブラウザで使えるのはメールボックスだけで、独自開発したDominoデータベースはそのままでは使えない。この点からもNotes/Dominoを導入するなら、Notesクライアントが必須だが、IDファイルの配布はうんざりだ。
また、Dominoのデータベースとしての性能は、普通のPCサーバを使っている限り、やはり1データベースあたり数千文書が限界だ。それ以上のデータ量になると文書一覧(ビュー)が表示されるまでに10秒以上かかって、とても実用に耐えなくなる。
Lotus Notes/Dominoの新しいバージョンは、今年の夏に発売されるというが、はたしてIDファイルが不要で、サーバとhttpとhttpsで通信するリッチクライアントが提供されるか、そしてデータストアとしてDB2が完全サポートされるか。もしこの2点が実現されたら、Exchangeユーザは今からNotes/Dominoに切り替えてもいいだろう。と言うより、切り替えるべきだろう。
実際、ディレクトリシステムとしてはNotes/DominoのDomino Directoryの方がカスタマイズの自由度が高いし、Notes/DominoのメールボックスにはIMAP接続できるので、Outlook上で個々のユーザがExchangeのメール文書をNotes/Dominoのメールボックスに移行することもできる。
パブリックフォルダのデータも、OutlookのVisual Basic for Applicationsを使えば、文書数によっては処理時間がかなりかかるかもしれないが、カスタマイズの自由度の低いExchangeから、自由度の高いNotes/Dominoへのデータ移行なので、比較的簡単なコーディングで移行できるはずだ。
もう少し早くNotes/Dominoが進化してくれればよいのだが。

タミフルと拉致と犯罪被害者問題の共通点

タミフル服用後の異常行動で子供を失った遺族の抗議は、果たして正しかったのか。ついに厚生労働省が10代のインフルエンザ患者にタミフルを処方しないよう指示を出した。
ご承知のように厚生労働省の研究班は、すでにタミフルと異常行動のはっきりした因果関係はないという結論を出している。
研究班に参加した一部の学者の所属する大学が、タミフルの製造元から寄付を受けていたことがスキャンダルとして報道されていた。しかし寄付金は他の製薬会社からのものとまとめて大学にプールされていたのだから、この学者が研究結果に色をつけたというのはこじつけもいいところだ。
ところがこの寄付金問題についても、異常行動で子供を失った遺族たちは強く抗議した。まるでタミフルの製造元から寄付をうけたために、学者たちが研究結果をねつ造したかのようにマスコミの前で語り、世論を見事に誘導することに成功した。その結果が、今日の厚生労働省の決定である。
冷静に考えてみよう。
何百万人という患者がタミフルを服用している。しかし、異常行動は数例しか報告されていない。ふつうに考えれば、異常行動とタミフルを結びつけるのは明らかに無理がある。専門家が言うように、異常行動はむしろインフルエンザ脳症によるものと考えるのが自然だ。
遺族のみなさんの無念は理解できる。その無念を晴らすために、タミフルという分かりやすい因果関係に飛びつきたい心情もお察しする。悪者がはっきりすれば、心はなぐさめられるからだ。
しかしそのために、今回の厚生労働省の決定によって、日本の10代の子供たちはインフルエンザにかかってもタミフルという特効薬を選べなくなってしまったのだ。
まだタミフルと異常行動の因果関係がはっきりしていないのに、というより、おそらくタミフルと異常行動には因果関係がないのに、タミフルを使えないことによって、日本の10代の子供たちは、インフルエンザによる後遺症を避ける手段を失ってしまったのである。
この問題は、北朝鮮の拉致問題や、犯罪被害者の刑事裁判への参加問題に通じるところがある。
世論が拉致被害者に感情移入し、政府に北朝鮮に強硬策をとるように圧力をかけることで、かえって拉致被害者をとりもどす前提としての国交正常化の可能性を低くしてしまっている。
同様に、裁判員が犯罪被害者に感情移入することで、冤罪のリスクが高まる。そして今回のタミフル問題では、異常行動で子供を失った遺族に、世論が感情移入することで、かえって10代の子供たちにとって、インフルエンザの危険性が高まる。
感情を押し殺し、あえて冷静で合理的な行動をとるのも、ひとつの勇気ではないだろうか。

Active DirectoryとExchangeのCookbookを探しまわる

今日、複数の大型書店のコンピュータ関係書コーナーをぶらぶらして驚いたのだが、昨年秋にようやく Lotus Domino7 の本格的な日本語の解説書が出版されていたようだ。

Lotus Domino の最新版の解説書は本書が唯一ということだが、ざっと立ち読みしてみたところ内容はかなり充実しており、参考書としては申し分ない。しかしFileMakerは十種類以上の解説書がずらり棚に並んでいたのに、Lotus Dominoの時代は、やはりもう終わりということだろうか。
ところで本来の目的は、オライリーの洋書でActive DirectoryとExchange ServerのCookbookを探すことだったのだが、残念ながら丸の内の丸善にもなかったので、仕方なくAmazon.co.jpから取り寄せることにした。
ただ不思議なことにActive DirectoryやExchange Serverに絞って、VBScriptによるシステム管理の自動化まで踏み込んだ解説書は日本語では出版されていない。たしかにオライリーから『WindowsサーバーHacks』の訳書は出ているが、Active Directoryにテーマが絞られているわけではない。
今の職場で初めて本格的にActive Directoryの管理をしているのだが、ユーザプロパティの一括変更など手作業では非効率でやってられないので、VBScriptで自動化する必要がある。
Exchangeのシステム管理も「Exchangeシステムマネージャー」のGUI経由ではなく、できるだけ自動化したいので、Cookbookは必須なのだが、どうして日本語訳が出ないのだろうか。斜陽のLotus Dominoに比べれば、Exchange Serverはまだまだこれから伸びる製品だと思うのだが。


情報システム部門原論(1)

企業の管理部門には経理、人事、総務などさまざまな部門があり、それぞれに役割がある。管理部門は利益を産み出さないので、それぞれの部門が決められた役割を果たさなければ、営利組織としては存在意義を失うことになる。
管理部門の各部門は、各部門で働く人々の専門知識や専門技術がなければ、決められた役割を果たすことができない。経理部員には企業会計、企業税務についての専門知識と実務上の技術が必要だし、人事部員には企業の人事管理、労務管理、労働関連の法制度についての知識と実務をおこなうための技術が必要だ。
同じように情報システム部員は、企業の情報システムについての専門知識と実務をおこなうための技術が必要になる。個人が趣味でパソコンをつかうのに必要な情報技術にかんする知識と、企業が情報システムを企画、構築、運用するのに必要な知識とは大きく異なる。
また、企業組織としては一部の実作業を外部の業者に委託することに費用対効果はあるが、すべての実作業を外部に委託することは事実上不可能である。その理由は、どの企業にもその組織特有の実務上の規則や慣習があり、そのうち明文化さていない部分や、その企業の中核的な競争力にかかわる部分は、外部に委託するわけにはいかないためだ。
情報システムについても同じことが言えて、外部の業者に委託できない実作業は社員がおこなうしかない。したがってすべての企業の情報システム部員は、一定の実務上の技術がなくてはならない。
たとえばパソコンをその企業の社内ネットワークに適した設定に変更する技術であるとか、その企業の社内ネットワークの運用を自動化するのに必要なちょっとしたプログラムを書く技術などである。
管理部門の社員には、すべての実作業を外部委託できないという以外にも、実務上の技術が要求される理由がある。それは外部の委託先業者を適切に管理するためである。
労務管理の知識がまったくない人事部員は、社労士との打ち合わせをすることはできない。企業税務の知識がまったくない経理部員は、監査対策のための税理士との打ち合わせをすることはできない。
同じように情報システム部員も、一定の技術知識と実務上の技術がなければ、委託先業者の仕事の品質を検査することができない。いわゆる「丸投げ」になってしまう。
以上のように企業の管理部門の構成員は、所属する部門に決められた役割に対応する専門知識と実務上の技術(=じっさいに自分で手を動かして一定の結果を産み出す能力)を持たなければならない。管理部門は単なる調整役ではないのである。

堀江氏の実刑判決と日興の上場維持を並べてみると

元ライブドア社長の堀江貴文被告が、東京地裁で実刑判決を受けたのに対して、不正会計問題を起こした日興コーディアルグループは、東京証券取引所の上場廃止を免れた。単純に粉飾額を比べると、日興コーディアルグループの方が大きいにもかかわらず。
この二つの「判断」をならべると、非常にバランスが悪いことは明白だ。日本が大企業に甘く、成功者に嫉妬する社会であることが、端的にわかる。