月別アーカイブ: 2006年11月

「ビデオニュース・ドットコム」のすすめ

最近テレビがつまらない。報道番組さえ一般市民の感情に媚びるような作りのものばかりでつまらない、とお思いの方には、ぜひビデオニュース・ドットコムをおすすめしたい。
ジャーナリスト・神保哲生と社会学者・宮台真司が毎回司会をつとめ、スポンサーの縛りのあるマスメディアがなかなか登場させないようなゲストを迎えて鼎談をおこなうスタイルのインターネット放送(ストリーミング)だ。
月額525円で会員にならないとほとんどの放送回が見られないが、無料放送回があるので、まずそこからご覧になるとよい。(という僕もまだ会員になっていないのだが)
やわらかいところから入りたい方は、無料放送回の「猿でもわかるオタク入門」での精神科医・斉藤環と宮台真司のかけあい漫才や、植草一秀が冤罪を訴える放送回からご覧になるとよい。
その他、ナショナリズムや安倍内閣などハードな政治問題をテーマにした回もあるが、大手ジャーナリズム出身の神保哲生と宮台真司が、マスメディアのありかたそのものについて雑談っぽく話したりする部分は、メディアリテラシー教育として僕でも非常に参考になる。
たとえば三菱ふそうやシンドラー社がなぜか集中的に叩かれてしまう理由など、日ごろ僕らが垂れ流されるままにうけとっているマスメディアとは、少し距離をおくためにも、ビデオニュース・ドットコムのようなメディアに触れておくことは非常に重要だと考える。
この「愛と苦悩の日記」の愛読者は、すべからくビデオニュース・ドットコムを観るべきだと言い切ってもいい。
...と書いても、「もうとっくの昔から観てるよ」と言われそうだけれど。

自分の会社を批判することの無意味さ

サラリーマンの社会では何が「正しいか」という問いは本質的に無意味だ。僕個人は幸か不幸か、従業員数万人規模の大企業から、数百人のベンチャーまで計7社を、社内SEの立場から眺めることができている。
社内SEというのは企業内の情報システム部門に所属するシステムエンジニア、ということだが、れっきとした社員でありながらも、いわゆる「現場」と一定の距離を保てるという意味で、内側から企業組織のフィールドワークをするのにうってつけの立場だ。
企業組織を分類する方法はいくらでもあるが、最近、個人的に興味深い分類法は「オーナー企業vs非オーナー企業」という分類である。
従業員数百人の企業は、大企業のグループ会社を除いて、社長が創業者であり、最大の株主である場合が多い。そうでなくても社長の個人としての組織に対する影響力が大きいのが特徴だ。
従業員数万人の企業では、従業員の誰もが社長は数年たてばかわるものだと当たり前のように考えているので、社長の性格や人間性が組織に与える影響は無視できる。それに対して経営者が会社の所有者(少なくとも過半の株主)でもある中堅・中小企業では、社長の人間的側面が組織全体に無視できない影響を与える。
しかも従業員から見ると、会社の所有者でもある社長は、年齢や健康問題、業績の深刻な悪化など、よほどのことがない限り交代しないことは当たり前のこととして受けとられている。その会社に在籍する限りは、良くも悪くも社長個人のキャラクターの影響から逃れることはできない。
また別の企業組織の分類法として、「官僚制的」vs「イケイケ」というのがある。ここで官僚制と言っているのは、良い意味での官僚制だ。つまり各人の責任と権限が明確で、部署間の統制がきっちりと働いている、いまはやりの「内部統制」がちゃんとできている企業組織という意味だ。
対して「イケイケ」というのは、極端に言えば、社内規則などおかまいなしに「現場」が突っ走り、社長がその先頭を切る、たとえて言えばちょうど第二次大戦中の日本のように「文民統制の利かない軍部の独走状態」、そういったタイプの企業組織だ。
「現場」がどの部署にあたるかというのは、業種によって違う。製造業なら生産現場か、製品開発の部隊が「現場」になることが多い。不動産デベロッパーなら用地買収部門が「現場」になる。接客商売なら各店舗が「現場」になるし、人材サービス業なら営業部隊が「現場」になる。
僕はここでどちらが「正しい」かという議論をするつもりはまったくない。急成長中のベンチャー企業が、社長の個性を色濃く反映した「オーナー」型で「イケイケ」の組織になるのは当然である。
逆に言えばそういった企業が内部統制を欠いており、従業員の責任と権限が不明確で(だいたい社長がすべての権限を握って、まったく権限委譲しないということが多い)、社長とともに「現場」が先走ってしまうのは不可避だ。
現実としてサラリーマン社会には「イケイケ」的側面と、良い意味での「官僚制」的な考え方のバランスをうまくとれるほど優秀な経営者は、ごくまれにしか存在しない。多くのベンチャー企業が、数十人から始まって、1000人を超える組織になっても「イケイケ」から抜け出せないのも仕方がない。
数百人規模のベンチャー企業に、内部統制と現場主義の絶妙のバランスを求めるような考え方こそ理想主義的で、単なる「ないものねだり」にすぎない。
理想的な組織で働きたいなら、自ら経営者に働きかけるか、理想的な組織を他に見つけるか、どちらかの行動をとるべきなのだ。自分は何のリスクもとらず、安全な場所でグチを垂れ流すことにはまったく意味がない。そもそもサラリーマン社会のような下らない社会が、「理想」を語るにふさわしい場か?ということだ。
自分の所属する企業が一つ倒産したからといって、日本社会全体を見れば大した影響はない。自分が働いているからこそ、この会社を理想的な会社にしたいというのは、自己愛が強すぎるというか、身のまわりのことしか見えていない視野の狭い考え方だ。
むしろ経営者が「イケイケ」を反省しない性格なら、むしろその上をいってとことん「イケイケ」式の仕事をすればよい。営利企業の中にいて、自分に権限も責任もないことについてあれこれ論評することほど無意味なことはない。そのヒマがあるなら、市民としての自分にとって重要なこと、さまざまな社会問題について頭をつかうべきなのだ。
自分の会社を批判することで、何となく自分が見識ある人物であるかのように自己満足する。これこそ日本人サラリーマンの視野の狭さで、結局、昔のムラ社会と同じで、自分が所属する共同体の範囲内でしかモノを考えられないという典型的な「症状」だ。
あなたが思うほど、あなたの所属する会社の経営者がどうだとか、社風がどうだとかいうことは重要な問題ではない。もっと重要なことは、会社という「ムラ社会」の外に山ほどあるのだ。

マイクロソフト「GroupBoard 2007」実用に耐えず

マイクロソフトがOffice2007にあわせて新たにリリースした「GroupBoard Workspace 2007」だが、評価してみた結果、やはり実用に耐えないことがわかった。
前のバージョンのGroupBoardでは、会議室(施設)予約で排他制御がかからず、重複予約できてしまうのが致命的な欠点だったのだが、驚くべきことに、新バージョンでも改善されていないのだ。
このGroupBoardという製品は、マイクロソフトの日本法人が、Windows SharePoint Services対応の日本向けテンプレートとして開発しているそうだが、どうも日本企業の現場をよく分かっていないようだ。
たしかにスケジュール登録画面に、重複予約をチェックするためのボタンがついている。しかし、ふつうの操作の流れは、「OK」ボタンをクリックした後に、「予約が重複しています」というエラーメッセージを表示するというものだろう。
「デスクネッツ」では、会議室などの共用設備について重複予約を許可するかどうかを、システム管理者が自由に設定できる。それに対してGroupBoardは、重複予約可能、という設定を自由に変えられない。
GroupBoard Workspaceは、SharePoint Servicesの日本向けテンプレートとして、日本だけで提供されている製品だけに、いったいマイクロソフトは何をやっているのか、という疑念がぬぐえない。
昨日の記事を訂正させて頂く。マイクロソフトの「GroupBoard Workspace 2007」よりも、デスクネッツ、サイボウズガルーン2をお勧めする。

鈴木邦男『言論の不自由?!』『愛国者は信用できるか』

鈴木邦男の本をたてつづけに2冊読んだ。『言論の不自由?!』(ちくま文庫)と『愛国者は信用できるか』(講談社新書)だ。宮台真司の「転向」以降の対談集や著作の中でよく言及されるので、今まで新右翼の本など一冊も読んだことがなかったが、読んでみようという気になった。
宮台真司を読んでいると、どうやら自分は「ヘタレ左翼」ではないかという気がしてきたからだ。僕が東京大学の駒場キャンパスに入学した頃はまだ駒場寮の古い建物があって、学生自治会の幹部や、新左翼の残党のような人が生活していた。
高校時代にボーヴォワールの『第二の性』を読んで「男らしさ」の強迫観念から解放された僕は、入学間もなくフェミニズム系のサークルに入った。世の中はまだバブル経済の絶頂期で、そんな時代に地味な社会学系サークルに入るような学生といったら、当然、二十年遅れで左翼思想にかぶれているような人たちばかりだ。
僕は60年代、70年代の安保闘争などといった昭和史など全く知らないノンポリのくせして、フランス現代哲学を研究するのには何となく左翼でなければならない程度の政治意識しかなかった。
一度だけ新左翼運動に協力していた先輩に乞われて、何か日本武道館に関する反対署名に署名したことがあるが、そのときもこの署名が公安だか警察だかの手に渡ったら逮捕されてしまうのではないかなどと見当違いな恐れを抱いたりしている始末だった。
それでもその後いちおう自分としては政治的には左翼のつもりで、社会党はもちろん、共産党も信用ならないと考え、デリダの「脱構築」のようなリ体制内改革が自分の政治的信条だと考えてきた。
しかし、これって単なる時代遅れのニューアカデミズムかぶれではないか?と考え始め、結局会社員になってからは、ひたすら組織の論理とサラリーマン的習俗に順応して生きてきて、左翼がどうこうということ自体がどうでもよくなった。
で、最近久しぶりに宮台真司の著作を集中的に読んで、鈴木邦男や見沢知廉などといった名前を目にするにつけて、そういえば左翼にシンパシーを抱いておきながら、まともに右翼の言説に触れたことさえなかったことに気づかされた。
そこで鈴木邦男を読んでみたというわけだが、元左翼(だったのかはきわめてあやしいが)の僕にとって鈴木邦男は新右翼への最適の入り口だと感じた。新右翼といえば言論の自由を抹殺するようなテロリズムの実行犯というイメージが先立って、まともに読むべき言説などないと考えがちだ。
しかし氏は、例えば長崎市長が天皇の戦争責任に言及したときの銃撃事件などについて、右翼のテロリズムは自分で自分の首を絞めているようなものだ、言論の場を自ら奪っているようなものだと非難する。(そして同じ右翼の仲間から脅迫をうけたりする)
愛国心や天皇制の議論についても、宮台真司のいう「ヘタレ右翼」が矛盾した言論や思考停止のロマンティシズムで噴き上がるだけなのに対して、非常に合理的で冷静な議論を展開している。
何より氏の書く文章は不思議なユーモアに満ちている。愛国心とか天皇制とか、政治的に重い議論をしているのに、思わずふきだしてしまいそうになる軽さがあって、深刻ぶったところが一つもない。
それもおそらくは意識的に選択された文体で、氏は街宣車で大声でわめき立てる右翼といったイメージを何とか払拭し、一水会代表を退いた今でも、右翼が冷静な言論の場に復帰できるように言論による努力を続けているのだ。
とにかく右翼といえば街宣車というイメージしかない人は、一度、鈴木邦男のこの2冊を読まれるとよい。『愛国者は信用できるか』の中では、藤原正彦が『国家の品格』の中で書いている「愛国心を祖国愛と言い換えればよい」という提案も、あっさりと一蹴されて痛快だ。

デスクネッツ、サイボウズ存続の危機!

※この記事には修正記事を書かせていただきました。こちらをご覧下さい
マイクロソフトの日本向けグループウェア GroupBoard Workspace 2007 が、最新バージョンでついに無償になった。同製品の導入に必要な SharePoint Serices 3 は Windows 2003 Server に付属しているのでこちらも無償。
※ちなみにSharePoint ServicesとSharePoint Serverは異なる製品で、前者はWindows 2003 Serverに無償で付属する拡張機能、後者はユーザあたりのアクセスライセンス料が発生する有償製品である。
最新版の GroupBoard Workspace 2007 はタイムカード機能を追加するなど、あきらかに「デスクネッツ」や「サイボウズ」を意識した機能向上がなされている。
しかも SharePoint Services 3 からは、WebサーバとSQL Server 2000以降のデータベースサーバ(残念ながら他のデータベース製品は選択できない)を分離した機器構成で、1000人を超えるユーザ数にも対応可能。
データベースサーバの方にSQL Server 2005 Express Editionを選択すれば、データベースの最大容量が4GBという制限があるものの、こちらも無償。
つまり「デスクネッツ」ならエンタープライズ版「サイボウズ」ならガルーン2を選ぶ必要がある。
しかもそれぞれ1,000ユーザ前後で利用するとして、数百万円のライセンス料を負担する必要のある複数サーバ構成によるWebグループウェアが、GroupBoard Workspace 2007ならWindows Serverへのクライアント・アクセス・ライセンス料(多くの企業が既に所有しているはず)だけで構築できてしまうのだ。
GroupBoard Workspace 2007にはマイクロソフトのオフィス製品群との連携機能も(たとえば文書管理機能でのチェックイン・チェックアウト機能)あるし、Active Directoryからユーザ情報を引用してくることもできる。
内部データベースの構造はSQL Serverの管理ツールで覗けばすぐにわかるので、Active Directoryに追加されたユーザをGroupBoard Workspace 2007側に追加するバッチ処理も比較的簡単に書ける。
また、GroupBoard Workspace 2007はスケジュール管理、文書管理、掲示板、ToDo管理などが、全て内部的には「リスト」という非正規化された関係データベースで管理されている。
その意味で Lotus Notes/Domino のデータベースと発想がよく似ているのだが、適切な権限があれば、自分でWebブラウザの画面上から独自の「リスト」を定義することもできる。これはサイボウズ製品群でいえば「デヂエ」とまったく同じ位置づけで、画面の見た目や使いやすさ、Excelとの連携機能において「デヂエ」の数段上を行っている。「デヂエ」がサイボウズとは別製品で、追加のライセンス料が必要なのに対して、GroupBoard Workspaceの「リスト」機能は初めから付属している。
ここまでGroupBoard Workspaceの機能が充実してくると、「社内のサーバはほとんどWindowsサーバ」という企業が「デスクネッツ」や「サイボウズ」製品群を導入する理由はほとんどなくなったと言ってよい。
残念ながらSharePoint Servicesについては日本語文書がまだ作成されていないので、インストールには英語を読む必要があるが、Windowsユーザの中堅・中小企業の皆さんはぜひGroupBoard Workspace 2007を使ってみてはどうだろうか。