月別アーカイブ: 2005年8月

『難事例のブリーフセラピー』

■ブリーフセラピー関連書として『解決のための面接技法―ソリューション・フォーカスト・アプローチの手引き』『難事例のブリーフセラピー―MRIミニマルシンキング』を読んだ。
前者は学生向けテキストといった感じで、ミラクルクエスチョンやスケーリングなどの基本的な技法が、セラピーの実録とともにていねいに解説されている。巻末には技法を簡潔にまとめたガイドまで付いているという心配りの細かさ。後者は過食症や自傷癖など、より深刻な事例にブリーフセラピーを適用した実例が豊富に引用され、問題解決指向の心理療法と、解決構築指向のブリーフセラピーがいかに異なるかがっはっきりわかる非常に興味深い書物だ。
直線的な因果律を前提とする限り、心理療法は過去の原因となる出来事へとさかのぼる。しかしブリーフセラピーは、原因と結果の循環を前提とし、心の病は人と人との相互作用であると考える。「なぜ」と問う代わりに「何を」と問う。これから何をするのかを問うのだ。
過食症の女性の症状を悪化させているのは、必死で食べさせようとする母親であり、ブリーフセラピーはその同じ母親が娘に「食べさせない」ような態度をとるように介入する。過食症の原因を本人の心の中にさがし求めることで解決しようとするのではなく、二人の人間の相互作用を別の何かに変えることで問題を解消しようとする。
ジャック・デリダへの言及があるという関連書『解決志向の言語学―言葉はもともと魔法だった』もぜひ読んでみたい。


仁義ある戦い

■辻本清美の出馬について執行猶予の身でと批判かまびすしいが、亀井静香の応援演説で「仁義ある選挙を」と堀江氏への当てつけをする菅原文太氏しかり、選挙にきれいごとを持ち込もうとすればするほど、偽善の悪臭で鼻が曲がりそうになる。

ラジオ深夜便3時台

■昨晩のNHK『ラジオ深夜便』午前3時台は1982年のヒット曲特集だった。岩崎宏美『聖母たちのララバイ』、欧陽菲菲『ラブ・イズ・オーバー』、河合奈保子『けんかをやめて』に続いて、薬師丸ひろ子の『セーラー服と機関銃』がかかった。夜中の3時台の主たる聴取者である戦中・戦前世代には何の感慨もないのだろうが、岩崎宏美の歌う歌はどの曲も美しい。『セーラー服と機関銃』を聴くと、ワンシーンワンカット、固定ロングショットの相米監督の映像とともに、胸の奥をキュッとつねられたような切ない想い出がよみがえる。

今年もやはり南越谷阿波踊り

■例年のように南越谷の阿波踊りを見に行ったが、今年は本場徳島の天水連、阿波踊りグループ「虹」と、舞踊集団・菊の会の組踊りを初めて劇場の中で観た。いずれも個性的な味付けのある阿波踊りになっていた。
天水連はリズムのアレンジが完全に予想を裏切る斬新さ。男踊り、女踊りのアンサンブルのリズムが、途中からいきなり8分の6拍子になるのだ。バーンスタイン作曲『ウェストサイド物語』の「アメリカ」という曲の、まさにあのリズム。「タツツ・タツツ・タツ・タツ・タツ」あのリズムにのせて阿波踊りが踊られるのである。阿波踊りはご存知のようにリズムが「チャンカチャンカ」とバウンスしているので、それを三連符と解釈すれば確かに8分の6拍子の2小節分になる。でも踊りはそういう解釈になっていなかった気がする。また、男踊りでコサックダンスのように腰を低く、ひざを曲げたまま踊る場面もあった。天水連のライブ映像をご覧になりたい方はこちらからどうぞ。2005/08/28現在ではまだ2005年の模様は観られないが、2004年の映像で天水連の09分13秒くらいのところから、くだんの8分の6拍子の阿波踊りを観ることができる。
舞踊集団・菊の会は黒澤明監督の『夢』に出演しているそうだ。阿波踊りだけをやっているグループではないので、女踊りの振りのそろい方や、なめらかに変化していくフォーメーションの美しさは本場の連もかなわない。天水連と同じく奴凧をあやつるマイムの踊りが挿入されていたが、やはり菊の会の凧役の男性の動きのなめらかさは本場以上だ。グループ「虹」は4人による女踊りだけと、構成からして個性的。笛の吹き手が舞台中央にバックライトで浮かび上がるなど、幻想的な演出が出色だった。
毎年見てもそれほど飽きるということがないのは、もともと僕が阿波踊りの伴奏のようなミニマルな音楽を好むせいかもしれない。阿波踊りの「ぞめき囃し」はこちらから聴くことができる

つくばエクスプレス体験記

■北千住から南流山までつくばエクスプレスに乗ってみた。電車の乗り心地そのものより、沿線開発がどの程度進んでいるかを見たかったからだ。ところが北千住駅を出ると電車はいきなり地下にもぐり、青井駅、六町駅とつづけて地面の下。周囲の状況はまったくわからない。八潮駅で地上に出たが、一面の田んぼの中に突如こぎれいな構造物が出現した感じで、駅前の商業施設と藤和不動産のマンションはまだ建設中。お隣りの三郷中央駅では実際に下車してみたが、コンビニ一軒さえなく、土曜日だったせいか駅構内のキヨスクも閉店していた。駅前のバスターミナルからは武蔵野線の三郷駅や吉川駅との間を往復するバスが出ていて、その目の前で東急不動産のマンションとマルエツの建設が進んでいる。両駅とも駅前こそ年内にマンションと商業施設が完成するが、その周辺まで街が広がっていくのに一体何年かかるだろうかと思わせた。でも八潮市にはいままで鉄道駅がなく、八潮駅は市民の悲願だったという。都心へのアクセスの良さを考えると、つくばエクスプレスも少なくとも埼玉高速鉄道沿線くらいには開発が進むのではないか。ちなみに電車の乗り心地はレールの継ぎ目が少ない分、縦の振動はほとんどなく、横方向の振動も気のせいか少なかったように感じた。八潮駅から三郷中央駅へ入っていくカーブのなめらかな遠心力はなかなか心地よい。また、床からすぐ壁が外へふくらみながら立ち上がっているので、車内の空間はとても広く感じる。