レイ・ブラッドベリ『華氏四五一度』

■マイケル・ムーア監督『華氏911』を観たということで、この映画の題名の元ネタになっているレイ・ブラッドベリ『華氏四五一度』(ハヤカワ文庫)を読まねばなるまいと思い、今さらながらではあるが昨日から今日にかけて読んでみた。 皆さんご承知のように「ファイア・マン」が消防士ではなく焚書を任務とする人々を意味する近未来の話で、書かれたのは第二次大戦後、米国でレッドパージの嵐が吹き荒れていた頃というから、極めて政治的な空想小説だ。『華氏911』の参照元になっている理由もうなずける。 映像や音楽の氾濫が人々から考える時間を奪い、戦争で大勢の人が死んでいるということがますます現実味の薄いものになっていくとい 続きを読む レイ・ブラッドベリ『華氏四五一度』

田宮二郎主演『白い巨塔』

■そういえば先日、田宮二郎主演のテレビドラマ『白い巨塔』最終回を偶然目にする機会があった。まだ小学生だった僕の脳裏にトラウマのように焼きついていたシーン、財前五郎が洗面所の鏡をのぞきこんで、目の下にできた隈と手のひらの黄疸から、癌の進行を確証する場面に、二十五年ぶりに再会できた。 今見ると田宮二郎の演技はまったく過剰で、鬼気迫るというより滑稽なくらいで、最後の場面、白いシーツに覆われた財前の遺体が病院の廊下(この廊下の狭いこと)を進んでゆくシーンで朗読される財前の遺書も、「反省」という言葉が登場するほど単純な勧善懲悪劇になってしまっている。つまり「悪い」医者だった財前が、自ら癌に侵されることで 続きを読む 田宮二郎主演『白い巨塔』

マイケル・ムーア『華氏911』

■銀座でマイケル・ムーア監督『華氏911』を観て来た。まずスノッブな映画評論風に感想を書くとこうなる。 世界貿易センタービルでのテロについて、まったく別の物語をつむぎ出すことに成功しているという点で、ノンフィクションでありながら一貫性のある一つの映画たりえている。その物語は今まで僕が日本でテレビや新聞での報道から得ていた情報からは、決してつむぎ出すことができなかったものなので、僕はこの映画を観ながら、まるで僕の知らないところにもう一つ別の世界があって、そこはこの世界と表面上はとても似通っており、似たような人物が似たような生活を送っているにもかかわらず、まったく異なる規則にしたがって機能している 続きを読む マイケル・ムーア『華氏911』

報道ステーションの的外れな箱モノ行政批判

■テレビ朝日の報道ステーションで泉佐野市が10年前の「関西国際空港バブル」に踊らされて、箱モノ行政に走り、まったく利用されない豪華な公共施設に数千億円を投資し、結果として財政再建が不可能な状態になる崖っぷちにまで追い込まれたという事実が報道されていた。 ところが報道ステーションが報じていたのは、市長に対する市民の怒りであり、古館伊知郎と長野智子がコメントとして語っていたのは、小泉首相の三位一体改革への批判だった。 泉佐野市がこれほどまでにひどい状況になったことを、市長個人のリーダシップや中央政府の責任にしてしまうことは簡単だが、たとえ中央政府からの後押しがあったとしても、果たして市長がこれほど 続きを読む 報道ステーションの的外れな箱モノ行政批判

一見大型スーパー、その実パチンコ屋

■駅前でご隠居さんが二人立ち話。駅前にスーパーマーケットができるんだってね。サラリーマンを引退しても近所の情報通であることを自認しているらしいが、残念でした。お二人がスーパーマーケットだと思っている工事中の建物はパチンコ屋。もとあった建物を拡張改装して、見た目三倍ほどの巨大なパチンコ屋が出現しつつある。 確かに窓がなく、明るいベージュの壁をしているので遠目にはイトーヨーカドーに見えなくもないが、都心にも店舗を持つパチンコのチェーン店だ。地元の常連さんはまた開店前から薄汚い洋服で入り口に列を作るのだろうが、この巨大な建物の建築費が自分たちの負けでまかなわれていることに複雑な感情を抱かないのだろう 続きを読む 一見大型スーパー、その実パチンコ屋