森鴎外『雁』

■四迷の『其面影』を意外に面白く読み終えたので引き続き鴎外の『雁』を読み始めた。また明治文学月間が始まるのだろうか。ちなみに『雁』は岩波文庫10月の新刊だ。明治文学なのに新刊だ。鴎外は『鴎外漁史とは誰ぞ』というエッセーの中で自らの文学に対する批評として、虚子の「鴎外も最早今まで我らに与えたほどのものをば与うることを得ぬであろう」という言葉を引いているが、これに反して読むという経験によって鴎外は今までに与えたものをわれわれに与え続ける。ちなみに岩波書店のホームページによれば来春には四迷の『浮雲』が新刊で出るらしい。

二葉亭四迷『其面影』

■さてみなさんは何を楽しみにこの日記を読んでいらっしゃるのだろう。何ということのない日々の出来事の報告をお望みなら、僕が一昨日から二葉亭四迷『其面影』を岩波文庫で読んでいると書いておこう。数か月前に一度読んだような気もするのだが、この作品は発表当時、四迷が文壇に復帰したと歓迎される一方で『浮雲』と同工異曲であるとの批判もあったらしく、『浮雲』を読んだのを『其面影』と勘違いしている可能性もなくはない。 また昨夜、二つの川の流れにはさまれたなだらかな平野に広がる住宅街に建築中だった、頂上が雲に隠れるほどの巨大な鉄塔が、見ている間に音もなく空から崩れ落ちてきて、真下に建っていたマンションの屋根を変形 続きを読む 二葉亭四迷『其面影』

そのとき彼が言い出したこと

■そのとき彼が言い出したことは、僕がその一週間以上も前、まさに彼を目の前にして言いたかったことそのものだったにもかかわらず、今、彼はそのときの僕の言葉をまるで自分の意見でもあるかのように話し始めたのだった。いや、厳密に言えば彼は自分の言葉として話したのではなく、そのことを知っているのは他ならぬ僕であることを示唆しながら、僕にそのことを話させるようにうながしたのだった。結果として僕は一週間以上も前に強弁したまさにそのことを今回は穏やかな調子でくりかえし述べる結果となったのだが、それはとうてい僕自身が納得のいく仕方で僕の主張を述べることができたのではなかった。彼は彼らしい仕方で僕をうまくフォローし 続きを読む そのとき彼が言い出したこと

2週間も「愛と苦悩の日記」をサボるなどということは考えられないことだ

■2週間も「愛と苦悩の日記」をサボるなどということは考えられないことだ。が、考えられないことが起こるのが世の中というもの。かつては形のあるものを創造したいという欲求に突き動かされるようにして生活し、現にいくつか下らないものを造りもしたが、最近では缶コーヒーを飲んだ後のカフェインがいちばんよく効いている数十分間にいろいろな構想が浮かんでは消えるだけ。写真を撮っても出てくるのは技術的な課題だけで、何かを造ったという感覚は皆無。あらためて考えれば創造意欲というのは、何かが欠けているその真空の部分を埋めようと否応なく生じるものなのかもしれない。このまま意欲を細らせて、途絶えてしまうのを待つだけ、という 続きを読む 2週間も「愛と苦悩の日記」をサボるなどということは考えられないことだ

久しぶりに耳にした普天間かおりの声

■日曜日の早朝、ふと目を覚ましたときの習慣でイアフォンを耳にねじこんでラジオをつけると、懐かしい声が。しかし運悪く番組の最後の部分で、「また来週!」という言葉しか聞けなかった。最近『涙そうそう』というヒットを飛ばした夏川りみのアルバムを数寄屋橋のHMVで立ち聴きしたとき、久しぶりに『芭蕉布』のメロディーに触れた。僕がこの歌を覚えたのは普天間かおりの『真南風』という1997年発売のアルバムだ。 もうあれから5年たっていることも驚きだが、普天間かおりがまだラジオに出演できていることも驚きだった。東海ラジオを聴ける中部地方の方々は幸運だ。文化放送ではアシスタントとしての彼女の声しか聴くことができない 続きを読む 久しぶりに耳にした普天間かおりの声