月別アーカイブ: 2002年4月

今朝の日経で目に留まったのがペイントハウスが従業員定着率向上のため給与体系の見直…

■今朝の日経で目に留まったのがペイントハウスが従業員定着率向上のため給与体系の見直しなどに取り組むという記事。同社は「歩合制による徹底した成果主義で急成長を遂げてきたが、一方で入社一年以内の離職率が50%を超えている。継続的な事業拡大を狙うには人材の定着が欠かせないとみて、給与体系の見直しなどに取り組む」。昨年から段階的に「基本給を12万円から20~25万円とし、固定給の割合を従来の平均2割から4割に引き上げ」ており、「営業拠点の管理職に対する研修や社員向けの相談窓口を設け、継続して勤務しやすい体制を整える」(8面)とのこと。同社の経営者は会社にとってのいわば折り返し点を的確にとらえて安定成長へのハンドルを切りつつあるようだ。ちなみに同社の創業は1988年で、昨年に店頭市場公開を果たしている。創業年数や公開・非公開にかかわらず、企業が成長のために人員を急増させると組織面の問題が必ず生じる。第一に人は金銭的な報酬のためではなく、正当な評価を得て自己実現の実感を得るために働いている。だから鼻先にニンジンをぶら下げる方法は長続きしない。逆にあまりに年功的な給与体系では優秀な社員から逃げていく。第二に、同じ日本国内とはいえ会社による文化・社風の違いは意外に大きい。中途で採用した社員を自社の社風に同化させるには、それなりの研修制度や会社として精神面でのサポート体制が必要。ペイントハウスはこの2点について対策の必要性を自ら認識し、実行に移せているということなのだろう。もちろん他方ではまったく対策がとれない企業があるという意味なのだが。日本企業は少子化のため中期的には中堅社員の絶対数が不足することは確実である。いまから社員の定着策をはかっておかないと10年後には人不足で営業規模を維持できないなんてことになりかねない。

人は現実だけで生きることはできない

■人は現実だけで生きることはできない。現実逃避的な行動は無責任さの証拠ではなく、一人の人間の有限な能力の範囲内で現実に対して責任を果たすために必要な基盤のようなものだ。現実の「外部」なしに現実の「内部」は存在しない。外部を切り離された現実はそれまでは内部であったところのものの内部に外部を強引に産み出そうとする。

昨日のテレビ東京ワールドビジネスサテライトで元財務官の榊原氏が小泉首相を評して構…

■昨日のテレビ東京ワールドビジネスサテライトで元財務官の榊原氏が小泉首相を評して構造改革をダシに使った自民党タカ派内閣だ、と述べていた。なるほど。首相就任以前、小泉氏は構造改革を政治理念に掲げたことは一度もなく、ただライフワークとしての郵政3事業民営化を繰りかえし主張していただけ、とのこと。小泉氏はそもそも構造改革を本気でやるつもりは毛頭なく、単にそれを支持率維持の道具として使い、本当に実現したかったのは60年安保の時代に防衛庁長官であった父・純也の遺恨である有事法制の実現や、個人情報保護法(別名「メディア規制法」)。たしかに道路公団をはじめとする構造改革の進捗がはかばかしくない一方、有事法制や個人情報保護法は「順調」だ。僕らは小泉首相のようなマスメディアの操縦法が、タカ派の典型であることをこの際、よく学んでおく必要がありそうだ。

文部科学省の諮問機関・文化審議会が世界的に評価が高いアニメーションを新しい芸術と…

■文部科学省の諮問機関・文化審議会が世界的に評価が高いアニメーションを新しい芸術として奨励していくべきだとの答申をまとめたとのこと。ちなみに会長は高階秀爾氏。ジャパニメーションは日本が誇る芸術だという自負も国内で生まれつつある。たしかにこれまで不当におとしめられてきた分の名誉挽回は必要だが、他方で同工異曲の模造作品が濫造されているのも事実だ。妙な(多くの場合露出度の高い)コスチュームを着た女の子が超能力の助けを借りて地球を守るという紋切り型。それによって生まれる超短寿命のアイドル声優。ジャパニメーションが日本にとってそれほど重要な芸術なら、宮崎駿や大友克洋はじめ一握りの作家だけが名声を独占している状況は異常だ。国家的芸術というにはあまりにそれを支えるクリエーターの層が薄い。なぜか。優秀な人材がアニメーションを職業として選択するインセンティブが働かないからだ。どちらかといえば自らアニメーションに現実逃避し、実業に無関心な人々が業界予備軍となっている。その状況が変わらない限り早晩ジャパニメーションは飽きられるだろう。

『コーポレート・カルチャーショック 組織異動からのサバイバル』

■普通の会社員よりも転職経験が多いせいか、企業における異文化体験について以前からよく考えることがあった。最近ずばりそのテーマに当てはまる書物を見つけたので読んでみた。『コーポレート・カルチャーショック 組織異動からのサバイバル』という英国の元コンサルタント、現大学教授の執筆した本である。日本語副題やカバーの稲光のイラストがものものしいが中身は節度ある研究書だ。
筆者独自の議論が展開されているというよりむしろ、企業を中心に組織内部に起こる異なる文化的背景を持つ構成員同士の文化的対立や摩擦についての、さまざまな学説を手際よくまとめた論文。最終章には筆者のコンサルタントとしての経験から、企業内部の文化的な摩擦を最小限におさえるための実践的なアドバイスが列挙されている。
さまざまな組織類型が紹介されているので、自分の勤務している会社がどれに当てはまるか考えながら読むとなかなか面白い。以前にもここに書いたかもしれないが、企業研究というと特定の有名企業に焦点を当てたものばかりで、多数の企業をサンプルとしていくつかの類型に分類するアプローチの書物がほとんど存在しないことが不思議でならなかった。これは僕が初めて出会った、企業を企業文化(社風)の観点から類型化している書物である。
終身雇用を前提に特定の企業の文化にどっぷりはまってそれを相対化できていない周囲の同僚たちを歯がゆく思いつつ日々仕事をしている中途採用者の方々にはおすすめの書。いつか僕が現在勤務している企業を極めて冷静に分析したケーススタディーとともに、この書物の内容をもう少し詳しくご紹介したい。
今は『人月の神話 狼男を撃つ銀の弾はない』(増訂版)と『経済幻想』を読むのに忙しい。そういえば山田美妙『武蔵野』、川上眉山『書記官』『うらがえし』の感想(もう批評は書けないかもしれない)を書き忘れている。そのうち書かなきゃな。
こうして凡庸さに堕していく自分が恐ろしくて仕方ないのだが、まだ凡庸さの自覚があるだけましだと慰めなくてはならない。テリー・イーグルトンの『イデオロギーについて』もあまりグッと来なかったし。いったい今、僕は何を読むべきなのだろうか。