月別アーカイブ: 2001年5月

アスクルが成功したのはインターネットを使ったe-ビジネスだからではない

■アスクルが成功したのはインターネットを使ったe-ビジネスだからではない。アスクルの成功にとってインターネットを使った「e-」の部分はむしろ二義的な重要性しかもっておらず、そのほんとうの勝因は、顧客から企業に向かう情報の流れ(商流)と、その逆に企業から顧客に向かう物の流れ(物流)を徹底的に効率化することで顧客満足度を極限にまで高めた点にある。実際、同社が日立製作所とトーヨーカネツと共同で開発した物流システムは2000年ロジスティクス大賞を受賞している。また、同社が2001年1月に開設したe-tailingセンターは商流と物流の統合をそのままかたちにしたオフィスである。その成功に「e-」の威力しか見ることができないまま、例えば物流システムの構築経験がまったくないような他業種の企業がアスクルのまねごとをしようとしても失敗するのは目に見えている。「明日かならず届けます」という納期を確約するのに必要な、高度に洗練された物流システムを構築するのは、おママゴトではない。物流システムにはソフトウェアだけでなく、自動倉庫など機械装置のノウハウや、リードタイムを最短にしつつ欠品を防ぐための在庫管理の高度なノウハウも含まれている。物流倉庫の管理をした経験さえなく、まして徹底的なプロセス改善活動の経験もない企業にアスクルのまねごとなどできっこないのだ。

英国の有名なクラブ「MINISTRY OF SOUND」が出しているCDのTRA…

■英国の有名なクラブ「MINISTRY OF SOUND」が出しているCDのTRANCEものシリーズ「TRANCE NATION 2」を購入(SYSTEM Fの定番「out of blue」を収録)。クラブ系の音楽の中ではTRANCEがもっとも快楽主義的だと以前から考えていたくせに購入するきっかけがなく、今回初めて手を出してみたのだが、正直言って通俗的すぎる。思考に疲れた頭脳の休息にはいいかもしれないが、TRANCEそのものを音楽として聴くものではない。紋切り型が耳につく。同じMINISTRY OF SOUNDでも、2年前名古屋で購入したX-PRESS 2の「LATE NIGHT SESSIONS II」の方がムーディーではるかによろしい。

吉田育代『日本オラクル伝』

『日本オラクル伝』(吉田育代著・ソフトバンク刊)を読んだ。日本オラクルが米オラクル社の海外法人としては非常に特殊な独立性をもった会社であり、それは何よりIBM出身の佐野力氏のバイタリティー、明るさ、豊かな発想を原動力とするものだということがよくわかる書物。
ちなみに僕がこの本を手に取った理由は、今から十数年前、技術水準でデータベース市場を席巻したイングレスというRDBMS製品がなぜオラクルに完敗して、今は見る影もなくなってしまったかを知りたかったからだ。
ひとことで言うと、イングレスは技術偏重でマーケティングや組織を軽視する一方、オラクルはしたたかな営業戦略と世界的な組織化で勝利を収めた。当時、イングレスではなく、まだ性能の安定しなかったオラクルを選択したベンダーや企業は「技術よりも組織とマーケティング力」を理由にしていたようだ。
これは成熟したIT業界にもそのまま当てはまる公理かもしれない。つまり、たしかに情報システムにかかわる人々にとって技術は大事ではあるけれども、それ以上に情報システムを展開・定着させるための組織化の努力や、社内のニーズを吸い上げる「マーケティング」が重要なのだ、ということ。
技術にしか興味がなくエンドユーザを心の底で軽蔑しているようなシステムエンジニアに、情報システムの仕事などする資格はないということだ。イングレスの他、ユニファイやサイベースの没落の経緯も同書に詳しいので、RDBMSの興亡史という意味でもぜひご一読頂き「他山の石」とされたい。

井田真木子『フォーカスな人たち』

■近所の市立図書館で『フォーカスな人たち』(井田真木子著・新潮文庫)を手にとり、冒頭の黒木香・村西とおるの部分だけを読んでいたのだが、家庭用VHSビデオデッキ普及の起爆剤になったのがクリスタル映像作品の販促用ダイジェスト版(20分)であり、レンタルビデオという業種が成立したのがそれまでいかがわしいアダルトショップで購入するより他なかったアダルトビデオがレンタル化されたことによるのだとすれば、TSUTAYAの急成長もこの二人の出逢いなくしてはありえなかった歴史だったかもしれないというような下らないメディア史豆知識はどうでもいいとして、今頃40歳になっているであろう黒木香が厳格な両親の束縛によって押しひしがれた自我を解放しようと検討ちがいの世界に飛び込んで、ほどなく表舞台から姿を消し、村西とおるとも離別し、ふたたび実家にもどって抑圧の5年間を過ごした後、安宿を泊まり歩く生活の末、2階の窓から「事故」で転落して車椅子の生活を強いられたその後、いったいどうなったのか今はこの本の著者とて知る由もないのだろうが、アダルトビデオを観ることや出演することをファッションにしてしまった『SMっぽいの好き』で貝の形をした笛を吹いていた中年女性が、静かではあるがひっそりした生活をいったいどのように送っているのだろうと想像するに、人生の底にひっそりと横たわる虚無の深淵を垣間見た気がする。

近安理夫『戦略的ERPの実践』

アクセンチュア・近安理夫著『戦略的ERPの実践』(東洋経済新報社)を読んだ。IT系ジャーナリズムにおいてはブームはすっかり沈静化したが、SAP社の業績が一時の低迷からすっかり復調し、日本企業の導入事例も着実に増えているようで、ERPがようやく日本に根付きつつあるということだろうか。
こういう時期の出版なので興味深く読んだ。アクセンチュア(旧アンダーセン・コンサルティング)のコンサルタントによる著作なので理想論的な内容を予想したが、意外にもERP導入アプローチを現実論で3パターンに分類している。
企業の「覚悟」の程度によってERP導入にも3つの段階があり、それぞれの企業に最適な導入をすればよいという論旨だ。ところでこの本の中で某企業のERP導入が全社的な業務改革を目的として行われているという、明らかに事実誤認の箇所があったので著者に修正を求めるメールを出したところ、改版時に対応したいとの非常にていねいな返答を頂いた。コンサルタントとしての真摯さを感じさせる対応だった。