安冨歩『原発危機と「東大話法」』を読んだ

安冨歩著『原発危機と「東大話法」―傍観者の論理・欺瞞の言語―』(明石書店)を読んだ。 本書は東京大学教授である著者が、これまで原子力発電を推進してきたり、福島第一原発事故後も原子力の安全性を主張したりしている、主に東京大学出身の学者たちの「傍観者」性や「欺瞞」性を論じている。もちろんその矛先が著者自身にも向けられていることを、著者は自覚している。 本書の白眉は、香山リカの小出裕章助教批判や、池田信夫の原発に関するブログ記事が、いかに「東大話法」的かをこと細かに論証している部分にある。 後半の第4章、第5章については、人によって見解は分かれるだろうが、前半の香山リカや池田信夫の「東大話法」の検証 続きを読む 安冨歩『原発危機と「東大話法」』を読んだ

中川恵一『被ばくと発がんの真実』の無自覚な政治的かたより

今日(2012/01/07)から書店に並んでいる、中川恵一著『放射線医が語る 被ばくと発がんの真実』(ベスト新書)を読んだ。 著者の中川恵一医師は「東大病院放射線治療チーム」としてツイッターでも@team_nakagawaというユーザ名で情報提供しているので、ご興味のある方はフォローしてはいかがだろう。 本書の主張については、僕が要約するよりも、中川医師のツイートを引用した方がいいだろう。以下にいくつか引用する。 「事故からもうすぐ10ヵ月ですが、いまだに、主に東京を発信源とする『リスク情報』ばかりが乱れ飛んでいます。年末のNHKの報道番組ですら、全く間違った内容で、正直驚きました。http: 続きを読む 中川恵一『被ばくと発がんの真実』の無自覚な政治的かたより

中野剛志『TPP亡国論』を今ごろ読んだ

中野剛志『TPP亡国論』(集英社新書)を今ごろ読んだ。本書のあとがきは2011/02に書かれているので東日本大震災前だ。 本書はAmazonの星1つの書評をあわせて読むとおもしろい。星1つの書評が、ほとんどまともな反論になっていないからだ。 なぜまともな反論になっていないか、その理由を一言でまとめると、そういった反論が、終戦後の日本の経済成長がすべて意図的な対米追従外交の上に作り上げられたものであることに無自覚だからだ。 東大卒で経産省のお役人である中野剛志は、戦後の官僚たちが「敢えてする対米追従」の下に国民たちを「平和ボケ」のままにしておくことでしか、日本の復興と経済成長がありえないことを見 続きを読む 中野剛志『TPP亡国論』を今ごろ読んだ

宮台真司・大塚英志『愚民社会』を読んだ

宮台真司・大塚英志『愚民社会』(太田出版)を読んだ。 普段から宮台真司の議論をフォローしている人にとっては、最近の宮台真司の議論のおさらいになるので、いつもながらとても明快な内容で、何の違和感もない。 ただ、本書が宮台真司の他の著書と違う点は、大塚英志氏がかなりしつこく宮台真司のコミュニケーション戦略を相対化し、ツッコミを入れているところだ。 特に第三章で大塚英志が宮台真司に対して、あえてする改憲の主張という戦略に、本当に不備がないと思っているのか、しつこくつっこんでいる部分が参考になる。 そのしつこいツッコミに対して、宮台真司は最後の最後では自分は楽観的であると告白し、それに対して大塚英志は 続きを読む 宮台真司・大塚英志『愚民社会』を読んだ

水樹奈々の自伝エッセー『深愛』を読んだ

水樹奈々著『深愛』(幻冬舎)を読んだ。今年のはじめ(2011/01/21)に発売された彼女の自伝エッセーだ。 自伝の部分を通読して分かるのは、父親にとびきり厳しく育てられた娘は、真面目で、自罰的で、自分の父親を理想の恋愛対象と考えるファザコン女性に育つという典型例だということ。 そうして育てられた娘にとって、異性は肉体もつ生身の人間というより、理念的な存在になるので、恋愛感情と身体的な関係はまったく別のものとして認識される。 したがって、彼女の最初の身体的な体験が、中学を卒業してすぐ親元を離れ、生活し始めた東京の満員電車での痴漢だったことから、身体的な接触が不愉快な感情としか結びつかなくなった 続きを読む 水樹奈々の自伝エッセー『深愛』を読んだ