企業向けモバイル端末管理製品2017年版「マジック・クアドラント」公開

毎年6月前後に公開されている、企業向けモバイル端末管理製品(Enterprise Mobility Management)の「マジック・クアドラント」2017年版が公開された。

今まで「リーダー」だった5強のうち、AirWatch(VMware社)、Mobileiron、MaaS360(IBM社)、BlackBerryは安泰だが、Citrix社だけが「ビジョナリー」に事実上の格下げになった。

各社の「強み」と「注意点」は以下のとおり。以下の要約はあくまで単なる参考であり、正確な内容については必ず原文を参照のこと。

VMware AirWatch

「強み」
・垂直統合型市場のほとんどで大規模導入実績あり。
・OS新バージョンの即日サポート、管理対象外端末に対する独自のソリューションについて技術革新を継続推進。
・これまでのEMMのみの導入に対して「Workspace One」が対象機能範囲を大きく拡張、競争力のある位置づけ。

「注意点」
・顧客企業から、テクニカル・アカウント・マネージャー(TAM)に直接コンタクトがとれないとの不満を継続して受けている。TAMオプション購入済み企業からは問題の報告なし。大規模導入についてVMware社は「pods」と呼ばれる直接サポートを追加。
・旧版のAirWatch Inboxをまだ利用している顧客企業が機能面と安定性の面で問題を報告している。Boxerの新機能S/MIMEサポートの品質が現時点で検証されていない。
・AirWatchのコード品質について継続的に報告を受けており、広範な互換性を提供しようとしている結果と思われる。

Mobileiron

「強み」
・昨年、顧客サポートの全般的な改善が報告されている。オンプレミス導入の顧客企業にも最新のパッチ適用を積極的に促し、クラウドユーザには定期保守によるサービス停止を適時に通知している。
・セキュリティと使いやすさの両立に焦点を当てている。各種法規制に対応、企業アプリストアやEmail+などの使いやすさも改善。
・クラウド版が、10万端末以上の大規模顧客にも導入されている。

「注意点」
・専業EMMベンダーとして、広範な製品を持つベンダーの競争力からプレッシャーを受けており、長期的に顧客が同社製品の適用範囲を縮小する脅威がある。
・導入直後からすぐ使えるレポーティングや分析機能が管理画面に組み込まれていない。
・AppConnect機能を利用しているユーザ企業が機能制限を考慮しなければならない。Android用AppConnectはiOS同様のSDKをサポートしていない。AndroidのAppConnectはラッパーにしか対応していない。

IBM MaaS360

「強み」
・システム管理者に便利な端末状況把握の機能を提供している。例えばポリシー違反や組織がさらされている脅威情報のダッシュボードなど。
・Windows 7、8、10、macOSに従来のクライアント管理ツールだけでなくEMM機能も提供している。
・この数年間、導入企業から他の製品よりMaaS360は導入が簡単という報告を受けている。

「注意点」
・SaaSのみでオンプレミスの提供がない。ただしメールやその他アプリケーションについてオンプレミスとのゲートウェイは提供している。
・WindowsやmacOSの高度な管理機能は、BigFixと組み合せる必要があり、完全統合されていない。
・MaaS360のiOSアプリは96MBもあり、他のEMM製品のiOSアプリよりかなりサイズが大きい。インターネット回線の遅いユーザは導入時に困難がある。

BlackBerry

「強み」
・個人情報管理(PIM)アプリは依然として強力で、セキュリティや遵法対応のPIMが必要な企業・組織では、EMM製品の中で最も多く採用されている。
・BlackBerry、WatchDox、Goodの歴史的経緯、社会的評価、セキュリティ機能から、セキュリティ重視の企業・組織にとって強力な製品である。
・BlackBerry Dynamicsは機能が豊富、サードパーティーアプリに対して機能が豊富で、セキュアで汎用的なSDKを提供しており、社内でアプリ開発をする企業・組織はSDK方式に価値を見出している。

「注意点」
・PCやMacの管理機能の実績がほとんど報告されていない。報告されている反応はおおむねプラス評価だが、少数の事例では、全般的なテストやパイロット展開を計画したいとしている。
・アプリ・ラッピング機能の提供を停止したが、Appdomeとして継続提供される。モバイルアプリ管理を計画している場合、この点を考慮する必要がある。
・IDaaSなどサードパーティーの認証サービスやアクセス管理のサポートは限定的。導入済みのIDaaSと互換性があるか確認が必要。

最後に、参考までにMicrosoftとCitrixの評価も見てみる。両社はEMM分野で2016年5月に広範な提携を発表しているため、その経緯の部分も含める。

Citrix XenMobile

2017年、XenMobileを独立した製品として提供しつつ、Microsoft Intuneの移行を検討している企業や導入済み企業にXenMobileを販売するため、Microsoftと大規模な提携をした。このシナリオでXenMobileは、Intuneが端末登録(entrollment)なし設定の場合の追加ツールと位置づけられる。Citrix社のコンテナ化アプリはIntuneのMAM機能でも管理できる。

「強み」
・Microsoft Intuneの影響力拡大に対応するため、XenMobileとの連携戦略をとることで、防御的なスタンスを取っている。
・Citrix Secure Mailはいくつかの競合他社製品の追加機能と比べてプラス評価を得ている。
・NetScalerのネットワーク管理、ShareFileのデータ処理とデータ保護と密に統合され、Citrixのアプリ仮想化、デスクトップ仮想化との統合で強い製品戦略を示している。

「注意点」
・iOS 10.xとAndroidをサポートする機能に現時点でギャップがある。
・とくに小さな組織でサポート問題が指摘されている。サポートや機能要望に同社経営層との直接連絡が必要になることがあるため。
・仮想化によりデスクトップやデスクトップアプリへの接続機能は強力だが、端末管理機能は他製品より弱い。

Microsoft
2016年に、同社EMS製品への注目が大きく拡大し、機能拡張にともない導入事例も増加。”Intune in Azure Portal Preview”としてAzureへの移行が2016年12月から始まり、2017年5月には一般提供開始。これが過去の同製品の弱みに対処するマイルストーンとなった。EA契約締結ずみの組織や同社を戦略的パートナーとする組織にはよく適合する製品で、Office 365導入組織、Azure AD導入済・導入予定組織に適している。

「強み」
・Office 365モバイルアプリと独自連携が可能、同アプリデータ漏えい保護機能を直接管理可能。
・250ユーザ以上の組織でEA契約が広がっており、Intuneはライセンス面で非常に魅力的。
・Azure ADとAdvanced Threat Protectionとの強力な統合で、豊富な遠隔セキュリティ監視が利用可能。

「注意点」
・初期設定とIntuneインストールの難しさが継続して報告されているため、Microsoft FastTrackから直接支援を受けることが推奨される。
・サードパーティーのIAM製品導入済みの場合、Intuneは現時点でAzure ADの統合のみをサポートしている点に注意が必要。
・Intuneはクラウドサービスとしてのみ利用可能で、オンプレミスやハイブリットのローカルアクセス機能はない。ローカルアクセスの必要な企業は他製品の検討が必要。