050 IP電話の通話品質が携帯電話より悪いのは法令で決まっているのに、それに文句をつけるのは単なるクレーマー

国の法令を知らずに仕事をしちゃダメ、というお話。

2015/11/27の官報目次を見てみよう。

官報目次(平成27年11月27日付(本紙 第6665号)

このうち「告示」の「事業用電気通信設備規則の細則を定める件の一部を改正する件(総務四〇八)」に注目しよう。

残念ながら細則レベルの改正なので、このページから改正内容を直接参照することはできない。

この改正の直前に、所轄官庁である総務省から出ている報道資料を見ると、改正内容が分かる。

事業用電気通信設備規則の一部改正に係る情報通信行政・郵政行政審議会からの答申及び意見募集の結果 (2015/11/10)

じっさいの細則改正の告示の2週間前の報道資料だ。

この報道資料に、改正案のリンクがある。

「事業用電気通信設備規則の一部改正について」(PDFファイル)

ポイントはこの資料の8ページ。下図に引用しておく。

つまりこの規則・細則改正は、0ABJ-IP電話の品質要件を緩和するための改正だ。

soumu_go_jp_000384720pdf_8p

この規則・細則改正のもとになった、情報通信審議会からの答申は、以下の総務省のページにある。

「ネットワークのIP化に対応した電気通信設備に係る技術的条件に関する情報通信審議会からの一部答申 -0AB-J IP電話の品質要件等-」 (2015/09/08)

さらにこの答申のもとになった、総務省の意見募集は、以下のページだ。

「IPネットワーク設備委員会報告書(案)に対する意見募集 -0AB-J IP電話の品質要件等-」 (2015/07/22)

そしてこの意見募集の対象となっている「IPネットワーク設備委員会報告書(案)-0AB-J IP電話の品質要件等-」は、「0AB-J IP電話の品質要件の在り方に関する研究会」の報告である。

この報告書は、以下の総務省のページで初めて公開されている。

「0AB-J IP電話の品質要件の在り方に関する研究会」報告書の公表 (2014/12/16)

このページに「別紙1」として、報告書の概要のPDFファイルへのリンクがある。

ポイントはこの報告書概要の4ページだ。

0AB-J IP電話の品質基準を緩和するにあたって、050 IP電話の品質基準との対比がある。

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いまの日本の法令において、0AB-J IP電話と、050 IP電話で番号体系が違う理由は、このスライドに書かれているように「番号の違いを見るだけで適切なサービスや品質の違いを容易に識別できるようにするという消費者保護の観点」である。

そして0AB-J IP電話は、「アナログ電話と同等の品質を確保した上で、アナログ電話に付与される番号と同じ0AB-J番号を付与」されている、とある。

そして050 IP電話は、その下の対比表を見れば明らかだが、品質が大きく劣るIP電話として定義されている。

0AB-J IP電話には、平均遅延、平均遅延のゆらぎ、パケット損失率の基準はあるが、050 IP電話には存在しない。

IP電話の通話品質の評価には、情報通信技術委員会(TTC)の「TTC標準JJ-201.01 IP電話の通話品質評価法」にある、「R値」が使われる。

「R値」はITU-T(国際電気通信連合 電気通信標準化部門)のG.107という勧告に基づいている。

総務省は「R値」に基いて「IP電話の品質クラス」をA~Cまで定めている。

2001年の古い資料なのでインターネットには概要と目次しかないが、以下のページの「報告書(案)概要」から読める。

「IPネットワーク技術に関する研究会 報告書(案)」(平成13年12月26日 総務省)

この「第三章 IP電話の品質」の「IP電話の品質クラス」に、下図の記述がある。

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総合伝送品質率の「R値」に基いて、80超の「クラスA」が固定電話並、70超の「クラスB」が携帯電話並、50超の「クラスC」が最低ランク。

「IP電話としてクラスCに満たないものについては、ユーザが電話サービスとして利用することが困難な品質と考えられ」とある。

ここで一つ上の図にもどると、0AB-J IP電話は「クラスA」の固定電話並であり、050 IP電話は、携帯電話よりも品質が悪いことが分かる。

これは日本の法令である。

050 IP電話が、携帯電話よりも品質が悪いのは、日本の法令に定められている。

これは電話を使う消費者を保護するために、総務省が定めた品質基準だ。

したがって、050 IP電話を導入したが、固定電話や携帯電話より通話品質が悪い!と文句をつけるのは、とんでもない言いがかりであり、単なるクレーマーのたわごとである。

ちなみに下記の、日経テクノロジーオンラインの記事が、LINE、comm、Skypeの通話品質のR値を測定している。(DeNAはすでにcomm事業から撤退している)

「第2回 音声品質は? LINE、comm、Skypeを検証」(2013/08/13)

無線LAN環境では、SkypeだけがR値、遅延ともに、050 IP電話相当になっている。R値だけを見ると、クラスA相当の固定電話並みの時間帯もある。

以上、国の法令も知らずに仕事をしちゃダメというお話でした。