Good社がIPOではなくブラックベリーに買収されるエグジットを選ぶって…

昨日、2015/09/04にスマートフォンの社内メールを同期する企業向けシステム(英語ではEMM:Enterprise Mobility Management)専業のGood社が、何とブラックベリーに買収されるという発表があって、正直がっかりしている。

てっきりGood社は自力でIPOをするものだと思っていた。というのはGood社は、その前身のVisto社時代から、ブラックベリーやマイクロソフトを相手に特許訴訟を起こして、そのメール同期技術のライセンス料収入を基盤として、独立独歩で発展してきた会社だからだ。

ただスマートフォンが世界的に普及し、企業の中でもAndroid端末、iOS端末(iPhone/iPad)が当たり前の存在になった。そのおかげでブラックベリーのような独自ハード・独自ソフトの組み合わせの事業モデルが衰退すると同時に、EMMのようなパッケージソフトも当たり前の存在になった(いわゆるコモディティー化)。

その結果、かつてEMM専業だったZenprise社は仮想デスクトップ最大手のCitrix社に買収され、AirWatch社はサーバ仮想化最大手のvmware社に買収され、MaaS360のFiberlink社はIBMに買収され、という具合に、EMM専業ベンチャーはつぎつぎと大手ITベンダーに買収されていった。

なので今回Goodがブラックベリー社(旧RIM社)に買収されたのも、両社の経営者としてはきわめて合理的な判断といえる。

しかもGoodとブラックベリーは、かつて特許係争を戦っているだけあって、それぞれが保有している企業内メールの即時同期技術や、機密情報の暗号化技術は、とてもよく似ている。なのでひとつの会社になれば、顧客を共有して規模の経済を追求できる。

かつてマイクロソフトのような巨人相手に特許訴訟をしかけて勝訴したベンチャーが、逆にブラックベリーのような縮小均衡型の企業に買収されるということは、Good社自体も、もはやベンチャーではなくて大手になっちゃったということなのだろう。

これでGood社は、いままで競合していたブラックベリー社の顧客層に対しても、iPhone、Android端末向けのEMMを販売できるわけで、経済合理性の観点からはIPOよりもはるかに適切な選択だろう。

ただ、それだけEMM市場でブラックベリーとGoodによる寡占状態が進む可能性が出てきたので、やや面白みがなくなった気もする。

ちなみに、これだけ大きな規模で競争しているEMM製品がある一方で、1ドルで日本の中堅企業に買収された結果、世界市場から消えてしまったEMM製品もあったことをお忘れなく。

あなたの企業がGood社のEMM製品と、世界市場から消えてしまったEMM製品のどちらを選択するのが正しかったか。最初から答えは明らかだったのだが、こんな簡単な判断さえ適切かつタイムリーにできなかったとすれば、それはとても残念なことだ。