NHKのニュースばかり見ているからかもしれないが(テレビ朝日やフジテレビのニュースを見るよりはマシだと思うので)、高齢者の振り込め詐欺被害についての報道に時間と労力をかけすぎだと感じる。
まず高齢者の振り込め詐欺被害だが、高齢者は振り込め詐欺に限らず、さまざまな詐欺の被害にあいやすい。認知能力や冷静な判断力が年齢とともに衰えるので仕方ない。
思い出してみると過去にねずみ講や、高額な布団、原野商法、最近では再生可能エネルギーへのウソの投資など、高齢者が被害にあう詐欺のパターンは無数にある。そのなかで仮に振り込め詐欺の撲滅に成功したところで、高齢者はまた別の被害にあうだけだ。
その詐欺被害の防止のために、国が多額の税金を投入しているのを見ると、ちょっとおかしいんじゃないかという気がしてくる。
それよりも、これらの詐欺を末端で担っているのが、まともな就職ができなかった若者であることに視線を向けるべきではないのか。
詐欺グループは、振り込め詐欺やねずみ講や高額商品のセミナー販売など、詐欺のパターンにかかわらず、騙されやすく、かつ、資産を持っている高齢者の名簿を共有しているとのことだが、そうした組織的な犯罪の末端には、困窮した若者がいるわけだ。
ある意味、国の政策が、資産を持っている高齢者から、まともな就職ができずに困窮している若者へ、うまく資産を再分配することに失敗しているからこそ、詐欺業者のような違法組織が、「国に代わって」その再分配をしていると言えなくもない。
困窮した若者にとって、一回でまとまった「バイト代」を稼げるこうした詐欺ビジネスは、割のいい仕事に違いない。
当然、逮捕、起訴されるリスクはあるわけだが、そのリスクを犯してまで詐欺グループの末端に参加しようと考えるほど、経済的・社会的に困窮したり孤立している若者に、何ら有効な政策を打ち出せない国に責任がないとは言えない。
極論すれば、振り込め詐欺グループに金をむしりとられるくらいなら、国が高齢者のもっている資産の課税ベースを拡大し、世代間の試算の再分配をしてもいいのではないか。例えば国が運営する奨学金の資金にして、有利な条件でより多くの高校生が利用できるようにする、など。
とにかく、高齢者に過保護で、若年層の貧富の差の拡大は放置するという国のかたよった政策の一つの帰結が、振り込め詐欺被害の拡大だということを、メディアも政府もうちょっと認識した方がいい。