素人がFX投資をやっても利益が出ない理由(超長文)

今回は、FX投資はなぜ利益が出ないか、じっさいにやってみて根本的な理由がだいたい分かったので、投資の素人である筆者が何も分かっていないくせに、偉そうに論じてみようという企画。

Amazonの書評で評価の高いFX投資入門書や、テクニカル分析の解説書を読んでから、Meta Trader 4で裁量取引や自動売買を数か月試してみた結果、「FX投資はなぜ利益が出ないか」の理由がだいたい分かった。

FX投資についてどの解説書を読んでも、投資の考え方には大きく分けて順張りと逆張りの2種類があると書いてある。順張りはトレンドに乗った投資(ドル高傾向のときはドルを買う等)、逆張りはトレンドの転換点を予測して逆に売買する投資(ドル高傾向が終わりそうなときにドルを売る等)。

つまりトレンドを正しく予測することが最重要だということ。ひどく当たり前だ。

そしてトレンドを予測する方法は大きく分けて2種類あると書いてある。ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析。

ファンダメンタルズ分析は市場の状況全体から、例えばまだまだユーロは安くなるとか、そろそろ上昇に反転するなどと予想する方法。なので、ロイターなどの通信社のニュースを読んだり、各国の重要経済指標が発表されるタイミングに注目することになる。

テクニカル分析は過去の値動きだけを根拠に、今後の値動きを予測する方法。こちらは移動平均線、ボリンジャーバンド、MACD、RSIなどなど、過去にいろんな投資家がいろんな指標の計算方法を案出しており、それらの指標の動きだけにもとづいて、今後の値上がりするか、値下がりするかを予測することになる。

こういった基礎知識を仕込んだ上で、Meta Traderという定番の取引プログラム(PCにインストールして使う)の使い方と、そのプログラムで自動売買するためのプログラミング言語「MQL」を勉強してみた。

MQLはJavaに似た言語で、使えるオブジェクトも数が限られているので、C++やJavaプログラミング経験者なら習得は難しくない。

また、Meta Traderを使って手動でその場その場の値動きとテクニカル分析のための指標を見ながら売買する、いわゆる裁量取引の操作方法も簡単に習得できた。

その結果、FX投資で利益を出すのは、筆者にとってはほぼ不可能だという結論になった。


まず、筆者は純然たる文系なので、新たなテクニカル分析の指標を考えだすだけの数学の知識がない。もし筆者に高度な数学の知識があれば、既存のテクニカル分析よりも多少はマシな指標を考え出せたかもしれないが、筆者には無理。

次に、大きなトレンドがある時期でなければ、そもそもFX投資で利益は出ないことが分かった。

例えば極端な話、ドル円レートにずーっと値動きがなかったとすると、その間、ドルを買っても売っても、そもそも値動きがないので利益も出ないし損失も出ない。当たり前のことだ。

逆に言うと、長期間のトレンドがあれば、利益を出しやすい状況になる。

FX投資の解説書で、よく「XXか月でXX万円をXXXX万円にした筆者が解説するFXの極意」といったたぐいの宣伝文句が書いてあるが、これはほとんどの場合、その人物の取引技術が優れていたからではなく、利益が出やすい市況だっただけのことだと考えていい。

そういった書籍の著者は、過去に大損をしたけれど執筆時点で儲かっているか、執筆時点で儲かっているけれどその後どうなったか不明(大損している可能性が高い)な人たちがほとんどだと考えていい。

それとは全く別種のFXが儲からない理由として、複数の時間軸とリスクの取り方の相関関係の問題がある。

筆者が読んだ某財テク月刊誌のFX入門ムックには、ふつうの会社員がFXをやるなら、1日以上の単位での売買にすべきだと書いてあった。

例えば日本時間で夜寝る前に、翌朝の値動きを予測して「売り」か「買い」を入れておき、翌日決済するというパターンの売買だ。

そしてほとんどの解説書が、ふつうの会社員におすすめしない方法として、デイトレードやスキャルピングといった、数分~数時間単位の取引をあげている。

これは文字通り、数分~数時間先の値動きを予測して、短い時間単位で取引をくり返す方法だ。

当然ながら、取引(「売り」または「買い」のポジションを持つこと)から決済までの時間が長くなればなるほど、利益や損失がそれだけ大きくなる可能性が高い。逆に、決済までの時間が短い取引では、値動きの上下の幅がそれだけ小さくなるので、利益や損失が小さくなる。

つまり、長時間単位の取引では、たしかに短時間の値動きによるリスクを避けられるけれども、大きな利益を得られる可能性があるかわりに、大きな損失を出す可能性もある。

短時間単位の取引では、小さな利益や小さな損失しか出ないけれども、短時間の値動きを利用して着実に小さな利益を積み重ねられる、ような気がする。

ところが、ここに落とし穴がある。

まず長時間単位の取引のように、大きな利益・大きな損失の可能性がある取引は、まとまった資金が必要になる。その理由はFX取引が証拠金を元手にしたレバレッジを効かせられる取引であることだ。

いや、正確に言うと、長時間単位の取引で取引一回あたりの利益が数百円しかないとすると、明らかに取引コストの方が大きくなり、そもそもFX取引をする意味がなくなる。

たとえば1か月に数回しか取引せず、毎回の利益・損失が数百円単位だとすると、1か月の合計の利益・損失が数十円しか出ないことになる。これではそもそもFX取引をする意味がない。

なので長時間単位で取引するなら、取引一回あたりの利益で数千円~数万円を狙わなければ最初からやる意味がない。

しかし数千円~数万円の利益を狙おうとすると、一回の取引で「売る」または「買う」通貨の金額が大きくなる。

例えば、数日間単位でドル円を取引すると仮定すると、ふつう数日間のドル円相場の値動きは、円で言ってもせいぜい小数点の単位だ。

例えば、ある3日間にドル円相場が105.00円から105.50円の円安になったとする。値動きは0.50円だ。

この0.50円の円安を仮に正しく予測できたとして、5,000円利益を出そうと思ったら、手数料ゼロとしてドルを少なくとも10,000ドル分買っておく必要がある。

するとドルを買ったときの円換算額が1,050,000円、売ったときが1,055,000円で、差し引き5,000円の利益が出る。

つまり5,000円の利益を出すために105万円投資しなければいけないことになる。

レバレッジが1.0倍なら、証拠金は105万円必要。
レバレッジが100倍なら、証拠金は1.05万円でよい。

レバレッジが100倍で、毎回数千円の利益を狙って取引すると、運が悪ければ数回で元手がゼロになる。

つまり、長時間単位の取引で意味のある金額の利益をあげようと思えば、必然的にレバレッジを効かせて証拠金の数十倍の額を投資することになり、たった数回~十数回の取引で証拠金がゼロになり強制終了、となる可能性が高くなる。

なので、長時間単位の取引の方がリスクが低いので、普通の会社員向き、というのはウソである。

取引の時間単位を長くすることで、値動き(ボラティリティー)のリスクは避けられるが、意味のある金額の利益を上げるためにレバレッジの倍率を高くする必要があるので、市場にさらす金額(エクスポージャー)のリスクは逆に高くなる。

取引の時間単位が短いとこの逆で、値動きのリスクをまともに受ける代わりに、取引回数を増やせるので、意味のある金額の利益を上げるためのレバレッジを低く抑えることができ、市場にさらす金額をリスクは低くなる。

このように、どちらの時間軸を採用しても、値動きのリスクをとるか、エクスポージャーのリスクを取るかであって、どちらかを取れば「必ず」リスクが低くなるということではない。

それでも長時間単位の取引が会社員にとってメリットがあるとすれば、取引にかかる時間的コストが低い(ず~っと取引ソフトの画面とにらめっこしている時間が短くて済む)というだけのことで、取引自体のリスクが低くなるわけではない。

では値動きのリスクをとってでも、そして取引にかかる時間的コストが高くても、小さな利益を確実に積み重ねられる短時間単位の取引の方が、むしろ会社員にとって良いのではないか?という考えもでてくるだろう。

ところが、そういうことにはならない。実はエクスポージャーは「動的」に変化するからだ。

例えば、ある日の21時00分00秒にドル円市場が1ドル=105.00円になり、数分後には円安になると予測して1,000ドル買ったとしよう。

そしてその5秒後に1ドル=104.95円になると、50円の損失になる。さらに10秒後に104.80円になると200円の損失。そこから数十秒後に105.05円に持ち直すと50円の利益。

で、利益が何円になったところで決済すればいいのだろうか。

利益が300円出るまで待とうと思って待っていると、一時的に円高になって損失が500円になるかもしれない。

リスクをとるのが嫌いな性格の人は、利益が50円出たところで利益を確定するために決済するかもしれない。思い切ってリスクをとった結果、300円の利益がとれるかもしれない。

仮に、「少しでも利益が出たところで決済する」という方針で取引を続けたとする。

すると、相場は常に自分の予測した方向に動いてくれるとは限らないので、一定の確率で損失を出す。

じゃあ、「少しでも損失が出たところで決済する」という方針で取引を続けることにしたとしよう。

その結果は、運が良ければ、実質的にFX取引をしていないのと同じことになる。残念ながら相場は常に自分の予測した方向へ動くとは限らない。すると、小さな利益と小さな損失を積み重ねて、1か月合計で150円の利益(または損失)でした、といった状態になる。

1か月たった150円の利益のために、毎晩数時間、PCの画面に張り付くのは、明らかに取引にかかる時間的コストが高過ぎる。

では、「利益は毎回必ず100円出るまで待って、損失は毎回必ず100円になるまで我慢する」という方針で取引を続けることにしたとしよう。

この場合、利益の出た回数が、損失の出た回数よりかなり多くならないと、やはり時間的コストに見合わない。

では、「利益は毎回必ず200円出るまで待って、損失は毎回必ず100円になるまで我慢する」という方針に変えたとしよう。

この場合、利益を出す回数は少なくてよいが、そもそも200円の利益が出るように相場が動く確率が低くなる。

では、「利益は毎回必ず100円出るまで待って、損失は毎回必ず200円になるまで我慢する」という方針に変えたとしよう。

この方針転換は完全に無意味だ。この方針で最終的に利益を出そうと思うと、ほぼ常に勝ち続ける必要が出てくるからだ。

このように、小さな利益の積み重ねは、たった一回の損失で吹き飛ぶ可能性が十分にあるので、短時間単位の取引をする場合は、勝率(=全取引回数のうち利益が出た回数)が非常に重要になる。

ところが短時間単位の取引は、最初に書いたように、そもそも価格変動のリスクが大きい。価格変動のリスクが大きい中で、高い勝率を保つのは、当たり前だがとっても難しい。

ふつうの会社員の心理として、価格変動のリスクが大きい取引をしているときは、「小さくても確実な利益をとるために、秒単位で増えていく多少の損失は我慢する」という取引をしがちになる。

その結果は、確実に合計としては損失を出すことになる。

価格変動のリスクが大きい取引をしているときでも、最初に決めた比較的大きな金額の利益をとりにいくという方針をとれる人は、もともとギャンブラーの素質があると言っていい。

ところでギャンブラーの素質がある人は、以上、延々と書いてきたようなことをまったく気にせずFX取引を始めるはずだ。

といったところで、FX取引はなぜ利益が出ないか、お分かり頂けたと思う。

FX取引についての書物はすべて、FX取引はギャンブルではなく投資だと書いてある。

そして、適切なファンダメンタルズ分析とテクニカル分析、適切な資金管理をすれば、ふつうの会社員にとっても少額から始められる魅力的な投資であるかのように書いてある。

ところが実際は、適切なやり方を考えれば考えるほど、当然のことながら、リスク回避的な取引方針になり、そうすると、利益が出る確率が非常に低い取引をすることになる。

その間、プロの投資家は、FX取引と他の金融取引を混合した、大きなポートフォリオの中の単なる一つの取引としてFX取引をし、ポートフォリオとして利益を出す。

一般人は当たり前だが、そんな大きなポートフォリオなど持てない。株をやりつつ、商品先物をやりつつ、FXもやる、なんてことはできない。

大きなポートフォリオの中の一つとしてFX取引をし、FX取引以外の金融取引でFX取引のリスクヘッジができるプロの投資家に、FX取引「しか」していないふつうの会社員が、リスクの取り方の攻撃性で勝てるわけがない。

そうやって、FX取引「しか」していないふつうの会社員は保守的な取引方針でリスク回避しようとして、かえって小さな損失を出す。

FX取引「しか」していないギャンブラーは、大きな利益を出せた人はその方法を本に書いたり、インターネットで公開してお金を稼ぎ、大きな損失を出した人は誰に知られることもなく悲惨な人生を送っている。

FX取引とはそういうものだ、というのが筆者の個人的な考え方だ。