友人の陥ったカフカ的状況(2)

(つづき)

(注記:あまりに誤解が多いので注記しておくが、下記の内容はソリトンシステムズ社の「DME」という製品とは全く無関係である。くれぐれも誤解のないようお願いしたい)

筆者の友人が勤務先の広報担当部署に呼び出されて告げられたのは、びっくりするような事実だった。

友人の勤務先の公式ホームページの問合せ窓口に、友人の名前をかたった人物が、友人の個人ブログへの抗議文を送信していたのだ。

その人物は友人の個人ブログのURLを書き、しかも友人のフルネーム、完全な現住所、携帯電話番号まで抗議文の中に記入していた。

その上で、「貴社の社員が特定のソフトウェア製品をおとしめる文章を、個人ブログに書き続けている。すぐにやめさせなければ、しかるべき対応を取る」と抗議文に書いていた。

筆者の友人がいちばん恐ろしかったのは、友人の現住所と、まさにそのとき使っていた携帯電話の番号まで正確にその抗議文に書かれていたことだった。


友人は彼の個人ブログの過去記事をさかのぼれば、彼を知っている人なら、ある程度そのブログが彼の書いたものであることが分かっても仕方ないと思っていたようだ。

しかし、友人も筆者と同じく何度か転職しており、引っ越しも何度かしていたので、その時点の現住所が番地まで正確に書かれていたことが信じられなかったらしい。

また、友人は筆者同様、携帯電話については新しもの好きで、何度も買い替えている。携帯電話番号が変わったこともある。なのでその時点の携帯電話番号を知っている人物もきわめて限定される。

その抗議文を目の前に突きつけられて、友人の勤務先の広報担当と話をするにつれて、友人は自分がかなり奇妙な、カフカ的状況に陥れられようとしていることに、だんだんと気づいたらしい。

つまり、友人の勤務先の広報担当は、その抗議文が友人の自作自演だと疑っていたらしいのだ。

友人の匿名個人ブログの内容が、友人の仕事の内容と関係があり、かつ、友人の現住所と今の携帯電話番号まで知ることができる人物は、ほぼ、友人の同僚に限定される。

しかし、それを公式ホームページの問合せ窓口から抗議するという、まわりくどい方法をとるような人物は、普通に考えて会社の方針に不満を持っており、それを通常のルートで訴えることに失敗した人物。つまり友人自身しかない。

友人の勤務先の広報担当者は、そのように結論づけた上で、友人を呼び出したらしいのだ。

もちろん友人にとっては飛んでもない「冤罪」なのだが、あまり強く反論すると、逆に勤務先の自作自演説を強化するだけだと考え、友人は勤務先の要求どおり、個人の匿名ブログから、そのソフトウェア製品についての記事をすべて削除することにした。

友人がまず疑ったのは、もちろん管理職のT氏である。同じ職場の管理職なら、当然、筆者の友人の個人情報を知りうる立場にあるし、T氏が友人のことを不愉快に思っていることも事実だからだ。

しかしT氏とて、筆者の友人を陥れるために、会社の公式ホームページの問合せ窓口に下手な抗議文を送信するなどという、リスクの高い方法をわざわざとるだろうか。

そのことがあってから、筆者の友人はあれこれ考えた上で、一つの結論を導き出した。

友人の勤務先で、管理職T氏のパッケージソフト導入案に反対している人物がおり、それが友人であることを、管理職T氏は、そのパッケージソフトの導入業者に、なかば意図的に漏らしたのだろう。

その結果、パッケージソフトの導入業者は、友人の勤務先に常駐で作業をしていた期間を利用して、友人の現住所や携帯電話番号などの個人情報を入手し(それらは友人の勤務先の社内ネットワークに入れれば入手できる状態にあったらしい)、抗議文を送信した。

これが筆者の友人が導き出した、一つの結論だった。

つまり友人の勤務先の管理職T氏は、導入業者に友人の情報をリークすることで、あとは導入業者が自由に友人の勤務先での立場を不利にできるようなチャンスを与えたということだ。

この友人の結論というか、一つの仮定は、かなり滑稽なものだが、この結論が正しいことが後になってから明らかになる。

(つづく)