率直で親しみやすい経営者を求める日本企業社会の特殊性

小保方博士の割烹着報道と、NHKの籾井新会長の就任会見での失言問題は、じつは根っこは同じだ。

日本社会の一般的な日本人は、突出した能力や、突出した地位にある人物に、執拗に「親しみやすさ」を求める。その人物がどこかの部分で自分たち凡人と同じだと思わないと気がすまない。

突出した能力や突出した地位にある人物が、自分たちとはほとんど共通点がない非凡な人間であり、親しみやすい点がない場合には、一般的な日本人はその人物を妬みの感情で攻撃し始める。堀江貴文氏の事例が典型的だろう。

NHKの籾井会長は総合商社やIT企業で経営層として活躍されていたようだが、日本の組織で人望を集めて出世するには、一般社員にとっても親しみやすい人物であることが求められる。

きっと籾井氏は、キレイ事ばかり言わない、本音で話してくれる、などといった点で、過去に所属した組織の中で人望を集め、結果として出世したに違いない。

NHK会長の就任記者会見で籾井氏は、そういった親しみやすさ、率直さ、正直さが、放送局の会長としても同様に求められている資質だと信じて疑わなかったので、記者の質問に正直に、率直に答えてしまった。

たまたま放送局のトップに就任したために、率直さ、正直さを自分の長所として訴えることの愚かさ加減が誇張されてしまった。

しかし、そもそも一般企業の経営者であっても、利害関係者は株主、従業員、取引先、顧客、一般消費者だけではない。海外に事業展開していれば、海外拠点にいて、日本とは異なる社会的文化的背景をもつ従業員、取引先、顧客も利害関係者である。

そういう環境で、日本社会でしか通用しない、「親しみやすくて率直にものを言う」という長所を経営者が訴求するのはリスクがある。

かなり以前に日本の自動車メーカーが米国で、小さなきっかけから、大きな労働争議を引き起こしてしまった事例も、日本社会でしか通用しない雇用慣行を、何も考えずに米国で展開したことが原因だったと記憶している。

国際放送も事業としている放送局のトップであればなおさら、日本的な企業組織で自分にしみついてしまった、日本社会固有の「偉い人に期待される美徳」を相対化しておくべきだった。

そういう海外向け広報のリスク管理さえできない人物を、NHK会長に任命した政府からして、今のところ海外向けの国家としての広報活動に大失敗しているので、この政府にしてこのNHK会長といったところだろう。

そして、海外からいちいちNHK会長の発言や首相の言行について非難される理由はないという、排外主義者が増えれば増えるほど、日本はまともな国家扱いされなくなるだけなので、自業自得だといえる。