谷本真由美氏「クールジャパンは誰がターゲットなのか」はヘーゲル弁証法的な自己否定コラム

たぶん「めいろま」こと谷本真由美氏はヘーゲル哲学に詳しいのだろう。2014/01/18付『ワイヤレスワイヤーニュース』のコラム「クールジャパンは誰がターゲットなのか」は自分の主張を自己否定する弁証法的な構造になっている。

谷本真由美氏が英国のハードロックやヘビーメタルを愛しているのは、英国政府の国外向け文化振興施策が原因ではない。個人的に出会ったそれらの音楽が彼女個人をとりこにしたというだけで、英国政府とは無関係のはずだ。

(ちなみに僕にとって最高のロック・ギタリストはLed Zeppelinのジミー・ペイジである)

谷本真由美氏の上記コラム「クールジャパンは誰がターゲットなのか」に登場する、ロンドン中心部の日本料理屋で1万円以上もするランチを食べている人々が、日本食にハマったのは、日本政府の国外向け文化振興施策が原因ではない。

谷本真由美氏がハードロックやヘビメタにハマったのと同じように、あくまで個人として興味を持ち、自分の意志で心酔しているというだけで、日本政府とは無関係のはずだ。

谷本真由美氏が上記コラムで「海外では児童買春と間違われるアイドルの宣伝や、海外では嘲笑される温水便所」などと、糞味噌に非難している日本のサブカルチャーについても形式的には同じことが起こっているだけである。

これらダウンマーケットが大好きな、欧米やアジアの若者が、これら日本文化のカスな部分を愛しているのも、日本政府の国外向け文化振興施策が原因ではない。

あくまで個人の趣味として、これら日本のカスのようなサブカルチャーやダウンマーケットを愛し始めたのであり、日本政府とは無関係のはずだ。

つまり谷本真由美氏の論旨は、それが日本のアップマーケットであれ、ダウンマーケットであれ、ひとりの外国人が日本文化に興味を持ち始め、愛するのは、日本政府の政策とは無関係ということ、のはずである。

したがって谷本真由美氏のこのコラムの主張は、日本政府はそうした活動に税金を使うのをやめて、すべて民間企業にまかせなさい、となるはずである。

ところが谷本真由美氏は、日本政府は「遺産で食べている歴史の長い国々の指の間の垢でも飲んでみたほうが良さそう」だと書いている。

つまり、「フランスやイタリアは遺産で食べていく方法を知っている」のだから、そうした国に学んで、ダウンマーケットではなく、アップマーケットを国外向けに売り出すことに税金を使うべきだと書いている。

明らかに谷本真由美氏は、ダウンマーケットではなく、アップマーケットを選好すべきだと主張している。

この主張は、まさにこのコラムに登場する外国の「支配階級」が日本文化にすでに心酔していることが、日本政府のおかげでも何でもないという、谷本真由美氏の事実認定と矛盾している。

もしロンドンの寿司屋に来ている「支配階級」が、日本政府の施策のおかげで寿司屋に来るようになったと、谷本真由美氏が認定しているなら、谷本真由美氏の日本政府非難は誤りで、日本政府の施策は正しかったことになる。

もしロンドンの寿司屋に来ている「支配階級」が、日本政府の施策とは無関係に寿司屋に来るようになったと、谷本真由美氏が認定しているなら、谷本真由美氏が日本政府のサブカル選好を非難するのは、大きなお世話である。

このように、谷本真由美氏のこのコラムは論理的に破綻している。

谷本真由美氏は日本政府にアップマーケットを選好せよとアドバイスしているが、日本政府が余計なお世話をしなくても、海外の「支配階級」は個人の意思で日本のアップマーケットを愛してくれる。

なのに谷本真由美氏は、「日本政府は同じ税金を使うなら、フランスやイタリアを見習ってアップマーケットの国外向け宣伝に使うべきだ」という主張をしている。この期に及んで日本政府の政策努力をあてにしている。

なぜ谷本真由美氏はこのように、自己矛盾した議論を展開しているのか。その理由はかんたんだ。

彼女自身はコラムでは否定しているが、彼女自身がアップマーケット側の「支配階級側」であり、ダウンマーケットをカスだと認定しているからだ。

そして日本政府が「空港(で)出迎えてくれる萌えアニメキャラ」のようなカスに税金を使うことに耐えられないと考えているからだ。

もちろんハードロックやヘビーメタルは、谷本真由美氏にとってはカスではなく、「支配階級」であっても愛する価値のあるアッパーカルチャーと認定されているらしい。

こうした、ハードロックやヘビーメタルを除く、一部のダウンマーケットに対する谷本真由美氏の差別的な認識以外に、谷本真由美氏のコラムの論理的な自己矛盾を説明する方法があれば教えてほしい。

いずれにせよ、このコラムは結論が誤っているので、何の説得力もない。

谷本真由美氏の論旨に沿った、論理的に整合性のある唯一の結論は、「日本政府は国外向けの文化宣伝に税金を使わず、すべて民間企業にまかせろ」のはずだからだ。