Nexus7によるコモディティ化はWindows機の「いつか来た道」

Nexus7を購入して1週間になる。ネットメディアでもiPad、Nexus7、Kindle Fireの比較記事がたくさんあるが、そもそもiPhone/iPadのようなiOS端末とAndroid OS端末を比較するのは無意味だ。
PCについても、Windows95が登場して本格的にインターネット対応した頃、MacintoshとWindowsの比較記事がたくさんあったが、結果的に無意味な比較だった。
Windows機や、Android機が目指しているものは、端末のコモディティ化である。
どのメーカーが作っても、一定の規格を満たしている限り、同じような使用感があり、取り替え可能である。そういう没個性的だが汎用性のある端末が、Windows機やAndroid機の目指すところだ。
それに対して、Macintosh機や、iOS機は、その端末でしか味わえない体験を目指している。アップル社にしか作れない機能、外観、使用感などなど。
そういうわけで、Nexus7についても、Nexus7でなければならない理由は特にない。
僕自身もその独自性からNexus7を購入したわけではなく、クアッドコアの7インチAndroid端末では、いわゆる「中華パッド」を除いて最安値だから購入したまでだ。
他の消費者のみなさんも、Nexus7と同じくJelly Beans(Android 4.1)を搭載し、液晶が7インチサイズで、重さが300g前後で、CPUがクアッドコアで、内蔵メモリが同じサイズで等々なら、あとは付加機能とそれによる価格差で、Acer製であれ、SONY製であれ、東芝製であれ、富士通製であれ、何でも好きな端末を選べばよい。
基本的な規格が同じなら、さまざまな選択肢があるという点こそ、Android端末の最大の利点である。
その中でも、Nexus7の唯一の存在意義と言えば、おそらくグーグル社自ら、低価格路線のAndroidタブレットの標準を作ったことだろう。Nexus7の登場で、Kindle Fireも含めて、2万円以下のAndroidタブレットという製品カテゴリが確固たるものになった。
こうなると、日本メーカーがAndroidタブレットで競争力を持つには、よほどの付加機能が必要になる。しかしその際、自社製品との連携機能を強化しすぎると、Android端末本来の汎用性が失われる。
例えばSONY製タブレットなら、SONY製のブルーレイHDDレコーダーとの連携ができるかもしれないが、Androidタブレット側が陳腐化すれば、遅かれ早かれ買い換えざるを得ない。なら最初から汎用性のある他社製Androidタブレットを買おうということになってしまう。
Android端末は、Windows機と同じようにコモディティ化していく。グーグルによるタブレットをコモディティ化する戦略は、今のところ成功している。
タブレット分野では今までアップルが圧倒的なシェアを占めていたが、Nexus7やKindle Fireなど、Android端末が急速にシェアを伸ばしているからだ。
『iPadシェアは8割から5割に低下:米国ユーザー』 (2012/10/03 WIRED.jp)
『タブレット端末がデスクトップPCを抜いた!…BCN調べ』 (2012/11/08 BCNニュース。日本国内の動向)
スマートフォンでもタブレットでも、Android端末が圧倒的なシェアを握り、Windows機と同じような地位になれば、企業向けだけでなく、一般消費者向けでも、Android端末が事実上の標準(デファクト・スタンダード)になり、iOS端末はMacintosh同様、クリエイティブ向けの「ニッチ」な製品になる。
残る問題は、単価が安すぎるタブレット市場で端末メーカーがどう採算を維持するかと、Android端末のいわゆる「断片化」問題の2つだ。
後者の「断片化」は、各ハードウェア・メーカーが独自開発している機能を、Android OS自体が標準機能として取り込んでいくことで、ゆっくりと収束していくだろう。
むしろ前者の、メーカーがAndroid端末を売っても利益が出なくなる問題の方が難しそうだ。
ただ、これもWindows機のこれまでを見れば、ある程度は予測できる。完全にコモディティ化した端末は、端末を売ること自体が目的ではなく、その背後にあるソリューションが重要になる。
ある意味、各ITベンダーがWindows機をめぐって経験済みのことであり、同じ努力が求められるということだ。ここに新規性はない。Android端末だからといって、過去経験しなかったような全く新しい試みが求められている、というわけではない。
逆に、Android端末の「断片化」という短期的なリスクを、iOS端末に特化した事業によって回避してしまうと、中期的にはiOS端末をめぐる隙間市場の過当競争に陥ることになる。
Nexus7から見えてくるのは、Windows機の「いつか来た道」であり、特に革新性のある風景ではない。