携帯MNPキャッシュバックの名状しがたい「あやしさ」実体験

携帯電話の番号ポータビリティ(MNP)、つまりある携帯電話会社から別の会社ね乗り換えるときの、高額なキャッシュバック広告は本当なのか、じっさいに試してみた。というより、本当にだまされそうになった。
今回はそんなバカな僕の体験談を、恥ずかしげもなく披露してみたい。営業妨害になるかもしれないので、店名はあえて伏せておくが、東京都内の携帯電話販売チェーン店である。
その店舗はウェブサイトやツイッターで、他社からNTTドコモへのMNPは一括42,000円キャッシュバックとうたっている。特定の機種は、MNPの場合、本体一括0円で、さらに42,000円のキャッシュバックと、ツイッターで数時間おきにツイートしている。
最初に書いておくと、こういうツイートに見事にだまされて、のこのこ店舗へ出かける僕は「2ちゃんねる」の住民のみなさんからすると、ただの情報弱者である。単なるアホである。
その前提で、以下を読んでほしい。
上記のツイートを見てじっさいに店舗に行ってみると、まず、その特定機種の本体一括0円が完全なウソであることが分かった。
正確な金額は忘れたが、じっさいは一括払いで約15,000円。キャッシュバックの42,000円から差し引くと、実質的なキャッシュバックは約27,000円になる。
また、それより一括払い本体価格が1,000円安い機種もある、という店員の話だったが、いずれにせよ「一括払い本体価格0円」という機種は実在しなかった。
つまり…
(1)この店舗のツイッターはあきらかに虚偽の情報を流していたことになる。
つぎに「キャッシュバック」だが、これについては恥ずかしながら僕の社会常識がなかっただけで、「バック」されるのは「キャッシュ」ではなくクレジットカード会社の商品券である。
もちろんチケット買取業者で売りさばけば額面の90%以上の現金に換金できるので、「キャッシュ」と言えば「キャッシュ」なのかもしれない。
(2)「キャッシュ」バックは現金ではなく商品券である。
また、この「キャッシュ」バックを受けるには、携帯電話ショップがランダムに選んだ有料サイト(月額利用料315円)15個に登録する必要があり、かつ、その解約は翌月にしてほしいという説明が、契約前にあった。
つまり、315円×15サイト×2か月=9,450円を負担しなければ、「キャッシュ」バックは受けられない。(当月に解約していないか、どうやって確認するのかは別として)
先ほど実質的な「キャッシュ」バックは約27,000円と書いたが、これで約27,000円マイナス9,450円で約18,000円に目減りする。
当然、その有料サイトがどんなサイトか、自分で決めたわけでもないのに、自分の意思で登録したかのように自分の電話番号などの情報を、サイト運営会社にわたすことになる。
(3)「キャッシュ」バックを受けるには、自分で選んだのではない有料サイト15個に2か月間登録する必要がある。
しかも、その商品券は契約後3か月たってから、携帯電話ショップから郵送されてくるということである。
その理由は、店舗いわく「NTTドコモには『3か月縛り』というものがあり、3か月継続して使用していることを確認できないと、キャッシュバックはできない」とのこと。
この「ドコモの3か月縛り」については、耳にタコができそうなほど何度もくりかえし強調された。
(4)「キャッシュ」バックの商品券は、3か月後に郵送されてくる。
さて、この「3か月後」という点について、2つ問題がある。
(4-1)3か月後にこの携帯電話ショップが確実に商品券を郵送してくるという保証はどこにあるのか。
NTTドコモの契約書には、当然そんなことは書かれていないし、たぶん、「3か月後のキャッシュバックを条件に契約」などということは契約書に書けない。キャッシュバックは店舗と僕の純粋な口約束で、具体的なキャッシュバック金額を明記した書類も残らない。
これで3か月後に郵送しますと言われて、何を根拠にその言葉を信じればいいのだろうか。何しろこの携帯電話ショップは、すでに「本体一括0円」という虚偽の広告をツイッターで数時間おきに流していたのだ。
(4-2)次に、3か月後、僕が解約していないという、僕とNTTドコモの間の契約情報を、この携帯電話ショップは、僕からの要求なしにどうやって確認するのか。
携帯電話会社と顧客の間の契約情報は、契約した電話番号そのものを含めて個人情報が含まれるので、顧客と携帯電話会社以外の第三者に開示できないはずだ。
顧客自身が自分の契約情報を確認する場合も、顧客自身の要求がない限り開示されない。
携帯電話各社はインターネットでサポートサイトを開設しているが、そこに顧客が自らユーザIDとパスワードを入力するのは、形式的には顧客自身が要求したという証跡を残すためだ。
つまり、携帯電話会社の立場からすれば、無関係の第三者からの要求に応じる不正な開示はしていない、という証跡を残すためである。
仮にショップと携帯電話会社の間の代理店契約が、顧客の契約情報を共有してよいという内容になっていたとしても、顧客の契約状況を、顧客からの要求にもとづかず、3か月後も自由に確認できるということは、事実上、期限の定めなく、かつ、顧客自身からの要求もなく、この携帯電話ショップは自由に閲覧できることになる。
これは、個人情報の取扱いとして明らかにおかしい。
携帯電話ショップが、あなたの住所や電話番号を、無期限に、ショップの都合で、いつでも閲覧できるということになるからだ。つまり、次のような問題があることになる。
(5)携帯電話ショップにおける顧客の個人情報の取扱いに、違法とは言えないが、個人情報保護法上の疑義がある。
そして、ここまでわざと書かなかったが、以上の「3か月後に商品券で『キャッシュ』バック」という販促手法には、より根本的な問題点がある。
(6)契約をする「前」に「キャッシュ」バックの内容について説明がなかったこと。
最初に書いたように、僕は2ちゃんねる的には「情報弱者」なので、「キャッシュバック」の内容を確認せず、いつもスマートフォンや携帯電話を契約するのと同じ感覚で、NTTドコモの契約書に記入・署名をした。
そして、1時間後にまたご来店くださいという言葉どおり、店舗近くのレストランで時間をつぶしていた。携帯電話を契約するときにはいつものことだ。
だが、やはり「本体一括0円」の機種が実在しなかったことが気になり、「本体一括0円」の機種がないかを確認するため、改めてレストランから店舗に電話をかけた。
その話のなかで、実は「キャッシュ」バックが現金ではなく商品券だという説明があった。
こちらの想定と違うので、いったん契約手続を止めてほしいと言い、すぐに店舗をおとずれ、いろいろ説明を受けるなかで、商品券の郵送は3か月後だと、この時点ではじめて説明があった。
僕がレストランから電話をかけなければ、「キャッシュ」バックが商品券で、かつ、郵送が3か月後だという説明を受けないまま、MNP契約は完了していたことになる。
そして「本体一括0円」の機種が存在しないことの説明はつじつまが合っていなかった。店員いわく「キャッシュバック金額の方が本体価格より大きいので、実質0円ということです」とのこと。
いやいや、そういう理由で「本体一括0円」と表記するなら、正しくは「本体一括マイナス18,000円」と書くべきだろう。
まあこれはどうでもいいとして、広告でうたっている最も重要な取引条件である「キャッシュ」バックの具体的な内容、つまり、現金ではなく商品券であること、そして、3か月後にはじめて郵送されるということについて、契約書に記入・署名する「前」にまったく説明がなかったのだ。
これは契約手続としては、かなり悪質と言わざるをえない。
仮に携帯電話ショップが、「契約前に説明しないことは悪質でない」と主張するなら、そもそも「キャッシュ」バックという販促手法そのものが悪質である事実を認めたことになる。つまり、後ろめたいことをやっているので、契約前に説明できない、と認めることになる。
さて、お話はこれで終わらない。
僕がレストランからあわてて店舗にもどり、想定と違うので契約をやめると言い出したところ、なんと携帯電話ショップの店員は「キャッシュ」バックの条件をつり上げ始めたのだ。
まず、登録の必要な有料サイトを15個から10個に減らし、かつ「キャッシュ」バックと本体との差し引き金額約28,000円を、「切りがいいから」30,000円にする。これで実質約5,000円、「キャッシュ」バックが増える。
そして、僕がいまドコモの直営店でも(2012/07/31までの期間限定だが)MNP契約で20,000円のキャッシュバックをしているので、直営店の信頼性に比べると、ここで契約するメリットがそれほどないと話した。
その店員は、驚くべきことに、直営店でのキャッシュバック・キャンペーンのことを知らなかった。NTTドコモの公式サイトにも「チェンジ割」として正々堂々と書いてあるにもかかわらず、である。もっとも、知らないふりをしていただけかもしれないが。
キャンペーン・イベント情報「月々サポート」「チェンジ割」 (NTTドコモ公式サイト ※キャンペーン期間は2012/07/31まで)
すると店員は、カウンターの裏にまわって上司に掛け合い(あるいはそのふりをして)、さらに有利な条件を出してきた。
登録の必要な有料サイトを10個から15個にもどす代わりに、「キャッシュ」バックと本体との差し引き金額約28,000円を40,000円にするという。これでさらに実質5,000円増え、最初の条件に比べると約10,000円有利な条件になる。
そして、店員いわく「正直これでは赤字になりますので、他のお客さんの利益で穴埋めするようなかたちでギリギリ提示させて頂いています」。
僕はこの携帯電話ショップがまったく信用できなくなったので、契約をやめて帰ってきた。
MNPの予約番号は取ってしまっているので、ドコモかauの直営店、あるいは家電量販店で、無難に乗りかえようと考えている。
あの携帯電話ショップ、僕の個人情報は責任をもってシュレッダーしておきますと言っていたが、名簿業者に売りさばかれる前にシュレッダーしてもらえるのか、やや心配だ。