中国語版『サイゾー』は中国の日本ファンの動機づけを奪うかも

『サイゾー』が中国語版サイトを正式に開設した(こちら)。これについて運営主体のインタビュー記事は、中国・新興国の情報サイト『KINBRICKS NOW』の以下のリンクから読める。
『目的は打倒クール・ジャパン?!あのサイゾーが中国進出、その理由とは』 (2012/07/13 KINBRICKS NOW)
現時点で中国ツイッター(新浪微博)の中国語版『サイゾー』公式アカウントをフォローしているのはたったの2桁だ。
中国ツイッターのフォロワー数は、日本語圏のツイッターのおおむね10倍でやっと同等と思われる。つまり日本語圏のツイッターのフォロワーを1万人持っていれば、中国ツイッターでは10万人いないと、同程度の人気や影響力を持てない、という概算だ。
『サイゾー』の公式アカウントは、2012/07/11に本格的につぶやき始めたばかりにしても、まだまったく認知されていない段階にとどまっている。これからフォロワー数がどれくらい伸びるか、期待して見守りたい。
さて、中国語版『サイゾー』について、開設以来ページビューがどのくらい伸びているのか、僕には知る方法がないけれど、今後アクセス数が伸びるのかといえば、かなりあやしいと個人的には思っている。
その理由は、中国大陸にいる日本ポップカルチャー・フォロワーのネット民たちの「動機付け」にある。
彼らは自分の力で、日本語のオリジナルの情報サイトに(『サイゾー』もその一つだが)、場合によっては中国政府のグレート・ファイアウォールや検閲を回避する技術(翻牆)を駆使する危険を冒してアクセスし、それを中国語に翻訳して、中国人に紹介するというプロセスの楽しさとやりがいを奪ってしまうからだ。
僕がそれを感じたのは、alanという中国人女性歌手についての中国大陸のネット民とのやりとりを通じてである。alanは四川省出身、解放軍芸術学院卒のチベット族女性歌手だ。
日本でエイベックスからデビューして以来、個人的に彼女の日本国内の活動を、勉強しはじめたばかりの、とても下手くそな中国語で、主に中国の検索エンジン「百度」の掲示板サービス「貼吧」で発信する、ということをやってきた。それなりに反響があって、かなり面白い体験だった。
もちろん中国大陸のalanファンたち自身も、日本語のオリジナル情報を入手しようと、グレート・ファイアウォールを越えてalanの日本語ツイッターをフォローしたり、YouTubeを見たり、日本でしか発売されていないCDやDVDを団体購入したりと、ものすごいパワフルさで彼女の日本での活動を追いかける。
そのエネルギーや、一部の中国人ファンの日本語力の高さには、ただただ舌を巻くばかりだった。
そういう彼らをネット上で見ていると、入手困難な日本語情報にアクセスし、それを母国語に翻訳するというプロセスにこそ、中国では少数派である彼ら日本のポップカルチャー・フォロワーのプライドや楽しみがあるのだと実感できる。
つまり、中国大陸でメンバー募集中のAKB48クローン「SNH48(上海48)」にしても、中国語版『サイゾー』にしても、彼らから最大の楽しみを奪うことになってしまうのだ。
しかも、SNH48や中国語版『サイゾー』の受容者として想定できるのは、ほぼ、そうした熱心な日本のポップカルチャー・フォロワーたちに限られる。
このことは、日本のアニメやマンガを、もし日本の製作者や権利者たちが、自ら中国語に翻訳して中国大陸で提供したら、もともとそれらの作品を「違法」に中国語訳していた中国人ファンたちに歓迎されないだろう、ということにもつながる。
その理由は、無償で入手できた作品が有償になってしまう、という経済的な面より、むしろ、中国語版を制作する「二次創作」の楽しみとやりがいが奪われる、という心理的な面が大きい気がするのだ。
なので、中国語版『サイゾー』ができても、中国人の熱心な日本のポップカルチャー・フォロワーは、あえて中国語版『サイゾー』を通り過ぎて、日本語のオリジナルの各種サイトへ情報を取りに来るだろうと、僕は感じている。単なる勘でしかないけれど。
追記:
なお、中国語対応のボーカロイドソフトなら、日本企業が中国で発売しても一定の成果が見込めるのではないかと思う。なぜなら、それを使って創作したり二次創作したりする余地が残されているからだ。