SNH48が絶対に失敗するだろう理由

AKB48がついに中国大陸に進出し、SNH48(上海48)のメンバーを中国大陸で募集中だ。しかし中国大陸のAKB48クローンは確実に失敗するだろう。秋元康氏が理想主義者すぎるからだ。
以前この「愛と苦悩の日記」で書いたように、アジア地域でAKB48クローンを企画して成功する可能性があるのは、親日的な国だけだ。
当たり前のことだが、中国は公式には親日国ではない。もちろん中国人の中には日本のアイドルや音楽、アニメ、マンガなどに心酔している若者はたくさんいる。
だが、公式なアンケートなどで改めて「日本が好きか」と聞かれて、堂々と「好きだ」と言える中国人はあくまで少数派である。
しかも、日本の若者文化に心酔している中国人の若者たちにも、中国人としての自尊心は当然ある。
日本人のように、欧米文化に心酔するあまり日本文化をかんたんに忘れてしまうほど、中国人は自分たちのアイデンティティーを軽視しない。
誤解があるといけないので補足すると、中国人はいまの共産党政府にプライドを持っているのではない。独立した一人の個人として、中国人である自分にプライドを持っているのである。
日本の若者文化に心酔している中国人の若者たちも、中国人としての自尊心は持っている。
この点を念頭においた上で、SNH48をめぐる中国人の様々な立場を列挙してみよう。
(1)SNH48のメンバーになりたいという中国人の女子たち。
(2)SNH48が無事、結成されて活動を始められたとして、それを応援する中国人の若者たち(たぶんほとんどが男子)。
(3)SNH48の活動を支える現地の中国人スタッフ。
(4)SNH48の活動を放送したり報道したりする中国メディア関係者。
(5)SNH48の活動を傍観している中国人たち(主に大人たち)。
(6)中国政府
まず(1)SNH48のメンバーになりたい中国人女子たちだが、平均して中国人女子は日本人女子より人前に自分の姿をさらすことに抵抗がなく、自己主張や自己顕示欲が強いと言える。
なので秋元康氏も候補者集めには苦労しないだろうが、AKB48クローンにふさわしい資質をもつ女子がどれだけ集まるかは、かなり疑問だ。
中国の若者社会で、SNH48のメンバーへじっさいに応募するところまで行動にうつす女子たちは、中国人である自分自身にかなり高いプライドを持っている「リア充」タイプか、逆に、中国人らしからぬ気の弱さの「オタク女子」か、これら両極端のどちらかだと思われる。
普通の中国人女子は、中国人の女性歌手や女性タレントにあこがれており、日本人がプロデュースしているSNH48のメンバー募集などにそもそも興味がない。
つまり(1)の段階ですでに、中国人のなかでもかなりマイナーな中国人女子がメンバーとして集まることになる。
では(2)のSNH48を応援する中国人の若者はどうだろうか。
ちなみに、先ほどから中国人の「若者」というふうにわざわざ年齢層を特定しているが、中国社会では30歳を過ぎたいい年をした大人が、AKB48のようなアイドルに熱を上げることは、ふつうはバカにされる。
大人は年相応に精神的にも成熟することが求められる。日本社会のように、年老いてもアイドルの追っかけをすることが、「いつまでも若い」と肯定的にとられられることは、中国社会では一般的ではない。
なので、SNH48を応援する中国人は必然的に若者だけになる。
さてその若者たちだが、自国の歌手やタレントをさしおいて、しかも日本のオリジナルのAKB48やそのクローンもさしおいて、秋元康氏が中国大陸で作ったAKB48クローンを応援する気になるだろうか。
中国大陸でいまAKB48に熱中している中国人の若者たちは、あくまでAKB48が「日本品質」である限りにおいて熱中しているのである。
AKB48のメンバーが中国人の普通の女子より進んだファッションや生活スタイルをもっていて、かつ、彼女たちの楽曲や、彼女たちが登場するテレビ番組、コンサートの制作品質も高い。そういう「日本品質」に熱中するのである。
もし、SNH48のメンバーとして、例えばその名称のとおり上海出身の中国人女子ではなく、中国大陸の内陸部出身の田舎者が選ばれたら、いったい中国人の若者の誰が、そんな田舎くさいアイドルグループを応援するだろうか。
ちなみに、上海やその周辺の沿岸部の都市に住む、中国人のなかでは流行にも敏感でファッションセンスもいい中国人女子たちは、AKB48のような「下らない日本のオタク文化」には無関心である。
具体例で分かりやすく言えば、小Sやangelababyをかっこいいと思う中国人女子が、日本のオタク文化などに興味を持つはずがない、ということだ。
したがって、SNH48が無事結成にこぎつけたとしても、かなり悲しい結果になるだろう。
メンバーは容姿は良いかもしれないが、田舎出身だったり、少数民族だったり、都会の出身でも「オタク」っぽい女子だったり、総じて中国の若者社会で「マイノリティー」的な立場の女子ばかりが集まる確率が高い。
そして、そんなメンバーばかりが集まったSNH48を応援したいと思う中国人男子たちは、中国社会の中ではかなり肩身の狭い思いをしている「オタク」男子ばかりになるはずだ。
さらに(3)の現地中国人スタッフと、SNH48のメンバーとの間でどのようなことが起こるかを想像すると、なおさら失敗の確信が強まるばかり。
首尾よくSNH48のメンバーになった中国人女子たちが、日本人女子のように、日本の中学・高校の部活動のノリで、礼儀正しく統制のとれた行動をとるはずがない。
中国人は日本人よりもはるかに個人主義的だ。
自分の気に入らないことは気に入らないとはっきり言う。日本人アイドルのように、所属事務所やプロデューサ、マネージャの言うことに黙々と従うなどということはありえない。
その結果、現地でSNH48を支えるスタッフは、秋元康氏をはじめとする日本側の中国語ができないスタッフと、個人主義的なSNH48メンバーたちとの板ばさみになる。
そしてスタッフたち自身も、個人主義的で自己主張の強い中国人である。
秋元康氏が日本のAKB48クローンのメンバーたちに要求しているのと同じようなことを、SNH48に要求すればするほど、日本側スタッフとあつれきを生じることになる。
最終的には中国的なやり方と、日本的なやり方で妥協点を見出すことができず、なんとも言えない中途半端なクオリティのアイドルグループが出来上がるはずだ。
そうならないためには、日本語が堪能で、日本人的な集団主義を身につけた現地中国人スタッフが見つかるかどうか、それが最大の鍵だろう。
つぎに(4)の中国メディアだが、尖閣諸島問題など、日中の政治問題のゆくえによっては、SNH48をほぼ完全に無視するだろうことは、容易に想像できる。
中国政府の管理下にある中国の各種メディアが、国家レベルで対立している日本で企画されたアイドルグループを、国内のタレントと同等に応援したり報道したりするはずがない。
SNH48の人気は、おそらく中国ツイッター(微博)や検索エンジン「百度」の掲示板サービス「貼吧」など、ネット上だけのマイナーなものにとどまるだろう。
そして(5)の中国人の大人たちだが、こちらも中国メディアと同じく、SNH48のことなど気にもとめないだろう。
自分の子供が応援すれば、多少関心を持ってくれるかもしれないが、日本のお友だち親子のように、親子そろってアイドルグループを応援するといったことは、先ほど書いたような理由で、理由で中国では起こり得ない。
最後の(6)中国政府だが、意外に(4)の政府の管理下にあるメディアや、(5)のふつうの中国の大人たちより、SNH48に高い関心を持つかもしれない。ただしそれは、日本と民間レベルの文化交流をするときの「ネタ」として利用できるかぎりにおいて、である。
例えば、尖閣諸島問題が今よりもさらに先鋭化したとする。
中国政府は例によって、国民の不満の矛先が自分自身に向かないように、日本の「理不尽な主張」を非難することで国内のガス抜きをする。
他方、外交カードを確保するために、日本との関係が決定的に悪化すること避けるべく、政治ではなく文化のチャンネルを使って民間レベルの交流は続ける。
相手が日本であれ米国であれ、決定的に対立するということは、自ら外交カードを捨てるような愚かな行為だということを、中国政府は分かっている。
北朝鮮のように、どの国とも決定的に対立する瀬戸際外交は、外交カードがほとんど残らない非常に不利な立場である。中国はそんな愚かな外交はせず、異なるチャンネルで硬軟おりまぜた外交をする。
中国政府が政府主催のイベントとして、日本からSMAPやEXILEやAKB48を呼ぶのと同じように、日本人がプロデュースしたSNH48を日中文化交流の「コマ」として使う可能性は十分にある。そうなれば秋元康氏はみごとに中国政府に利用される結果になるわけだ。
そのように中国政府が政策実行の「コマ」として利用する芸能人が、ふつうの中国人の支持を集めることはない。
中国のお正月番組「春節晩会」で華麗な群舞を見せる中国政府の御用芸術団が、どこまで行っても御用芸術団でしかないのと同じように、SNH48も中国政府にとって都合のいいアイドルグループになるおそれがある。
以上、延々と述べてきたように、SNH48が中国大陸でアイドルグループとして「成功」と呼べるような成果をあげられる可能性は、ほとんどないと言っていい。
秋元康氏は、おそらく中国の実相をほとんど理解しないまま、自分の理想や理念だけでSNH48プロジェクトに乗り出したに違いない。
秋元康氏が日本社会という文脈において、すぐれたプロデューサであることは確かだが、とても中国大陸で通用するとは思えない。秋元康氏は中国大陸で成功するには、考え方が「純粋」すぎる。
中国的なものをまったく理解していないのは、エイベックスも同じだった。
中国の少数民族であるチベット族の女性、しかも解放軍芸術学院卒の女性を日本に連れてきて、あろうことか「愛と平和」や「音楽に国境はない」などという理想主義的なキャッチフレーズで、チベットフェイクの歌を歌わせる。
このエイベックスの政治オンチぶりは救いようがないレベルのナイーブさだ。
現実の世界で中国政府はチベット自治区のチベット人に血も涙もない弾圧と同化政策を展開しているというのに、そのチベット族出身の歌手に「愛と平和」がテーマの曲を歌わせる。
中国政府にとってalanのような歌手は、上野動物園のパンダと同じ役割を果たしている。
つまり政治レベルで日本と緊張関係を保つために、民間レベルの文化交流のチャンネルを開いておく必要があり、その「コマ」として、エキゾチックな顔立ちのチベット族女性が日本でデビューすることを意図的に容認する。
よく考えて欲しい。中国政府が、alanという人民解放軍付きだった女性歌手たった一人を、それと分からないように強制的に帰国させることなど、ごくごく簡単なことだ。パンダに貸出し期限を付けるのと同じ考え方である。
このエイベックスの救いようのないナイーブさと同じものを、僕は秋元康氏にも感じる。
おそらくSNH48は失敗する。ちょっとした話のネタにはなるかもしれないけれど。

SNH48が絶対に失敗するだろう理由」への1件のフィードバック

  1. 文月のアイドル応援日記

    SNH48が成功することを心から願っています

    私は、SNH48やTPE48、JKT48などのAKB48海外姉妹グループの成功を心から願っています。絶対に成功してほしいと思っています。愛と苦悩の日記の「歌うペンギン」さんが、SNH48が絶対に失敗するだろうとしてその理由を書かれていますが、それについての感想を書こうと思います……

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