サラリーマンだって「サラリーマン真理教」に「洗脳」されている

オウム真理教の一連の事件で高橋容疑者が逮捕された。
民放各局の朝の情報番組は、高橋容疑者がまだ麻原への帰依が深い点について、「専門家」やコメンテーターの論評をあれこれと放送していた。
しかし、強い違和感を抱くのは、それらの専門家やコメンテーター、アナウンサーなどが、宗教への深い帰依やマインドコントロールを、まるで他人ごとのように語っていることだ。
ツイッターでもつぶやいたのだが、たとえば皆さん自身を含めて、皆さんの身のまわりには、みごとに洗脳やマインドコントロールをされ続けている人たちが無数にいるはずだ。
例えば、日本の経済成長が止まり、デフレがまったく解消せず、少子高齢化が避けられないこの経済状況なのに、いまだに1980年代以前のライフスタイルを続けている人たち。
つまり、結婚して核家族を持ち、住宅ローンを組んで持ち家を買うのは当然と思っている人たちのことだ。
サラリーマンになったらゴルフを覚えて人脈作りにはげみ、夜遅くまで同僚の顔色をうかがいながら付き合い残業をし、空気を読めない人間は出世コースからはじき出され、などなど。
そうした、日本の高度経済成長期にしか合理性をもたないライフスタイルを、両親によって「洗脳」され、いまだに合理的だと信じ込んでいる人たちは、日本に無数に存在する。
そうした人たちは、デフレや少子高齢化という状況下で合理性のないライフスタイルを信じ続けているという点で、いまだに麻原に帰依しつづけている高橋容疑者と、本質的な違いはない。
両者の共通点は、自分が自分である理由、アイデンティティーを失うのを恐れていることだ。
いくら社会の状況が変化していても、自分や自分の両親、親族、会社の同僚、親しい仲間たちが「正しい」と信じていることから、なかなか抜け出せない。それを疑ってしまうと、自分の所属する集団から排除され「仲間はずれ」にされるからだ。
多くの会社員は、自分の勤めている会社という集団に「帰依」することで、自分のアイデンティティーを得ている。
よく言われることだが、定年退職した後も、地域社会で「専務」や「部長」といった、会社での肩書きをふりかざす人たちは、「サラリーマン社会」という集団に完全にマインドコントロールされた、哀れな人たちである。
もちろん高橋容疑者はテロ集団の実行犯なので、ふつうの会社員といっしょにすることはできない。しかし、自分のアイデンティティー喪失を恐れて、特定の集団に「帰依」している点で、ふつうの会社員も大差ない。
日本社会におけるマインドコントロールの図式は、自立した個人が巧妙な洗脳手法でマインドコントロールというより、もともと特定の集団に帰属しないと生き延びられないのが日本社会である、というだけのことだ。
そうした特定の集団へ深く帰属している状態は「ムラ」と呼ばれている。
「原子力ムラ」も、原発は何が起こっても安全だという「教え」を「布教」し、一人でも多く「洗脳」し「帰依」させる「宗教団体」と言えなくもない。
いまだに終身雇用モデルで運営されている日本企業も、その「社風」を社員に「布教」し「帰依」させることで、欧米諸国と比べると非人間的な労働環境に、疑問を持たせないようにする「宗教団体」と言えなくもない。
そんな日本社会で、そもそも「洗脳」や「マインドコントロール」されていない人間は、むしろ少数派である。
この点を正しく理解しないと、いい大学に入り、いい会社に入り、幸福な家庭をもち、持ち家を構えてうんぬんといった、きわめて特殊な価値観と生活スタイルから、いったん落ちこぼれると、誰もがかんたんにカルト教団に「洗脳」されるだろう。
これは、「正常」なライフスタイルから、カルト教団の信者という「異常」なライフスタイルに転落した、ということにはならない。
サラリーマン人生というある種の「カルト」から、別の種類の「カルト」に単に移行した、というだけのことだ。
自分は「正常」で、彼らは「異常」だと考えている人たちほど、じっさいには自分が「正常」と思いこんでいる価値観にみごとに「洗脳」されているだけなのだ。

サラリーマンだって「サラリーマン真理教」に「洗脳」されている」への1件のフィードバック

コメントは停止中です。