ビートたけしの同性婚へのからかいと、ワシントン・ポスト紙の真摯な論評の落差

012/05/12放送のTBS『7days ニュースキャスター』で、オバマ大統領が同性婚への支持を表明したニュースについて、ビートたけしの同性婚への差別的な発言が話題になっている。
日本の英字新聞『Japan Times』に、オバマ大統領が同性婚を支持したことへの反発に、効果的に反論をこころみている『ワシントン・ポスト』紙の記事を見つけたので、日本語で要約してみる。
‘ Putting to rest five myths about gay marriage’ (May 16, 2012, Jonathan Rauch, Japan Times)
ところで、このビートたけしの発言、「欧米先進諸国」なら著名人の発言なので大きな問題になるだろうが、日本の週刊誌や新聞は今のところまったく取り上げていないようだ。
これは個人的な想像に過ぎないが、おそらく彼を批判すると痛い目にあうといった種類の「後ろだて」が、ビートたけしには存在するのだろう。
なので、ビートたけしの発言については、2ちゃんねるや個人ブログの文字おこしに頼るしかない。見つけた限りで情報量がいちばん多かったのは、下記のブログだ。
『TBS「ニュースキャスター」で同性婚がとりあげられた!』 (2012/05/13 『Lの世界:Laraララが一番』)
このブログ記事が、何らかの理由で削除されないとも限らないので、ビートたけしと、ゲストの女優・渡辺えりと、アナウンサーのやりとりの部分だけを引用しておく。

ビートたけし:「オバマさんが同性の結婚を認める…と、これ、だんだんだんだんいくと、今度は動物との結婚と認めると…」
渡辺えり:「何言ってんの。どうしてそういうこと言うんですか。日本でも同性愛の結婚が認められればいいと私は思いますけどね。いろんな子供たちとかひきとって育てたりとか、やさしいカップルがどんどんそうやって増えていけばいいんじゃないかと思うんですけど」
ビートたけし:「エジプトなんかではきょうだいで結婚する」
渡辺えり:「きょうだいって、それは、でも…」
(中略)
ビートたけし:「でも子供を育てるって…子供をもらうじゃない?それで、男の、結婚した二人が子供を育てることに関しては、その子供がどういうふうになっていくかってのはどうなんだろ?ね?」
三雲アナウンサー「でも愛情があって育てれば…」
渡辺えり:「ちゃんと育つんじゃないですか、立派に」
ビートたけし:「でもお前んとこのお母さんはお父さんだと…」
渡辺えり:「そうならないようにうまくみんなでやっていけばいいんじゃないですか、愛があって、だってそれは同じことじゃないですか。異性婚も同性婚も」
安住アナウンサー「えりさん言ってやってくださいよ、たけしさんに」
ビートたけし:「異性婚、同性婚…(笑)それはだから動物婚もあっていいだろ」
渡辺えり:「どうしてそこにいくんですか。まじめに答えてる私がおかしいんですかね?まじめになることないですよね。冗談ですよね?(笑)たけしさんが言ってるのは」

では冒頭でふれた『ワシントン・ポスト』紙の記事を要約してみる。タイトルは「同性婚の5つの神話を終わらせる」。
1つめの神話、「同性婚は結婚そのものの定義を変えてしまう」。
これは、ビートたけしが「これ、だんだんだんだんいくと、今度は動物との結婚と認めると」と表現している点だ。
この神話の内容は、結婚はそもそも異なる性の母親と父親がいっしょになり、子供とつながるものであり、異なる性という前提を変えてしまうと、結婚は結婚ではない別のものになる、という神話だ。
この記事を書いたジョナサン・ローチ氏は、同性婚に反対する人々は、結婚というものに、一つの機能しか見ていないが、複数の機能(原文では動詞のmultitask)があると反論している。
もちろん、生物学的に両親と子供を結びつける機能は、同性の結婚では実現できない。しかし結婚には生物学的ではないやり方で、両親と子供を結びつける機能もある。例えば養子制度だ。
結婚とは、子供が大人になるために必要な経済的、教育的環境を安定的にあたえるための制度でもある。
現代においてはむしろ、結婚のもつ機能として、生物学的に両親と子供を結びつけるよりも、社会が子供たちに適切な養育環境を与える機能の方が、より重要になっている。
そして、子供を育てるという点において、養子制度や同性婚は、異性婚と大きな差はない。
差があるとすれば、養父母や同性婚など、いわゆる「伝統的でない」結婚に対する社会の偏見だ。ビートたけしの発言は、たとえ冗談であれ、その偏見を助長することに加担している。
次に2つめの神話、「同性婚は子供を傷つける」。
これは、ビートたけしが「でもお前んとこのお母さんはお父さんだと」と表現している点にあたる。
ジョナサン・ローチ氏は次のように反論している。
伝統的な家族にとって最大の敵は、同性婚ではなく、異性婚の失敗である。米国では両親の離婚などで、二人の異性の両親といっしょに生活できていない子供が、子供全体の3分の1にのぼる。
これは同性婚が議論になる数十年前から、すでに起こっている事実である。
つまり、家族の絆を守りたいのであれば、最優先にすべきは同性婚に反対することではなく、結婚という規範そのものを最強化することであり、同性婚を認めることは、その後押しになる、というのがローチ氏の意見だ。
3つめの神話、「信仰の自由との衝突が不可避」。
これについては、地下鉄サリン事件のような特殊な場合を除き、日本ではそもそも信仰の自由が政治的問題になるほど、宗教に帰依している政治的圧力団体は存在しない。
某政党の母体となっている某新興宗教も、ダーウィンの進化論さえ否定する米国の一部の保守派に比べれば、宗教団体とは言いがたい。
なのでこの神話は省略する。
4つめの神話、「国全体が同じ政策をもたねばらなない」。
これも、州によって結婚についての法制度が異なる米国ならではの神話なので省略する。
最後の5つめの神話、「戦いはほぼ終わっている」。
ギャラップ社の世論調査によれば、同性婚を認める人の割合は50%を超えている。オバマ大統領も今や公に同性婚を支持した。
より若い世代は同性婚に何の問題も見出していない。なのでこの戦いはもうすぐ終わるのではないか、という神話だ。
これについて、ジョナサン・ローチ氏は慎重な意見を持っている。
米国のほとんどの州で同性婚が禁止されている事実などをあげて、同性愛者の権利だけでなく、結婚そのものの意義も論点となる同性婚について、議論はまだまだ続くだろうと書いている。
いずれにせよ、ローチ氏は日本のお笑い芸人であり、世界的な映画監督でもあるビートたけしが、オバマ大統領の同性婚支持表明をからかったことなど知らないだろう。
それでもローチ氏の議論は、ビートたけしのからかいをすでに先回りして反論し、女優・渡辺えりさんの誠実な反論を支持している。
しかもローチ氏は、ビートたけしのように、同性婚をめぐる議論の全体をからかうような、不遜なことをしていない。
同性婚がまじめな議論に値する問題であり、同性婚をめぐる議論の行く先が、同性愛者にとってかなり困難である現実を認めている。
ローチ氏と対比するだけでも、「ビートたけし」の限界は明らかだ。
「お笑い芸人・ビートたけし」はもちろんのこと、「映画監督・北野武」も、彼に金獅子賞を与えたイタリアをふくむ「欧米先進諸国」へ向けて、同性婚のような社会のさまざまな問題について、まともに議論するだけの良識を持ち合わせていない人物であることが、誰の目にも明らかだ。
つまり、「映画監督・北野武」は「欧米先進諸国」で、日本を代表する芸術家の一人であるなどと、できれば標榜してほしくない、というのが僕の個人的な望みだ。
さもないと、他の日本の芸術家たちの、一市民としての、社会の構成員としての資質まで疑われてしまう。

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