NHKドキュメンタリー『”脱原発”に揺れる町~ドイツ・世界最大の原発跡地~』まとめ

NHK BS1のドキュメンタリー『”脱原発”に揺れる町~ドイツ・世界最大の原発跡地~』。ドイツ北東部の海岸沿いにある、旧東ドイツのグライフスヴァルト原発。ドイツ政府による廃炉決定22年後の現在の状況。かんたんにまとめてみる。
原発跡地の再開発の成功
・同原発は東ドイツの全電力の11%をまかなっていた。
・同原発から西に4kmの海岸沿いのルブミン町。かつて原発労働者の町だったが、今は北側にしか海がないドイツで、美しい砂浜を売りに観光産業に注力。
・1990年東西ドイツの統一後、旧ソ連製の原発は安全性に問題ありとして政府が廃炉決定。
・ルブミン町は、原発跡地のうち、線量の低い巨大なタービン建屋(長さ1.2km)に工場を誘致する計画を推進。
・その結果、洋上風力発電の直径5mの鉄製のタワーを製造するメーカーなど30社が、旧タービン建屋内に工場を建設。これほど巨大な工場用の建物が、他に見つからないため。
・旧タービン建屋の隣りの敷地には、デンマークからも風力発電のタワーを製造する企業が進出。欧州で風力発電の需要が急速に伸びていることが背景。
・ルブミン町が工場誘致に成功したのは、ドイツには海への出口が北にしかないこと。
・そして、50億円かけて原発の旧排水路を拡張する工事をおこない、バルト海へ直接、巨大な製品を大型船で搬出できるようにインフラを整備したこと。
・港の建設費用の50億円のうち45億円は、ルブミン町の近隣の地方自治体が連合を結成、国から補助金を得ることに成功した。
・2001年6月、当時のシュレーダー首相が世界の先陣を切って、脱原発宣言をおこなったことが、原発の跡地利用を後押しした。
・というのは、脱原発宣言の結果、ドイツ全体が風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーに、大きくかじを切ったため。
・グライフスヴァルト原発の跡地も、新しいエネルギー基地をめざして企業誘致を進めた。
原発の解体作業のノウハウも事業化
・しかし、旧原発の解体作業は、企業が入居した旧タービン建屋のすぐとなり、3号基・4号基の原子炉建屋で内で続いている。放射能が外に漏れないように管理されている。
・例えば、重さ150トンの巨大な蒸気発生器は、まだ154マイクロシーベルト/時と高線量。
・グライフスヴァルト原発は解体作業を想定しない設計になっていたため、巨大な蒸気発生器を地下から搬出する作業などの際は、構造体に大きな穴を開けるなど、事前の工事が必要。
・蒸気発生器のような高線量の廃棄物は、貯蔵施設に運ばれて保管される。
・原子炉が入っていた格納庫は放射線量がきわめて高く、重量も数百トン。建物全体の解体予算が組まれていないため、そのままの状態で保管される。
・低線量の部品は、人間が手で一つひとつ小さく切断し、部品ごとに異なる方法で、原発敷地内の除染専用工場で除染される。もともと原発の修理工場だった場所。
・この除染専用工場に持ち込めるのは、除染作業を人間が近くで行える程度に線量が下がっている廃棄物。
・2000気圧の水で除染されるもの、完全な密室内でステンレス粉を高速で吹きつけ、汚染された表面を研磨するものなど、さまざまな方法で除染される。
・除染作業が終わったものは線量を計測され、線量が高い部分が少しでも残っていれば、その部分だけを切り取るか、再作業となる。
・除染作業を経て、原発の外に出せるのは廃棄物全体の9割。資源として再利用可能な、鉄、銅、アルミニウムなどは買取業者に引き取られる。
・線量が高いものが原発外に搬出されていないかは、定期的に検査され、現状、問題ないと報告されている。
・原発の解体、除染作業、跡地管理を行なっているのは、地域最大の企業EWN社。以前は民間企業だったが、2000年に国有化されている。
・同社はもともと原発の運転・管理をしていた企業。原発は廃止になったが、5,000人の従業員のうち2,000人が残って仕事をつづけている。
・EWN社が20年以上にわたって続けてきた、原発の解体、除染のノウハウは、世界的な脱原発の流れのなかで新たなビジネスとなり、世界各地の原発解体を請け負うようになっている。
・同社はロシア、リトアニア、ブルガリアなど、5か国、7か所の原発の解体を請け負っているだけでなく、ロシアの原子力潜水艦の解体も手がけている。過去、55隻のロシアの原子力潜水艦の原子炉の解体作業を請け負った。
・原発跡地の再開発が進むに連れて、ルブミン町には従業員の家族が移住するようになった。現在のルブミン町長は、町のさらなる活性化の第一に観光をあげ、道路などのインフラ整備を進めている。
・道路などのインフラ整備の費用は、州からの補助を受けている。原発が廃止されたルブミン町に資金援助するのは州の義務である、という要求。EWN社は地元への社会貢献として、無償で砂浜の整備をおこなっている。
それでも残る中間貯蔵施設と最終処分場の問題
・ところが、EWN社が所有、運営する中間貯蔵施設が、いま最大の問題となっている。使用済燃料など、線量の高い廃棄物が保管されているためだ。施設内は8区画に分けられ、線量の高さによって、分けて廃棄物が保管されている。
・中間貯蔵施設にはテロリストが侵入しないよう高圧線が張りめぐらされ、つねに防犯体制が敷かれている。
・2番目に高い線量を保管する「ホール7」には、先ほどの搬出済みの蒸気発生器が、線量をおさえる特殊な塗装をほどこされて保管されている。同原発の全5基の原子炉容器も、ここに保管されている。
・原子炉容器は停止後すでに22年たっているが、さらに20~30年保管され、線量が下がるのを待つ。線量が下がれば、除染・解体される。
・最も線量が高い廃棄物を保管する「ホール8」には、アルミニウム合金製のキャスクと呼ばれる容器で二重に密閉された、使用済み燃料棒が保管されている。
・原子炉からの燃料棒の取り出し、キャスクへの収納作業は、すべて水の中で行われ、かつ、すべて遠隔操作で行われた。
・こうした高線量廃棄物の保管期間は、法律で最大40年と定められているが、40年を超えて保管されるのではないかという不安を感じている市民もいる。
・ルブミンに中間貯蔵施設を作ることが決まったのは1993年。当時のドイツ政府はゴアレーベンを最終処分場にすると断言していた。ゴアレーベンの地下1,000mにある岩塩のドーム内だ。
・ところが安全性の問題から2000年にはゴアレーベンの計画は白紙にもどされた。政府は再検討を始めたが、最終処分場が決まる見通しはまだ立っていない。
・そのためルブミン町の観光産業も影響を受けている。例えばルブミンの海岸沿いにあるホテルは、中間貯蔵施設の存在を理由に銀行からでさえ融資を受けられない。
・追い打ちをかけるように、2010年ドイツ政府は全国の放射性廃棄物もルブミンに搬入できる、という決定をおこなった。
・現在ドイツで稼働中の原発は9基。2022年までにすべて閉鎖される予定。廃棄物はそれぞれの原発で保管することになっていた。
・しかし、集中保管が経済的との理由で、従来の中央中間貯蔵施設、ゴアレーベン、アーハウスに加えて、ルブミンにも、ドイツ全土の原発の廃棄物を集中保管することになった。
・廃棄物の受入れ料は、上述のEWN社(国営企業)にとって事業収入となる。EWN社ユルゲン・ラムトゥン社長は、原発の廃棄物は国のものであり、国営企業としてその指示に従っているだけ、と語る。
・ルブミンの現町長も廃棄物受入れを容認。中間貯蔵施設と観光は対立するものではないと語る。
・2012年2月、ルブミンへ他の原発の56トンのし用済み燃料棒がキャスクで搬入された際には、抗議運動が起こり、搬入を阻止しようとした人からけが人が出た。
・ルブミンの町民にも、徐々に中間貯蔵施設に増え続ける放射性廃棄物に、不安や不信が強くなり始めている。福島第一原発事故をうけて、「想定外」の事態がルブミンの中間貯蔵施設でも起こるかもしれない、と考える人もいる。
・2011年11月、中間貯蔵施設ゴアレーベンへキャスクが輸送された際、ドイツ全土から数千人が反対デモに参加。警官隊との衝突で20人以上のけが人。キャスクの輸送はドイツ全体の大きな問題となっている。
・ルブミンでは、上述のように、いまも解体、除染作業が続けられている。原子炉容器の格納庫は解体も移動もできない。高線量の廃棄物が中間貯蔵施設から運び出される先の、最終処分場も決まっていない。
・脱原発をかかげて22年。ルブミンでは、いまだ先の見えない日々が続いている。