久しぶりに、新入社員のみなさんへのメッセージ

新入社員の皆さんは、たぶんそろそろ就職活動中に無理して上げていたテンションが、失望とともにだんだん下がってくる頃だろうと思う。
内定を勝ち取るには、ウソのない範囲で自分を有能な人材に見せる必要があるが、じっさいに日本企業に入社すると、求められる能力は対して高くない。
こんなかんたんな仕事のために、なぜあれだけ自分の能力をアピールするような就職活動をする必要があったのかと、現実とのギャップにかなりガックリきているだろう。
こんな誰でもできるような仕事をやっていて、自分はこの会社で必要とされるような人材なのか。いつになったら自分の能力を発揮できるやりがいのある仕事をやらせてもらえるのか。
…などなど、こういう失望を感じはじめた新入社員は少なくないはずだ。
まあでも、一般的な日本企業が従業員にもっとも求めるものは、突出した能力ではなく、協調性、空気を読む能力であり、これは幼稚園、小学校、中学校、高校、大学と、何ら変わりはない。
日本社会の中にできあがるあらゆる組織は、組織の和を乱さないことが、その組織のメンバーにとって最も重要なことである。
大学という組織は、高校までの組織と比べるとかなり自由なので、社会人はその延長線上で、さらに個人の自由を謳歌できると勘違いしがちだが、現実は、中学校レベルにもどると考えたほうがいい。
一般的な日本企業の組織では、中学校なみに協調性や上下関係が重視され、出る杭は打たれ、組織のメンバーに強い個性などまったく期待していない。
野心のある新入社員の皆さんは、当面はそういう日本的組織に同調して、ひっそりと息をひそめることに集中した方がいい。
そうやって3年ほど耐えて、履歴書に書けるだけの実務経験を積めば、もし語学力や特殊な資格などの突出した能力があれば、いつでも一般的な日本企業ではない企業に転職できる。
一般的な日本企業ではない企業というのは、海外の企業だったり、外資系だったり、外資系のように純粋な実力主義に近い社風をもった企業のことだ。
一般的な日本企業が、ときに「実力主義」を標榜することがあるが、ほとんどの場合、組織として人事管理や労務管理ができていない事実を「実力主義」と呼んで隠蔽しているだけである。
日常業務で職位にかかわらず個人が能力を発揮できる環境があるという、ほんとうの意味での「実力主義」がある日本企業は、ごくごくごく少数だと考えたほうがいい。
新入社員の方のなかには、「しまった!内定をもらっていた別の企業に入社しておけばよかった」という後悔の仕方をする人もいるかもしれないが、その後悔は9割ほどの確率で間違っている。
というのは、全く社風の異なる企業が、同一人物に内定を出すということは、まずありえない。外面のいい企業はたくさんあるので、一人の学生から見ると、まったく印象の違う企業であっても、じっさいに入社すると似たり寄ったりの「日本的組織」というオチは、かなり高い確率で起こる。
だからこそ、たとえば入社3か月などでの早急な転職はやめた方がいい。無事、転職に成功したとして、たった3か月で辞めた新入社員を雇ってくれるような企業は、まず間違いなくいわゆる「ブラック」企業である。
海外へ出て行って転職活動をするのでもない限り、日本国内で転職先を物色する限り、どの企業も似たり寄ったりだと考えるべきだ。いまあなたが抱えている問題は、仮に転職に成功したとしても、必ずくり返される。それはあなたのせいであると同時に、組織のせいでもある。
被雇用者としての仕事の退屈さに失望し切ったときに、初めて日常生活が始まるのだ、と考えたほうがいい。
就職活動は実はテンションの上がる、かなり楽しい「お祭り騒ぎ」だったのであり、あれほど気分が盛り上がるような時期は、「勝算のある転職活動」でも始めるのでない限り、二度とやって来ない、と思ったほうがいい。
仕事は、基本、退屈で面倒なものであって、面白いものではない。