声優・劉セイラさん取材記事試訳(日経オンライン中国語版)

日経オンライン中国語版に、青二プロダクション所属の中国人声優・劉セイラさん(記事中では本名)の取材記事が掲載されていたので日本語に試訳してみる。例によってあくまで試訳なので、正確には原文をあたっていただきたい。
『向日語”声優”挑戦的中国女孩(日本語声優に挑戦する中国人女性)』 (2012/04/10 日経オンライン中国語版)
(ここから日本語試訳)
日経新聞編集委員 吉田忠則:「外国人がこの仕事をする資格があるのかと考えると、少し心配になります」と劉※犖(リウ・ジンルオ)さんはこぼれそうな涙をこらえながら言った。劉さんが選んだのは日本語によるアフレコ、「声優」の仕事だ。劉さんは続けて語った。「でもアニメとマンガはずっと私を元気いっぱいにしてくれています。そういう作品への感謝の気持ちを思い出すと、大丈夫と思えます」
※=「女」へんに「青」。
劉さんは去年4月、多くの日本の人気「声優」を擁する青二プロダクションに所属し、声優としての第一歩を踏み出した。日本のアニメは世界中の若者に人気があるが、外国人声優は非常にまれだ。日本語が母国語ではない人たちにとって、アフレコは非常にチャレンジングな仕事である。
劉さんと日本のアニメの出会いは幼稚園のころにさかのぼる。最初に見た日本のアニメは『聖闘士星矢』。扇子を持って登場人物を演じて見せたりしていた。12、13歳のころ『新世紀エヴァンゲリオン』を見て大きな衝撃を受けた。当時はまだ日本語が分からなかった。だが声優のすばらしい演技に深く心を打たれ、身動もできないほどだった。
その後、劉さんは北京外国語大学に合格。選択肢はいくつかあったが、「日本語を学ぶ」ことにこだわり続けた。その頃すでに「日本語をマスターして声優になる」という決心をしていたからだ。
運命の扉は2007年に開き始める。当時、劉さんは北京で行われた日本のアニメのアフレコ大会に参加した。ゲストには『機動戦士ガンダム』のアムロ・レイなどで有名な古谷徹氏もいた。その時、古谷徹氏は演技の発表をひと通り聴き終わった後、「僕といっしょにアフレコしたい人はいますか」と呼びかけ、劉さんを舞台に上げた。
古谷氏の指導のもと、二人は舞台の上で演技を始めた。当然日本語である。劉さんはその時、古谷氏の声の力に圧倒され、その場の空気全体が震えているように感じた。「これこそ本物の声優なんだ」、劉さんは心の中で叫んだ。劉さんの演技も高い評価を受けた。この時、舞台の下で青二プロダクション池田克明社長が二人の演技を見ていた。劉さんの高水準の日本語と表現力に池田氏は深い印象をうけた。
チャンスは2010年秋に訪れる。当時、一休さんのキャラクターで中国人向けに京都を紹介するプロモーションビデオを制作するにあたり、一休さん役がまだ最終決定されていなかった。この仕事を担当していたのが池田氏だった。池田氏の頭に浮かんだのが劉さんだ。劉さんは北京外国語大学を卒業後、日本留学の道を選択し、そのころ専門学校の声優科に通っていた。この仕事は中国語だったこともあり、池田氏は改めて劉さんの演技力を認めた。そして池田氏は「卒業したら青二に入らないか」と告げた。こうして夢への扉は開かれたのだ。
青二プロダクションに入ってすでに1年。劉さんはまだ理想の仕事は実現できていない。いまうけている仕事の大部分は中国語の仕事で、たまに日本語の仕事があっても、ただ「がんばれ!」「負けるな!」と言うだけの、その他大勢の役である。
この取材を受けているときも、劉さんの日本語は普通の日本人と全く差がない。しかしアフレコをする段になると、劉さんは自分の発音が正確かどうか心配になり、不自然になってしまうのだという。「自分の発音が不自然じゃないかと不安になるんです。そういう不安や気持ちの動揺が声にも出てしまうんです」
未来の道はどこにあるのか?いつからか劉さんは自分に言い聞かせるようになった。「いつまでも単なるアニメ好きではいけない。アニメを見終わった後、いつまでも『わぁ、面白かった。いやぁ、すごく良かった』というだけではダメだ」。劉さんはすでにプロの声優になる決心をしている。ただ最近ときどきこの道を選んだことは正しかったのかと疑ってしまうこともある。
劉さんは改めて自分の出発点を見つめている。なぜ声優になることを選んだのか?アニメやマンガが自分に勇気と元気を与えてくれたからだ。そして自分もそんな作品を作り出したい。「私は改めて作品に対する愛と感謝の気持ちを見出したいんです」
劉さんが感じているとまどいについて、青二プロダクションの池田氏は次のように解釈している。「どんな声や口調でセリフを言うか、これは日本人にとっても非常に難しいことです」。まして彼女は中国人だ。舞台や映画と違って、アニメのアフレコでは、表情や動作で感情を補うことはできない。声優は声だけを使って表現しなければならない。池田氏は強調する。「現時点で劉さんが達しているレベルは、すでに非常にすばらしい。きっと成功の最後の一歩を踏み越えることができる」と。
それは難しい挑戦かもしれない。しかしもし成功すれば、世界中の若者があとに従うだろう。その影響はアニメ業界にとどまらず、日本の国際化にとっても巨大な前進となる。劉さんが自身の声で日本に元気を与えてくれる日が一日も早く来ることを期待している。
(ここまで日本語試訳)