「ドイツ太陽光発電への助成金カット」というニュースに関する誤解

英『ガーディアン』誌に「ドイツ、太陽光発電補助金カット」という記事が掲載されたので、日本語試訳してみる。誤訳があればご指摘いただきたい。
原文はこちら。‘Germany to cut solar power subsidies’, the guardian, 2012/03/02 19:05 GMT
この記事を読むと、ドイツ政府が再生可能エネルギー支援の補助金負担に耐えきれなくなったのは事実のようだ。
ただしその理由は、太陽光発電のコストが依然として高く、そのコストを下げるための補助金負担を政府が負いきれなくなった、ということではない。
むしろその逆で、記事を読めば分かるが、太陽光発電コストが技術革新によって従来型発電とほぼ同水準にまで下がっているのに、おまけに政府から補助金までもらえるということで、いわば「猫も杓子も」太陽光パネルを設置するようになり、いわば「バブリー」な状態になったので、政府として補助金はカットします、ということである。
このニュースを「ドイツ太陽光発電普及政策の失敗」と読むのは、単なる曲解だ。むしろ、成功しすぎて太陽光パネルの設置需要が高くなりすぎ、補助金水準を下げざるをえなくなった、というだけのことだ。

Germany to cut solar power subsidies
ドイツ、太陽光発電補助金をカット
Government plans to reduce subsidies by up to 30% as high consumer demand leaves it unable to support green energy
政府は高い消費者需要で再生可能エネルギーを支援できなくなったため、補助金を最大30%削減する計画
Kate Connolly in Berlin
guardian.co.uk, Friday 2 March 2012 19.05 GMT
You can have too much of a good thing, it turns out. The German government has said it has been forced to cut subsidies for solar panels, because demand was so high it could no longer afford to support the green technology.
度が過ぎてうんざり、という結果になった。ドイツ政府は太陽光パネルへの補助金をカットせざるを得なくなったと発表。需要が高く、これ以上グリーン・テクノロジーを支援する余裕がなくなったからだ。
Friday’s announcement has left Germans rushing to install solar panels on buildings ahead of the planned cut in subsidies of up to 30%.
金曜日の発表によって、ドイツの人々は補助金が最大30%カットされる計画を前にして、駆けこむようにして建築物にソラー・パネルを設置している。
The government has explained its decision as a way of slowing the rapid growth in the sector, saying it was one of Germany’s success stories, but had been allowed to grow too fast and had been too heavily subsidised.
政府の説明によれば、この決定は同産業分野の急速な成長を低下させる一つの方法であり、これはドイツにとってサクセス・ストーリーの一つだが、成長があまりに急速すぎ、あまりに手厚く支援されすぎた、としている。
“We’ve already seen a huge reduction in the incentives in the past few years but the incentives were still too high,” the environment minister, Norbert Rottgen, said. “Solar is a success story made in Germany. We want it to be an acceptable technology not only in the future but right now but the cost factor has to be at acceptable levels.”
「我々はすでに過去数年にわたって巨額のインセンティブを削減してきました。しかし、インセンティブはまだ高すぎました」と、環境相のノルベルト・ロットゲンは話す。「太陽光はドイツで作られたサクセス・ストーリーです。我々はそれを将来だけでなく、現時点でも許容できる技術にしたいのですが、費用の面で許容できるレベルにある必要があります」
Environmentalists, renewable energy experts and industry representatives have expressed incredulity at the 30% cut from 9 March, following earlier cuts of up to 50% over the past three years. They said it was a huge blow for the fledgling industry and a contradiction in terms for a country planning to phase out nuclear power.
環境保護主義者や、再生可能エネルギーの専門家、同産業の代表者は、過去3年間にわたって最大50%カットされてきたのに引きつづき、3月9日から30%カットするなど信じられないと表明した。
“This plan amounts to nothing less than a solar phase-out law,” said David Wedepohl, spokesman for the German Solar Industry Association, which represents 800 solar companies. “Under these circumstances there’s no way that the transition of the energy industry can be successful. It’s also putting tens of thousands of jobs at risk, and it’s tough both on investors and on citizens who want to be part of the energy transformation.”
「この計画はまさしく太陽光を徐々に廃止する法律です」と、800社の太陽光関連企業を代表するドイツ太陽光産業組合のスポークスマン、ダヴィッド・ヴェデポールは言う。「こうした状況下ではエネルギー産業の成功などありえません。何万もの職を危険にさらしますし、投資家にとっても、エネルギー転換に参画したい市民にとっても、厳しいです」
Germany is the world’s top installer of photovoltaic power, with a capacity of around 25,000 megawatts, almost as much as the rest of the world put together. It added a record 7,500 megawatts in 2011.
ドイツは世界最大の太陽光発電の設置国で、発電能力は約25,000メガワット、世界の残りの地域をすべて合わせたのとほぼ同じだ。2011年には7,500メガワットの記録を追加した。
The sun provides from 3.2% to – on sunny days at midday – up to 25% of Germany’s energy.
太陽は、3.2%から、晴れた日の昼間で、最大25%のエネルギーをドイツに提供している。
Wedepohl admitted: “You could say we are the victims of our own success. The costs of solar energy have come down immensely due to technological development and scaleability so we’re scratching our heads and wondering: why stop supporting this now?”
ヴェデポールは認めている。「我々は自分たち自身の成功の犠牲者だと言えるでしょう。太陽エネルギーのコストは技術開発と大規模化によって、大幅に下がりました。なので我々は頭をかきながら『なぜいま援助をやめるの?』と思っているところです」
Germany has seen a huge increase in use of solar panels over the last two years, thanks to a subsidy system that utility companies are obliged to pay to people who generate their own solar power, which is then pumped into the grid. Power companies pass on the costs to their customers in their electricity bill. At a time of rising prices the government argues that it has to lessen the financial impact on consumers by decreasing the subsidies.
ドイツはこの2年間でソーラ・パネルの使用を大幅に増やしてきた。それは、太陽光で自家発電して送電網に電力を供給している人々に、電力会社が対価を支払う義務があるという、補助金精度のおかげだ。電力会社はそのコストを彼らの消費者の電力料金に転嫁する。電気料金が上がってるときは、政府が補助金を減らして消費者への金銭的な影響を少なくする必要がある。
The solar sector boom has seen everyone from farms to kindergartens making the most of the opportunities to erect solar panels on their roofs. There has even been a trend to form co-operatives and rent space on the roof of public buildings that have installed panels, such as swimming pools or schools. There are now 1.1m such systems in Germany.
太陽光発電システムのブームによって、農家から幼稚園まで、誰もが屋根にソーラ・パネルを設置してそのチャンスを最大限に活かす様子が見られた。協同組合を作り、スイミングプールや学校など、公共施設の屋根のスペースを貸し出し、パネルを設置するという動きまで見られた。いまやドイツにはそのようなシステムが110万もある。
The proposed cuts would see the feed in tariff subsidy falling to 19.5 cents per kilowatt hour (kWh) for small plants, and to 13.5 cents for plants of up to 10 megawatts. German retail electricity prices are between 21 and 24 cents per kWh.
今回の補助金カットによって、フィード・イン・タリフ(固定価格買取制度)は、小規模発電所では1キロワット時あたり19.5セントに減り、最大10メガワットに及ぶ発電所では13.5セントに減る。ドイツの消費者向け電力料金は1キロワット時あたり21から24セントの間になる。
The decision must still pass through the cabinet and parliament but political observers believe it is likely to be approved.
この決定は、まだ内閣と議会を通過しなければならないが、政治評論家によればおそらく可決されるとのことだ。
On Monday thousands of demonstrators are planning to gather at Berlin’s Brandenburg Gate to protest under the banner “Stop the Solar Phase Out”.
月曜日には数千人のデモ隊がベルリンのブランデンブルグ門に集まり、「太陽光をフェーズ・アウトするな」という横断幕の下、抗議活動を計画している。
At a time when solar power is on the verge of costing the same as conventional power, due in large part to the fall in the costs of solar panels and their installation, renewable energy sector representatives have expressed their suspicions that the cuts are an attempt to appease the major energy companies who are losing out greatly to renewables, particularly since the decision last year to phase out nuclear power following the Fukishima disaster in Japan.
太陽光発電は、大部分がソーラー・パネルとその設置費用の低下のおかげで、従来の発電方法と同じ費用になろうとしている。まさにその時に、補助金をカットするのは、とりわけ去年、福島の惨事に続いて原子力発電を徐々に停止すると日本で決定されて以来、再生可能エネルギー企業に大敗しつつある大手電力会社をなだめすかす試みだと、再生可能エネルギー分野の代表者たちは、疑念を表明している。
“We’re taking a part of the market away for large electricity suppliers,” said Wedepohl. “But as a country we made a decision after Fukishima to phase out nuclear energy, so we need a lot of power.”
「我々は市場の一部を、大手電力会社に分け与えようとしているのです」とヴェデポールは言う。「しかし我々は福島の後、原子力発電を徐々になくしていこうという決定をした国なのですから、多くの電力が必要です」
(c) 2012 Guardian News and Media Limited or its affiliated companies. All rights reserved.

2012/03/06 追記:
ドイツのオンラインニュース『The Local』(英語版)にもこの報道があり、やはりこのニュースをドイツの太陽光発電拡大政策の失敗とするのは誤解であることが明らかだ。というのは、補助金削減後もドイツは太陽光発電施設を建設し続けると明記されている。
‘Cut in solar power support sparks row’ (The Local, 2012/02/12 09:02 CET)
こちらも全文を試訳しておく。

環境相のノルベルト・レットゲン(CDU)と経済相のフィリップ・レスラー(FDP)は、今週太陽光発電補助金を3分の1カットする計画を発表し、それをうけて環境保護グループは失望を表明した。
削減後、太陽光発電事業者は送電網への1キロワット送電ごとに、0.135ユーロから0.195ユーロしか受け取れなくなる。この削減にかかわらず、ドイツは次の2年間にわたり総発電力2,500~3,500メガワットの新たな太陽光発電施設を建設する計画だ。
レットゲンは太陽光発電は「費用と送電網の安定性の維持の面で、賢明な枠組みで成長」しなければならないと語っている。
レスラーは太陽光発電補助金を太陽光発電事業者にとっては「甘い毒」だと表現している。「もし、再生可能エネルギー法によって確保されている120億ユーロのうち60億ユーロを、発電の3%を占める太陽光発電に使えば、明らかにその経済的価値を考えなければなりません」とレスラーは言う。
野党SDPの副議長ウルリッヒ・ケルバーはレスラーを鋭く批判した。「太陽光を攻撃する政府の計画はレスラーが自分のイデオロギーで全部手書きしたものだ」と彼は言う。「レスラーは自分の意志を環境相に押しつけている」
緑の党のリーダー、ユルゲン・トリッティンは、政府は連立の平和のために、ドイツは再生可能エネルギーへシフトしたのに、政府はそれを犠牲にするのかと糾弾した。彼は補助金削減を「完全にバランスを欠き、したがって無責任だ」とする。
「この合意は投資家を脅かし、数千の職を危険にさらし、気候の保護を傷つける」と彼は付け加えた。
グリーンピースのエネルギー専門家、スヴェン・テスケは、この計画が1万社の中堅企業の13万の職を脅かすと語り、WWFのメンバー、エバーハード・ブランズはこの取引を「エネルギー政策の悲劇」だと表現した。