大洪水は低コストと引換えの当然のリスク

タイの大洪水について、読売新聞オンライン版に「日系企業、タイ政府の不手際に怒り…洪水拡大」(2011/10/30 12:19 読売新聞)という記事があった。
「水没した工業団地に入居する大手の日系精密機器メーカーの社長は『100億~200億円を投じて全設備を入れ替えなければならない。具体的な被害防止計画がなければ、タイに追加投資できない』と話した」(上記の記事から引用)
このようにタイへの追加投資を見直さざるを得ない日系企業が出てきているということだ。
しかし、逆に考えると日本国内は建設業の利権体質が非難されながらも、タイに比べて急峻な地形であるにもかかわらず、豪雨による大きな被害を受けずにやって来られたということだ。
円高を理由にして、日本企業が生産拠点やサービス拠点を海外に移すのには、当然、日本では考えられないような事態が起こるリスクを負うことになる。
今回の大洪水に、タイ政府が迅速に対処できなかったのは、タイという国家に現に存在する政治上のリスクであり、製造コストの低さと引き換えに、日本企業が当然負うべきリスクである。
仮にタイという国家に今回のような大洪水があっても、工場地帯が浸水しない充実したインフラと、迅速に対応できる安定した政治体制と成熟した行政組織があれば、平均的な人件費はすでにもっと高くなっていただろうし、その他、製造コストを押し上げる要因になる様々な費用が高くなっていたはずだ。
一部の日本企業が、海外生産について、製造コストの安さというメリットを、何のリスクもなく享受できるなどと考えていたとすれば、おめでたいとしか言いようがない。ましてやタイ政府を非難するなどもってのほかだ。