原発の「コスト等検証委員会」、山名元のトンデモ発言

国家戦略室の「コスト等検証委員会」第一回会合が2011/10/07に開かれた。要は、今後の原子力発電をどうするか、コストを一から計算しなおしましょうという会合だ。
議事概要は下記のリンクからPDF形式で閲覧できる。
コスト等検証委員会 第1回(平成23年10月7日)議事要旨
この中で、原発御用学者として有名な山名元(京都大学原子炉実験所教授)や、秋元圭吾(財団法人地球環境産業技術研究機構)が、とんでもない発言をしている。
「原子力ムラ」と呼ばれるだけのことはあるという、常識では考えられない発言である。
まず確認しておきたいのは、福島第一原発事故は、現在進行形の事故ということだ。
今後、東京電力が事業をつづけていくにあたって、この事故の処理のために、どれくらいのコストを負担しなければならないか、まだ誰も正確なところはわからない。
最終的にそのコストを、国が税金をつかって肩がわりするにしても、当然ながら、まずは東京電力の財務諸表に事業をつづけるためのコストとしてのっかる。
仮に、「東京電力は福島第一原発事故のコストは財務諸表に含めなくてもいい」といった新しい法律でもできれば、同社の株価は持ちなおすだろうし、大規模なリストラをすることもないだろう。
しかし、東京電力が民間企業である以上、一事業者として、事故を起こした責任とコストを、まず追うのは当然だ。その後、負担しきれないコストを税金でまかなうのか、それとも東京電力をいったん破綻処理するのかは、議論が分かれてもいい。
さらに言えば、今後、日本国内の原子力発電所は、民間企業にまかせるのでなく、すべて国有化して税金で運営していきます、というなら、話はまったく違ってくる。
それにしても、福島第一原発事故は、すでに起こってしまった事故だ。東京電力という一民間事業者が、すでに起こしてしまった事故であり、これからも事故処理のコストはかかりつづける。
ところが、上述の秋元圭吾や山名元といった人物は、今後、日本で原子力発電をつづけていくにあたり、福島第一原発事故の処理のためのコストは、発電コストから除外すべきだと、「コスト等検証委員会」で堂々と発言しているのである。
すでに起こってしまった原発事故を、今後、何十年、何百年かけて処理するためのコストを、原子力発電のコストに含めるのは「感情的」だと、主張しているのである。
長くなるが、山名元の発言を、上記の議事概要から引用してみる。
「○山名委員 私も原子力の専門家の1人として一言申し上げたいんですが、今回の福島の事故というのは、勿論これだけの被害を出して、極めて大きな社会的インパクトを与えている何か問題があったというのはたしかです。その問題には、事業者側の問題、政府の安全規制側の問題、あるいは原子力技術業界自身の問題、さまざまなものが入っているわけです。
 ただ、これは1つのこれぐらい鮮烈なインパクトを与えているからして、この技術が世界で最低の技術であるから、それに見合うコストを付けろという要求のように見えるんですが、それはちょっと感情的に行き過ぎている。やはり原子力というのは、これからまさに白地の土俵に乗せて、火力や再生可能エネルギー等と並べてどう組んでいくかという議論をするんですから、この原子力を安全サイド、規制サイドを全部直した上できちんとしたものにして、さてこれがどれぐらいお金がかかって、どう国にとってメリットが出るかという議論が今、求められているわけですから、そういう視点でまずコスト評価というのは粛々とやるというのが最も大事だと思います。
 ここに書かれている要求の中で粛々とやれるものが幾つか入っていると思いますから、それは原子力委員会で検討していくことになりますが、福島の事象に余りにも感情的に反応して、それをコスト評価の中に入れるような姿勢というのは、この場では適切ではない。それは原子力委員会に粛々と冷静な評価をしてほしいということを要求することが一番大事であると思います。」(p.23~24 下線は筆者である僕)
山名元の言っている「ここに書かれている要求」というのは、大島堅一氏(立命館大学国際関係学部教授)の作成した資料で、福島第一原発事故の処理コストを、原発の運転コストに含めるべきだ、という主旨の資料のことだ。
事故処理コストを、今後、日本が原発の運転をつづけるコストに含めよという要求の、いったいどこが「感情的」なのだろうか?
上述のように、事故処理コストは、一義的には東京電力が追うべきコストであり、それを東京電力の原発事業のコストに含めるのは、純粋に企業会計の観点から見ても当たり前だ。
上記に引用した発言につづいて、山名元はこんなことを言っている。
「太陽光パネルが東京都に 2,000 万 kW 設置されたとします。東京都に大地震が来て全部壊れたら、そのリスクはカウントするという話は当然出てきますね。津波で火力発電所がやられてもそうだと、そんな話になってしまって、そうすると比較ができないんですよ。」(p.24)
よろしい。それなら話はかんたんだ。発電事業者に、すべての発電所について、民間の保険会社の発電所事故保険に入ることを義務づければ、それで公平なコスト試算ができるではないか。
ところで、福島第一原発事故が現在進行形である今、原子力発電所について、民間の保険会社が保険を作ってくれるだろうか。作ってくれるとすれば、その保険料は、火力発電所や太陽光発電所にくらべて、どれくらいの金額になるだろうか。
おそらくそれ以前に、民間の保険会社は、原子力発電所について、今回の地震による事故までをリスクに含んだ保険など作ってくれないだろう。原発事故の処理コストなど、既存の保険料計算のロジックでは計算不可能だからだ。
それでも、山名元や秋元圭吾が、公平なコスト計算にこだわるなら、天災による事故も含んだ保険を民間の保険会社に作らせて、その保険料も発電コストに含めるべきである。
その保険料さえ原発のコストに含めず、まして現在進行形の福島第一原発事故の事後処理のコストも原発の運用コストに含めないというのは、完全に非合理的な思考である。
そんなことさえ分からない、山名元や秋元圭吾のような委員が参加している、政府の「コスト等検証委員会」に、国民はまともな結論など期待できるはずがない。
まず、山名元や秋元圭吾のような、明らかに完全に非合理的なコスト計算を主張するような、コストの計算ということについて何も分かっていない委員には辞めて頂きたい。
山名元や秋元圭吾が参加すべきなのは、原発について技術的な議論をする委員会であって、間違っても原発の運用コストを検証する委員会ではない。
だって、彼らはコストの何たるかを、全く理解していないのだから。
実際に福島第一原発事故は、目の前で、現在進行形で起こっていて、現場作業者の人件費や、自治体の除染費用などもふくめ、日々、コストが発生しているということさえ理解できていないのだから。
ひどい話だ。