日中韓3国コンサート:目に余るエイベックス提灯記事

今朝のスポーツ新聞のエイベックス提灯記事が目に余る。
昨日、北京のオリンピック・メインスタジアム(別名「鳥の巣」)で、中国・日本・韓国を「代表する」歌手が集まってコンサート「三国演芸 中日韓風雲音楽祭」が行われた。
同コンサートに出演したEXILEについて、日刊スポーツとスポーツ報知のネット上の記事は以下のとおり。
(*ちなみにどちらの記事も「三国演芸」を「三国演義」と表記する同じミスをしている。中国語では「芸」も「義」も発音が同じ「yi」で、中国の芸能記事でも間違っているものがあるが、「三国演芸」とは中国古典『三国(志)演義』の「義」をわざと「芸」にしたダジャレである)
『EXILE初海外 北京で4万人を魅了』(2011/09/26 日刊スポーツ)
『EXILEに北京4万人熱狂!中国名「放浪兄弟」で大歓声』(2011/09/26 スポーツ報知)
日本の芸能界に興味のある中国人に聞いてみるといいが、今回のコンサートに出演した日本人歌手、倉木麻衣、EXILE、Happinessのうち、中国で最も人気があるのは倉木麻衣だ。
その理由は、彼女がアニメ『名探偵コナン』のエンディング『Secret Of My Heart』を歌っている他、中国の若者の間でも人気のある『コナン』とのタイアップが多いからだ。
中国の10代、20代の若者にとって日本文化は、極言すれば、アニメかAKB48かのどちらかである。EXILEのような、そもそも日本のサブカルチャーと無縁な「マッチョ・リア充」グループが、中国の若者の間で大人気になるはずがない。
ちなみに中国の代表的なマイクロブログの一つ「新浪微博」に、EXILEは公式アカウントを開設しているが、フォロワーはたったの4万9千人(2011/09/26時点)。
若者人口が日本の10倍いる中国大陸で、芸能人としてこの数字しかないということは、EXILEは中国大陸では、ほぼ無視されているということを意味する。
なお同じ「新浪微博」でフォロワー最多をほこる芸能人は女優のヤオ・チェンで、1,250万人である。EXILEが中国大陸で無視できる存在というのが誇張でないことは、お分かりいただけるだろう。
まして今回のコンサート「三国演芸」の中国側の出演者を見れば、この手の文化外交においても日本が大変な失策をしていることが分かる。
中国側の出演者は、まず、ボーイッシュな若手女性歌手で、大陸では文句なしのトップスターである李宇春。そして、香港の大スターで、真田広之、チャン・ドンゴンとの共演もある男性俳優ニコラス・ツェー。大陸と香港とであえてバランスをとったと考えられる。
そして、日本人にもわかりやすいように、日本メディアに気をつかって、女子十二楽坊を出演させている。
ホスト国として、その他にも数組の歌手を出演させているのは、中国国内向けにメンツを保つ意味でも当然だろう。
こういう性格をもつ場に、Happinessのような、日本でもほとんど知られておらず、単にEXILEの事務所が売り出し中というだけの女性グループをバーターで出演させるなど、日本の文化外交の完全な失策である。
Happinessではなく、AKB48を出演させれば当然ベストなのだが、AKB48は別日程で上海で開催された「上海ジャパンウィーク」ですでにライブを行い、上海のオタクや腐女子の大歓迎をうけている。
上海ジャパンウィークのAKB48ライブのチケットについては、上海外語大学の学生がネット上でダフ屋行為をしたり、偽造チケットが出まわったりといった騒動が起こり、中国国内で報道されるほど、中国でもAKB48人気はすごい。
AKB48のメンバーの数名も、上記の中国マイクロブログ「新浪微博」に公式アカウントを開設しているが、2011/09/26時点のフォロワー数をEXILEと比べてみよう。
EXILE  48,923人
宮澤佐江  122,864人
秋元才加  110,387人
小林香菜  108,769人
梅田彩佳  95,698人
増田有華  84,820人
小嶋陽菜  39,387人
高橋みなみ  37,261人
板野友美  35,926人
渡辺麻友  35,582人
篠田麻里子  33,760人
大島優子  29,636人
前田敦子  27,045人
柏木由紀  24,442人
ちなみにトップメンバーでもフォロワー数が少ないのは、単に更新頻度が低いためである。
もちろん北京のオタクや腐女子の皆さんもAKB48を待ち望んでいたに違いないので、ベストメンバーでなくても、日本政府はHappinessの代わりにAKB48を出演させるべきだった。何ならAKB48の姉妹グループSDN48には、中国大陸出身のチェン・チューもいる。
しかし、この「三国演芸」にはエイベックス首脳部ががっつり噛んでいたので、EXILEとHappinessのバーターには誰も逆らえなかった、というのがおそらく実情だろう。同じエイベックス所属なら、中国四川省出身の女性歌手alanを出演させて、中国側に配慮する方法もあったにもかかわらずだ。
EXILEのバーターでHappinessを押し込むという、中国の観衆の意向を無視したキャスティングをした上に、スポーツ紙に上掲のような提灯記事まで書かせるとは、エイベックス・グループは今回の「三国演芸」を私物化したと言われても反論できないだろう。
エイベックスが先日のSMAP公演で裏方として多大な貢献をしていることを割り引いても、「なぜHappiness」なのかは説明不可能だ。
ちなみに中国メディア側の「三国演芸」コンサートについての記事へのリンクを張っておく。代表的なネットメディアとして、新浪と騰訊の2つの情報サイトのエンタメニュース欄の記事だ。
『中日韓三国歌会謝霆鋒唱経典 SJ愛宮保雞丁(図)』(2011/09/25 23:56 新浪娯楽)
『中日韓演唱会謝霆鋒唱響鳥巣 SJ high翻全場』(2011/09/26 01:03 騰訊娯楽)
いずれも記事のタイトルには、香港の人気男性スター、ニコラス・ツェー(謝霆鋒)の名前と、韓国のSuper Junior(略してSJ)の名前しか登場しない。記事の中でもEXILEは倉木麻衣やHappinessと同じレベルで扱われているだけだ。
Super Juniorの扱いが大きいのは、以前メンバーに中国人であるハン・ギョン(韓庚)がいたからだと思われる。ハン・ギョン(韓庚)はSuper Juniorを脱退した後、中華圏で活躍している。中国マイクロブログ「新浪微博」のフォロワー数は662万人に達する。
上掲の新浪の記事は、文面上は中国、日本、韓国を平等に扱っているが、写真では明らかに差がついている。例えば、EXILEの写真のキャプションに「放浪兄弟」の文字はない。これは意図的なものではなく、単に記者がEXILEの名前を知らず、確認もする気にならなかっただけと思われる。
騰訊の記事にいたっては、記事の文面上も、日本人より韓国人歌手の扱いの方が大きい。
今回の「三国演芸」が、対中国の文化外交としては、日本にとって失敗に終わっていることがよくわかる。そしてその原因の一部は、エイベックス・グループが「井の中の蛙」状態であることにあると思われる。