脱原発論者はエアコンで涼んではいけないのか?

まだ、脱原発か、節電か、二つに一つだ、と勘違いしている人がいるようなので、改めて書いておく。
(1)節電が必要なのはピーク時間帯だけ
まず、節電が必要なのは、電力需要のピーク時間帯、夏の場合は午後1時から、やや広めにとっても午後4時までだ。
この時間帯だけ、電力会社の最大供給能力に達しないように節電すればよい。これ以外の、夜から翌朝までの時間帯は、体調をくずしてまで節電する必要性は全くない。
また、家庭における電力消費は、空調、照明器具、冷蔵庫、テレビの順だ。
体調をくずさないよう節電するには、空調の温度を1度上げること、照明をできるだけ使わないこと(たとえば天井照明を消して卓上ライトだけにするなど)、冷蔵庫の設定温度を1度単位で管理すること、テレビを見ないこと、などで対応できる。
エアコンを切ってまで、24時間節電する必要があると勘違いしている人は、電力会社とマスコミの節電キャンペーンに、見事にだまされている。
ピーク時の節電にまったく効果のないサマータイムを導入しているおバカな企業も、電力会社が主要メンバーになっている経団連の利益を代表しているだけだ。
(サマータイムで始業を1~2時間早めても、全社員が定時退社するわけではないので、ピーク時間帯である午後4時前後の節電には貢献しない)
「脱原発を主張するなら、体調をくずしてでも節電しろ!」というのは、根拠のない精神論だ。
(2)原発をすべて止めても放射性廃棄物は残る
次に、脱原発とはどういうことか、冷静に考える必要がある。
脱原発するためには、運転中の原発や、定期点検で止まっているだけでいつでも運転再開できる原発を、いかに安全に廃炉にするかが、まず問題になる。
しかし、福島第一原発の使用済み核燃料が、実は「使用済み」と言いつつ永続的に安定冷却する必要があるのと同様、原発を廃炉にするには、まず炉心から取り出した核燃料を、少なくとも数十年間、安定して冷却しつづける必要がある。
それから、原発の施設を解体した後の、高線量の放射性廃棄物を、どうやって処理するのかを考える必要がある。
原発に反対だろうが賛成だろうが、すでに原発を数十基も運転している以上、放射性廃棄物を、数十年、数百年、半減期の長い核種によっては数万年単位で、どう処分・保管するかという問題からは逃れられない。
今すぐ、すべての原発の運転をとめても、放射性廃棄物の問題は残るのだ。
まして、原発の運転を続ければ、日本はウラン燃料を海外から輸入しつづけ、国内に放射性廃棄物を増やしつづけることになる。
原発は「トイレのないマンション」であり、処分に極めて高いコストがかかる放射性廃棄物を出しつづける設備であることを、いい加減、理解した方がいい。
そのコストを正しく電力料金に反映させるのも、ひとつの方法だ。電力料金ははね上がるだろうが、それによって初めて、単なる「精神論」ではない節電努力が、企業や家庭で始まることになる。
(3)法制度の改革がない限り代替エネルギーは非現実的
3つめの論点として、脱原発を進めるために、原発にかわる発電方法を大規模に展開するとなると、どうしても現状の電力会社が、発電・送電ともに地域独占している状態を変える必要がある。
太陽光や風力など、再生可能エネルギーによる発電設備を導入しても、地域独占状態の電力会社が、放射性廃棄物の処理コストを原価にふくめない値段で売っている電気より、値段が高くなるのは当然だ。
そのため、政府が、再生可能エネルギーで作った電力を、電力会社に強制的に買い取らせるなどの法整備が、ひきつづき必要になる。
また、現状の電力会社が送電事業まで地域独占している限り、再生可能エネルギーによって作った電力を、どうやって送電するか、という問題が残る。
再生可能エネルギーを発電する会社ができたとしても、それを各家庭にとどけるには、現時点では既存の電力会社の送電網を借りるしかない。
既存の電力会社は株式会社なので、損してまで送電網を貸し出すはずがない。送電網の能力を増強するための投資コストを、それら再生可能エネルギーを発電する会社にも負担させるために、相応の送電網利用料を課すはずだ。
それでも再生可能エネルギーを事業として成立させるには、過渡的に補助金を出すなど、法制度の整備が必要になる。
以上のように、原発を使いつづけるにせよ、脱原発を目指すにせよ、市民一人ひとりが「がまんして節電すれば何とかなる」という、精神論で片付く問題ではない。
冷静に考えれば、この夏はピーク時間帯だけ節電努力をすれば乗りきれるのであり、脱原発論者がエアコンのついた部屋で涼んでいるからといって、非難されるいわれはない。
また、冷静に考えれば、原発容認派だろうと、脱原発推進派だろうと、この夏、電力消費のピーク以外の時間帯にエアコンのついた部屋で涼んでいようと、扇風機でガマンしていようと、放射性廃棄物の問題からは逃れられない。
原発を容認すれば、国内の放射性廃棄物は増え続ける。脱原発を主張しても、既存の放射性廃棄物の処理問題は残る。
原発については、何かというと、AかBかの二者択一に、問題を単純化したがる人や、30年前の生活に戻ろうなどと言い出す精神論者が、分かったようなことを言いたがるが、本当に「冷静に」「合理的に」問題に対処するのはどういうことか、もう少しよく考えてみるべきだろう。