「クラウド」に踊らされる人々

う~ん。最近のIT業界の「クラウド」というバズワードはどうにかならないものか。はっきり言って「クラウド」なんて、革新的でも何でもない技術で、ITのことを分かっていない人間ほど騒いでいるだけにしか見えない。
まず「クラウド」の先祖はASP(Application Service Provider)だ。
今まで各企業が自前で、社内ネットワークにグループウェアなどのアプリケーション・サーバを構築していたものを、システム構築業者がデータセンタに構築したアプリケーション・サーバを契約して使うというもの。
それによって、今までオフィス内でしか使えなかったアプリケーションが、出張先などの社外からでも使えるようになる。
社内で構築すると初期投資が償却資産扱いになるが、ASPなら必要な人数分だけ毎月または毎年などの費用処理になる。この点がコストダウンになったり、企業税務的に有利になることもある。
ただ、システム構築業者のアプリケーション・サーバは、ネットワーク的には部外者も使えてしまうので、ただユーザIDとパスワードによるセキュリティだけでは情報漏えいの可能性がある。
なので、通信経路をSSLで暗号化するのは当然のこととして、ワンタイムパスワードや、接続元の端末が特定できるクライアント証明書などを併用して、セキュリティを高める必要がある。
このASPが、そのうちSaaS(Software As A Service)と呼ばれるようになったが、実態は何一つ変わっていない。
このSaaSという言葉が出てきたところで、IaaS(Infrastructure As A Service)だのPaaS(Platform As A Service)だの、便乗商法がたくさん出てくる。
名前は変わってもやっていることは同じで、今まで各企業が自前で社内ネットワークに構築していたインフラ(情報基盤)やプラットフォーム(データベースや開発環境などのミドルウェア部分)を、システム構築業者がデータセンタに構築したサーバを契約して使うというものだ。
「クラウド」という言葉は、おそらくSaaSやIaaSやPaaSなどと、サービスの中身ごとに言い換えるのが面倒なので、それらを全部ひっくるめて呼びたいがために、誰かが勝手に作った言葉ではないか。
いずれにせよ、本質的にはASPとやっていることは同じで、それがアプリケーション層にとどまるか、ミドルウェア層なのか、インフラ層なのか、社内構築していたシステムの垂直構造のうち、どの層を外部業者のデータセンタに委託するか、それだけの違いだ。
たったそれだけの違いの「クラウド」を、あたかも2011年になって突如登場した革新的な技術であるかのように、わいわい大騒ぎするのは、「私はIT音痴です」と大声で叫んでいるに等しい。
「クラウド」なんていう言葉が大騒ぎされる前に、すでに「クラウド」にあたるシステムを利用している企業なんて、世の中に腐るほどある。
IT業界というのは、「ERP」などの三文字言語にしても、昔からこの手の売らんがための無意味な言葉(バズワード)で、ITに無知な人間をかどわかすことで成り立っている商売みたいなところがある。
いい加減、バズワードに踊らされるのはやめてほしいものだ。とくにマスコミの方々には。