alanのニューシングル『みんなでね/生きる』2011/06/29発売

alanの2011/06/29発売の両A面ニューシングル『みんなでね/生きる』。
いつものalanの曲と同様、どちらの曲も最近のヒット曲に共通する強いビートや印象的なリフレインがなく、ウェルメイドで上品なポップスなので、爆発的にヒットすることはまずないだろう。

『みんなでね』の方は上野動物園にやってきたパンダを歓迎する曲。alanの出身地である中国四川省にパンダの一大育成基地があることと、もちろん無関係ではない。
alan自身も『ゲッカヨ』のインタビューで、今回の『みんなでね~PANDA with Candy BEAR’s~』という曲で、単身来日して歌手としてデビューした自分自身と、四川省からやってきたパンダのリーリー、シンシンを重ねあわせている。
なので「日本のみなさん。私たち人間も、パンダも、みんな地球という大きな家の家族です。みんなでいっしょに生きましょう」というメッセージがこめられている。
これはalanのデビュー以来、エイベックスがalanといっしょに発し続けている一貫したメッセージだ。日本の若年層が、こういう地球規模の「キレイごと」のメッセージに共感できるかどうかは別として。
こういう普遍的なメッセージは、だいたい欲にまみれた私生活を送っているオジサンに、いちばんウケが良い。
『みんなでね』のサビのアレンジは、なぜか大瀧詠一『ナイアガラトライアングル』風になっている。
そして両A面のもう一曲『生きる』は、うわさによれば松本隆が作詞したらしい。alanの日本語の発音は、テンポの遅いバラードでも、まだ少し不明瞭なところがあるので、聞き取りづらいが、おそらく以下のような歌詞と思われる。
明らかに東日本大震災の被災者のみなさんを意識した内容になっている。
「夕映え 天と地とのすき間で いただいてみる
静まりかえる海 きれいね
心は塵(ちり)になって 何度も砕かれたけど
立ち上がる元気も あるから
新しい価値観が あの日から
私の中 目ざめてく
未来ってどこにあるの 神様は無言のまま
今日と明日をつなぐ糸を つなわたりするように
未来って死語じゃないね 私たち生きてる
喜怒哀楽そのすべてを 両手に抱いて 生きる
不幸に目かくしされ 孤独に捨てられたって
星はくつの先を 照らすよ
古い自我脱ぎすてて 顔上げて
胸もすこし はりながら
未来ってどこにあるの さがしても見つからない
私たちの心の目が 描いたり創るもの
未来って死語じゃないね 私たち生きてる
喜怒哀楽そのすべてを 両手に抱いて 生きる
未来ってどこにあるの 迷っても歩き出そう
目配せして 笑みかわして 腕くんでスキップして
未来ってどこにあるの さがしても見つからない
私たちの心の目が 描いたり創るもの
未来って死語じゃないよ 私たち生きてる
喜怒哀楽そのすべてを 両手に抱いて 生きる」
ふつうポップの歌詞には出てこないような「いただいてみる」「価値観」「死語」「自我」「喜怒哀楽」といった単語が出てくるので、さらっと聴いただけでは、何を歌っているのかピンと来ない。
スローテンポな曲だけでなく、歌詞の面でも、若年層向きではなく、明らかに中年層向けの一曲。まさか「死語」が「死後」とダブルミーニングになっているとか、そこまではないと思うけれど。
どちらにしても、菊池一仁の作る曲はつねに王道で、ウェルメイドで、上品で、美しいメロディーのポップスなだけに、最近のヒット路線ではない。おそらくこのalanの両A面のニューシングルも、ファンしか買わないだろう。
個人的には、日本人にもっと分かりやすい、女子十二楽坊的なビートの強い中華風アレンジのアップテンポなシングルを、2~3枚連続リリースして、衣装もチャイナドレスほど露骨でないにしても、きれいな刺繍のある、赤をアクセントにしたタイトなラインのワンピースとかにして、とりあえずより多くの日本人に名前を知ってもらう方がいいと思うのだが…。
まあ一人のファンが何を言っても、どうやらエイベックスのalanプロデュース陣は、意地でもalanを「日本に適応した、音楽に国境はない歌姫」路線で売りつづけるつもりらしいので、やむをえまい。