やはり汚染水浄化装置のゼオライトの処分法は未定だった

今日、福島第一原発の大量の放射性物質を含む汚染水を、東芝製の装置で浄化する、セシウムをゼオライトで吸着するしくみだ、というニュースを読んだ。
まず思ったのは、その次の段階として、放射性セシウムを大量に吸着したゼオライトを、どうやって処分するんだろう、ということだ。
で、NHKの夜7時のニュースに、おなじみ、原子力安全・保安院の英語がペラペラな西山審議官(おおっ、いまウィキペディアを見たら大学の先輩ではないか)が登場。
例によってわずかな笑みをたたえながら、ゼオライトの処分方法はまったく決まっていない、研究開発からやることになる、と話した。
西山審議官は単なるスピーカーなので、どうでもいい。予想どおり、フランス・アレバ社の技術を導入した、鳴り物入りの汚染水浄化装置も、放射性物質をあっちからこっちへ移動するだけのものだった、ということだ。
このことは、核燃料が溶融して、圧力容器から格納容器にまで漏れ出してしまっている時点で、すでに分かっていたことで、今さら驚くにおよばない。
核燃料の閉じ込めに大失敗している時点で、水をかけて冷やせば冷やすほど、放射性物質はエントロピー増大の法則にしたがって、何らかのかたちでどんどん拡散していくしかない。

しかも、その放射性物質は、外部被ばくだけを考えても、半減期の何倍もの時間がたたなければ、生物にとって十分に無害にならない。
内部被ばくまで考えれば、アルファ線やベータ線を出す核種は、微量でも体内に取り込むと健康に確率的影響をおよぼす。
さらに、いま堀江邦夫『原発労働記』(講談社文庫)を読んでいるところなので、別の問題も気になってくる。
この浄化装置は一定期間稼働した後、ゼオライトを交換する必要があるはずだ。その交換作業には、おそらく『原発労働記』に克明に描かれているように、東京電力の孫請けの孫請けみたいな季節労働者がかかわる。そしてかなりの量の放射線を浴びざるを得ない。
『原発労働記』を読むと、作業者の被ばく量が、一人ひとり正確に、かつ正直に、東京電力によって公開されるとはとても思えない。
つまり、あえて詳しく書かないが(気になる方は『原発労働記』をぜひお読み頂きたい)、いろんな経路で放射性物質の付着したものが、原発の敷地外へ拡散する確率が高くなる。
原発の建屋内で、外気にされされる放射性物質の量が増えれば増えるほど、その処理作業にあたる作業者の人数も増えていき、作業者の人数が増えれば増えるほど、さまざまな経路で放射性物質が原発の敷地外へ拡散する確率が高くなる、ということだ。
チェルノブイリ事故より、今回の事故のほうが、爆発的な放射性物質の拡散を防げただけ「まし」と考える人が多いようだが、本当にそうだろうか。
逆に、チェルノブイリ事故では、大きな爆発の後、大量被ばくによる急性放射線症で死者が出るような、きわめて雑な作業をへて、石棺で核燃料の閉じ込めに成功している。
もちろんその石棺が劣化しつつあるという新たな問題はあるけれど、とりあえず一旦、放射線源のそれ以上の拡散を防げた、という言い方もできる。
一方、福島第一原発事故は、格納容器に溶け落ちた核燃料や、燃料プールの使用済み核燃料を、まだ水で冷やさなければいけないので、汚染水が毎日500トン発生しつづけている。
汚染水は今のところ原発の建物の中にとどまっているが、放射性物質は水に混じることで、少なくとも一か所に溶けて固まっている状態よりは、拡散しつづけている。
汚染水の浄化装置も、上述のように放射性物質を水中からゼオライトへ移動するだけで、別に半減期以上のスピードで放射線源を減らせるわけではない。
放射性セシウムを、いったん一定の体積の中に閉じ込めるが、ラッキーなら、福島第一原発の敷地内の他のどこかの場所に、アンラッキーなら、敷地外のどこかの「処分場」に「拡散」する。
あるいはフランスが「引きとって処分してあげる」と、親切な申し出をしてくれるかもしれない。
でも、汚染されたゼオライトを運ぶ船が、どこかで「偶然」事故にあうかもしれない。核廃棄物の処分と引き換えに、日本政府が外交的にフランス政府に何かの条件をのまされるかもしれない。外交機密なので国民には公開されないだろうが。
こういうことは考え始めるとキリがないので、このあたりでやめにしよう。
ひとこと、「”トイレのないマンション”はそもそもどうにもならない」と表現してしまえば、それですべてなのかもしれないので。