IFRSを無抵抗に導入する日本企業の愚かさ加減

岩井克人・佐藤孝弘『IFRSに異議あり』(日経プレミアシリーズ)を読んだ。ものすごく痛快なIFRS入門書。

東京大学経済学部卒で、MITの博士号まで持っている、超一流の経済学者・岩井克人が、IFRSみたいな企業会計の細かい技術的な問題について、批判書を書いていると知って、読まないわけにはいかないだろう。書店で見つけて迷わず買ってしまった。
じつはご多分にもれず、うちの会社もIFRS導入準備のために、すでに昨年度から四苦八苦が始まっているらしく、一度打ち合わせに同席した。
GAAPのテキストを読んで勉強したことがあり、一応「英文会計2級」という意味不明の資格を持っていて、原価計算の実務経験もあるのだが、その打ち合わせで監査法人の会計士が説明していたことは、まったくピンと来なかった。
それが、この『IFRSに異議あり』の第一章、第二章を読んだだけで、「ははぁ~なるほどねぇ~」と激しくうなってしまった。
実に平易な表現でIFRSの本質を簡潔に説明してあって、さすが岩井克人が共著しているだけあると、軽い感動さえ覚えた。
本書の主張の一部をひとことで言うと、「内部統制にしても今回のIFRSにしても、国際的な議論の場で自己主張することなく、クソまじめに黙々と制度を採用する金融庁や日本企業は大バカだ」となる。
IFRSは、もともと投資家のための新しい財務報告書作成の考え方なのに、金融業以外の企業には、導入コストに見合う効果がほとんどないので、かえって投資家の保有する株式の価値を毀損するかもしれない。

そういうとんでもない制度を、いま多くの日本企業が、場合によってはコンサルまで雇って、強制適用される前提で、今から一生懸命導入する準備をしているのだ。
しかも、こういうIFRS批判書が日本経済新聞社の新書から出版されているのが、何とも皮肉だ。一方で日本経済新聞社は、各企業にIFRSの導入を急がせるような入門書を出版したり、セミナーを開いたりしているのだから。
僕のように会社で、基本的には「他人事」としてIFRSに関わることができるのでなければ、本書は読まないほうがいいかもしれない。残業までして必死で会社のためにIFRSを導入するのが、きっとバカらしくなってしまうだろうから。
もっとも僕もJ-SOX法については、そのあまりのナンセンスさを楽しみながら、会社でJ-SOX関連の仕事をしているのだけれど。
そもそも日本のサラリーマンのワーキングスタイル自体が、笑えるくらい思考停止でバカバカしいのだから、日本企業の経営陣が舶来モノの国際基準をありがたがって、無抵抗に導入するのも、当然といえば当然だ。