ユニクロをどんどん買ってユニクロを追いつめよう

横田増生著『ユニクロ帝国の光と影』(文藝春秋)を読んだ。
一人の被雇用者として本書を読むと、ユニクロの商品を買いつづけることが「正義」なのか、疑問に思わずにいられない。

以前からこの「愛と苦悩の日記」に書いているが、僕はユニクロの大ファンが。「洋服は部品である」という考え方に賛成だし、洋服は大量生産されたシンプルな規格品が安く買えれば十分だと考えている。
僕は男性で、痩せているが、イケメンではなく、若くもない。洋服にかけるお金なんて必要最小限でいい。
でも、イトーヨーカドーや西友の紳士服売場にあるような、正体不明のブランドや、意味不明の英単語のプリントがあるような、くすんだ色合いの服を着るほど、無神経でもない。
そういう僕にとって、ユニクロは最善の選択である。
ただ、本書を読み終えると、ユニクロの少品種大量生産が、経営者と末端社員・工員の間にある、巨大な経済格差の上に成立していることがよくわかる。
巨額の創業者利益を手に入れている柳井正会長と、低い年収でこき使われる正社員店長。店長に自分なりの店を作る権限はまったくなく、唯一の命題は人件費の削減。その結果、ユニクロ店長の定着率は驚くべき低さ。
定着率が低いのは店長だけでなく、準社員やアルバイトも同じ。時給はいいが秒単位でマニュアルどおりの作業を管理され、何の自主性も認められない。店舗の雰囲気はマニュアルにそった規律を重んじる軍隊式。
そして、ユニクロ商品の製造契約を結んでいる中国の工場も、本書で取材されている。
日本の他のアパレル企業に比べて、工員は安い工賃で長時間労働と非常に厳しい品質管理を強いられる。しかし製品はすべて買い取りで返品のないユニクロは、工場経営者にはウケが良い。
時代おくれの左翼っぽい言い方をすれば、経営者による、店長、アルバイト、中国の工員の搾取の上に、少品種大量生産の安価な規格品ビジネスがはじめて成立している。
本書の筆者、横田増生氏は、このようなユニクロのビジネスモデルと、同じSPA(製造小売)のZARAを対比して書いている。ZARAは多品種少量生産。わざと品切れを起こすことで、消費者が何度も来店するようにする頭のよさ。
そしてスペイン国内に物流センターを置き、地元に雇用を確保する地域コミュニティを大事にする姿勢。
ただ徹底して流通の中抜きを行い、委託先の生産拠点をどんどん人件費の安い海外へ移転するしかないという、ユニクロのシンプルな経営戦略、言葉を変えれば、誰にでも思いつく戦略と、ZARAの計算を対比させている。
僕はよくよく考えて、それでもユニクロを買い続けるのが正しいと結論づけた。
ただし、ユニクロで買うからには、絶対に高い買い物をしない。たとえばユニクロの大きめの店舗に行くと、売れ残りの商品が特価で売られている。ネットストアでも、在庫処分品が値引きされている。
ユニクロで買い物をするときは、消費者側も、徹底的に売れ残りの値引き商品をねらって、いかに安く買うかを追求すればよい。ユニクロが徹底的に人件費を削っているように。
ユニクロでいつも買い物をしている人なら、季節物は1~2か月待てば必ず売れ残りが値引きされることを知っている。ユニクロの店舗と対面するとき、消費者はつねにデフレ状態にある。今日買うより明日買ったほうが、確実に安くなるということだ。
なので、最もバカげているのは、ユニクロの商品を正価で買うことだ。
そうして消費者がかしこくなり、ユニクロでは値引きされた商品しか買わない、という購買行動を続けていけば、ユニクロの利益率はどんどん低くなる。
すると、ユニクロはもともと人件費しか削減できるコストがないので、人件費を削らざるをえなくなる。
その結果、ただでさえ定着率の悪いユニクロの正社員店長や、アルバイト、中国工場の工員の定着率がさらに悪くなる。
定着率が悪くなると、店舗オペレーションの効率性や、工場の生産性は、少しずつだが確実に落ちていく。
こういうふうにして、消費者は徹底的にユニクロで安く買うことを通じて、ユニクロを窮地に追いこむことができる。
そうなれば会長の柳井正氏は、本書に書かれているように、これまで後継者を育てることに完全に失敗しているワンマンなので、いよいよ打つ手がなくなっていくだろう。
また、本書によれば、柳井会長のマスコミ向けの顔と、社内向けの顔は全く違う。社内向けには、従業員の動機づけをする能力を欠いており、冷徹に切り捨てることしかできない。そのことは本書を読めばよくよく分かる。
業績が悪くなれば、柳井会長に手をさしのべる人物は一人もいなくなり、彼は社内で孤立する。そのときユニクロという企業が存続できるかどうかは疑問だ。
結論。消費者としてユニクロへの最適な接し方は、正価で徹底して安く買うこと。そうやってユニクロが十分な粗利率を確保できないようにし、その経営者を「搾取」することだ。
多くの消費者がそのように行動すれば(というより既にそのように行動し始めていると思われるが)、ユニクロは必然的にZARAのようなタイプの製造小売に負け、第二のGAPとして衰退していく。
なので僕はこれからもユニクロでしか服を買わない。