上原美優さんの自殺の原因を推測する

今日最も重要なニュースの一つは、上原美優さん(本名:藤崎睦美さん)の自殺だろう。まずはご冥福をお祈りする。
以下、筆者の単なる推測なので、事実であるかのように転載、ツイートするのは控えて頂きたい。
自殺の直接の原因は、おそらく昨年2010/03/29にお母様が心筋梗塞で亡くなったことを引き金とするうつ病だと考えられる。

今日のニュースで流れていた過去のインタビュー映像でも、彼女は、テレビに出演するときはいつも母が見てくれていると思うからこそ頑張れた、という意味のことを話していた。
10人兄弟の末娘である自分に、実はさまざまなかたちで、周囲の友人たちより年上の母親が自分を愛してくれていたのを、上京してから知ったというから、その母親を失った喪失感は想像するにあまりある。しかも、彼女は仕事で母親の最後を看取ることができなかったらしい。
母親がいなくなったことが、彼女に決定的なうつ病を引き起こしたとすれば、その背景にあったのは、事務所の方針と彼女の考え方のズレが埋められないほど大きくなってきたことではないか。
「貧乏アイドル」としてブレイクした当初、事務所は上原美優さんの過去の貧乏生活のうち、テレビで「ネタ」にできる無難な部分だけを売りにしたのだろう。
上原美優さん自身も、名前が売れて実家の生活を助けられるのなら、自分の過去の貧乏生活をネタにするくらい、それまでやっていたキャバクラ嬢の仕事などに比べれば何でもないと思ったに違いない。
しかし、貧乏アイドルとしてテレビ出演の機会が増え、それなりの収入を得るようになると、貧乏を売りにしながら、現実には豊かな生活を送れる自分の二面性に矛盾を感じるようになったはずだ。
2009/05出版の自叙伝は、たしかに事務所に合意した上での執筆だったのだろう。
ただ、今日のニュースで流れていた出版時の会見によれば、高校時代に性暴力をうけたと思われる体験や、2007年の睡眠薬の大量服薬による自殺未遂など、もはや単なる「ネタ」ですまされない重い事実については、事務所の反対を押し切って出版にふみ切ったという。
事務所はあくまで「ネタ」になる限りで、彼女自身のタレントとしてのイメージをこわさない限りで、彼女が公に過去を語ることは許したが、彼女自身が一人の女性として過去を告白するところまで行くのは、本当は何としてもやめさせたかったのではないか。
少なくとも事務所としては、ブレイクしたばかりの段階で、まだそうするには早過ぎると考えたのではないか。
それでも上原美優さんが、自分の過去の暗い側面についても執筆し、出版することを押し切ったのは、そう決意させるほどまで、貧乏アイドルという「売り」と実生活の豊かさの開きが大きくなりすぎていたのだろう。
さらに、上原美優さんが、自分の貧乏というマイナス面を売りにすることに対して、ブレイクした後、いまふり返れば急速に自分を責めるようになったのは、もともと彼女の自己評価が低かったことが原因になっていると思われる。
彼女の自己評価を不当に低くしたのは、子供のころ貧乏だったことよりも、それに起因する学校でのいじめと、性暴力の被害らしき体験だろう。女性が性暴力をうけてなお生き延びることの困難さを痛感させられる。
デビュー前から自己評価が低かった彼女が、自分の暗い過去のうち無難な「貧乏」という部分で社会に認められ、その部分を生活するための手段として利用するようになった。
良い意味でも悪い意味でも、自分のアイデンティティーである「貧乏」という過去を、生活の手段にすることに、上原美優さんが自責の念を抱くようになるのは、時間の問題だったといえる。
そして、その自分で自分をだますような、自分を責めざるをえないような芸能活動の唯一の支えであり、理由づけだった母親を、彼女は失ってしまった。
その結果、根が真面目だったに違いない上原美優さんは、無難な部分だけでなく、自分でさえも忘れたい過去も含めた、まるごと一人の人間として、芸能活動をしなければ、自分自身や母親に申し訳ないと思うようになる。
それでも現実のタレント活動では、つねに明るくさわやかなイメージを売らなければいけない。
お母さまが亡くなったことで、自己欺瞞的なタレント活動の唯一の支えを失ったと同時に、芸能界という表の顔と、ある意味で陰惨な自分の過去の落差を、ますます強く感じざるをえなくなった。
上原美優さんは、もしかすると、このまま芸能活動を続けても、そのギャップは広がる一方だろうと、絶望したのかもしれない。
かといって、自分にはシリアスな女優として活躍するほどの力もない。同じ事務所からはつぎつぎと新しい女性アイドルが出てくることで、もともと「貧乏」というマイナスイメージを逆手にとっていた自分は埋もれてしまうかもしれない。
最愛の母親を失った結果のうつ傾向が、上原美優さんが将来を悲観する気持ちに拍車をかけてしまったのかもしれない。
ふつうの会社員なら、しばらく休養をとることでまた仕事を続けられるだろうが、彼女のような、歌手でも役者でもない、バラエティータレントが活動を休止すれば、芸能人としては致命的だ。
せめて、芸能人をやめて故郷に帰る決断をするだけのエネルギーが、彼女に残っていたらと悔やまれる。故郷に帰っても、貧乏を売りにした元芸能人ということで、周囲に白い目で見られるのではというところまで悲観していたのだろうか。
何ともやりきれないニュースだ。
*2011/05/18 この記事について訂正の記事を書きました。
>>「上原美優さんの自殺は貧困家庭の社会的疎外の問題」