この夏の首都圏大停電は避けられそうにない件(汗)

この夏、確実に電力供給が不足するが、サマータイムやピーク時の電気料金値上げなど、無意味な議論はやめてほしいものだ。
『東日本大震災:夏の電力不足、対策を総動員 営業時間短縮、夏休み分散、サマータイム』(毎日jp)
2011/03/25、経産省の「電力需要緊急対策会議」では、サマータイムの導入を本気で議論していたようだ。
サマータイムを導入すれば、朝の涼しいうちに経済活動が始まって節電になる、なんてことにならないのは、ふつうに生活していればわかる。
だいたい真夏は朝から暑い。サマータイムでラッシュアワーが1時間早まれば、空調を効かせた満員電車が1時間早く走るだけ。何の節電にもならない。
それに、最近の高層ビルは自然換気ができない。熱帯夜明けのオフィスに社員が入れば、あっという間に蒸し風呂になる。やはり1時間早くオフィスに空調が入るだけ。
蒸し風呂状態のオフィスで本当に空調をとめたら、こき使われているひ弱な若手社員や、老体にムチ打っている経営陣の中には、体調をくずす人が出てくる。
そして夜はいつもどおり残業、まだ明るいのに退社できる雰囲気にならず、サマータイムになる前より合計で1時間長くオフィスの空調が入るだけ。
帰りのラッシュはいつもどおりの時間帯。家に帰れば、翌朝早起きしなければいけないので、熱帯夜の中、早く眠るために空調が必須。
サマータイムなんて完全にバカげている。
まだ時差通勤の方が多少の効果はあるだろう。たとえば東京を区よりも細かく割って、それぞれの地区の事業所ごとに勤務時間帯をずらすなど。
ただ国が時差通勤を強制しても、各企業の社員が従うかどうかは全く別問題。企業の間では、金を払う方が受けとる方に対して強権的に振舞うのが「常識」だ。
僕の身近なところでは、情報システムのユーザ企業がその一例(ちなみに筆者が現在勤務しているのもユーザ企業側)。
たとえ時差通勤が強制的に施行されても、ユーザ企業は売り手であるベンダー企業に、朝から電話をかけて「まだ担当者が出社していないとはどういうことですか」となじったり、夕方に電話をかけて「もう帰ったとはどういうことだ」と言う。
同じことが、他の業種の納入先企業と仕入先企業の間でも起こることは間違いない。
したがって、時差通勤も実質的には機能しないだろう。
一部の事業所に週末の休業を平日にふりむけてもらうという策も、夏休みの延長や分散化も、ホワイトカラーについては同じ理由で機能しないと思われる。
あとは、在宅勤務くらいだろうか。事業所と家庭の両方で電力を使わないようにするためだ。
自宅なら何とか自然換気や扇風機でしのげる場所も多いし、通勤ラッシュが緩和されれば大口需要者である鉄道会社の電力消費を抑えることができる。
同時に、個人経営の商店は除いて、都心のオフィス街で会社員しか客のいないコンビニや飲食店チェーンに、国として営業しないよう求めることもできる。
首都圏全体として経済規模が縮小するのをやむを得ないとすれば、電力需要のピークをしのぐ決定打は、在宅勤務しかないように思える。
ただ、日本の大手企業でさえ、在宅勤務は「実験」と称しておそるおそる導入している程度なので、これも機能するかどうかわからない。
ピーク時の電気料金の値上げは論外だ。
家庭も事業所も、活動する以上は必要最低限の電力を使わざるをえない。電気料金の値上げは、電力会社に電力消費が減った分の収入をもたらすだけで、需要者側には全くメリットがない。
さらに、電気料金の値上げは、生活必需品の消費税などの増税と同様、逆進的になり、低所得者層に厳しい施策になってしまう。電力とタバコなどの嗜好品をいっしょにしてはいけない。
与謝野馨・経済財政担当相が値上げの可能性にふれたらしいが、はからずも氏が古典的な経済学を盲信していることを露呈してしまった。
あとは、今朝のテレビ朝日で、各企業が自前で持っている発電設備から供給させる案を説明していたが、これも無理がある。
大規模な装置産業をのぞく、一般の製造業者やその他業種が持っている自前の発電施設に、電力会社同様の安定供給を期待することはできないからだ。
これらのいわば不安定な「非常用」電源を供給量の計算に入れて、ぎりぎりの電力供給をしてしまうと、それこそブラック・アウトの危険性が高まる。
また、実際に発電施設のある場所から、東京電力の送電網を使って送電できる範囲にも限界があり、東京電力管内全般にわたる供給を補えるわけではない。
たぶんテレビ朝日でこの案を語っていたコンサルタントは、送電上の制限についてあまり理解せずに、単に供給能力の数字だけをもとに考えている。
となると、結局は計画停電の適用地域の拡大と時間延長ぐらいしか実質的に効果のある策がなくなってくる。
逆に言えば、ほぼ効果のないサマータイム制を除き、各企業が時差通勤、夏休みの延長や分散化、在宅勤務などを実際に機能させるように協力しないかぎり、停電の拡大しか策がないということだ。
各企業というのは、当然、大企業だけではない。むしろ事業所の中で圧倒的多数を占める中小事業者も含めてである。
個人的には、それができたら日本企業の有給休暇取得率は、とっくの昔に100%に近い数字になっているはず。この夏いきなり今までの働き方を変えろというのは無理だろう。
残念ながら、日本のサラリーマン社会というのは、過去の実績が重視され、昔からの慣習が根強く残る、突然の変化に弱い硬直的な社会だから。