藻谷浩介著『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く』を読んだ

藻谷浩介著『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く』(角川oneテーマ21新書)を読んだ。

一言でいえば、いまの日本のデフレ不況は人口ボーナス/人口オーナス論でほぼ説明できる、ということが書いてある本だ。
「人口オーナス」なんていう言葉は初めて聞いた、という方は必読書である。
僕は10年前にポール・クルーグマンの通俗的なマイクロ経済学の翻訳書を読んだ時、クルーグマンが日本の第二次大戦後の高度経済成長は、ほぼ人口増加だけで説明できると論じていることで、初めてこの人口ボーナス/人口オーナスの考え方にふれた。
なのに、そのことをすっかり忘れていたので、本書を読むことであらためて、いまの日本の経済状況と人口オーナス論をむすびつけて理解できた。
その意味では、人口オーナス論をすでにご存知の方にとっても、本書は必読書だ。
また、僕らが日々、テレビや新聞、雑誌で目にするデフレ対策論を、バッサバッサと斬っていく部分は、全く違う視点に立てるので、まさに「目からウロコ」である。
ただし、当然、本書の主張にもさまざまな反論が考えられる。
僕が読みながら気づいた点は一つだけ、日本の中央銀行の金融緩和について、藻谷浩介氏が、あっさりその努力を認めていることだ。
日銀はしっかり金融緩和に取り組んできた、という藻谷浩介氏の認識は、僕が去年読んだ高橋洋一著『日本経済のウソ』(ちくま新書)の主張に反する。

本書『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く』のAmazon.co.jpの書評にも、同じ意見があった。
日本と同じように少子高齢化から人口減少へ向かっている先進諸国が、日本のようなデフレ不況に陥っていない事実が、藻谷浩介氏の議論では説明できないという批判だ。
日銀が『日本経済のウソ』に書かれているように、右手で金融緩和をやりつつ、左手でそれを打ち消すような金融引き締めをやってきたのに対して、日本以外の先進諸国では、中央銀行が実効性のある金融緩和をつづけてきた。たしかにこの違いはあるのだろう。
ただ、だからと言って『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く』の主張全体が否定されるわけではない。
第二次橋本内閣を引き継ぎ、小泉・竹中路線がぶち壊してしまった、最低限のセーフティーネットを復活させ、貧困層が生まれないようにすること。そして、内需で経済が回るようにすること。
この二点が、中央銀行の金融緩和に加えて、人口減少に向かっている日本がとるべき対策であることは、おそらく間違いない。
まずは、マスコミに流布しているデフレ対策論が、実はかなりあやしいということを知るためにも、本書は必読書だろう。個人的には、読むのが遅すぎたと、深く反省。