続・NHKニュースウォッチ9に登場した安替(anti)なる人物の謎

先日、NHKニュースウォッチ9に出演していた,安替なる中国人ジャーナリストの件。日本版ニューズウィーク誌のウェブサイトで、決定的な記事を見つけてしまった。
『反日デモの知られざるメカニズム』(日本版NEWSWEEK 2010/10/26 12:02)
この記事を書いた長岡義博氏はいちおう信頼して、安替氏の講演会の内容を正確に伝えていると見なす。この記事から一部を引用する。
「中国人ジャーナリストでブロガーの安替氏が先日、東京で講演会を開いた。その中で、南京生まれである安替が興味深いことを言っていた。曰く、『ネットで情報を得るまでは、世の中のすべての悪いことは日本が起こしていると思っていた』『だから、中国では放っておけば毎日どこかの都市で反日デモが起きる』」
時期的に尖閣諸島問題に関連した発言に違いないのだが、あたかも中国のデモの大半が反日を動機としているかのような見方は、たしかに欧米や日本の反中勢力に受けがいいだろう。
マイケル・ムーアの『華氏911』のあら探しをするニューズウィーク誌が、米国の保守勢力よりの意見を代弁していることは間違いない。
そんなニューズウィーク誌にとって、安替氏の反中世論をあおるような講演会の内容は、尖閣諸島問題がホットだった2010/10/26頃にはうってつけだったに違いない。
つまり、安替氏は決して中国のふつうの市民の意見を代表しているわけではなく、欧米人や日本人に分かりやすい、反自由主義的な中国像を伝えているだけ、ということだ。
もっと言えば、安替氏は、どういうことをしゃべれば自由主義国のメディアにうけるか、そして自分がジャーナリストとして食べていけるかを知った上で、確信犯的に語っている。
その安替氏の意見を、中国国内に「潜伏」(?)するリベラルな知識人として紹介する、ニューズウィーク誌やNHKのような視点は、はっきり言ってナイーブすぎるだろう。
新浪微博で安替氏について僕にコメントをくれた、日本語の堪能な中国人が、人権方面の活動をしてるからでしょ、と言い、「こいつ新浪微博まで持ってたのか」と言い捨てた理由も、たぶんそこにある。
中国政府の検閲をくぐりぬけて、日常的に日本や米国のネットに接続し、日本語や英語が読める中国人にとって、安替氏のような人物は、中国から自由主義国に脱出した「モノを言う」中国人の典型例の一つでしかない、ということだ。
ふつうの中国人にとっては、きっと日本メディアが反中言説をあおったり、安替氏のような「自由主義寄生型中国人ジャーナリスト」を持ち上げたりしていることよりも、日々の生活で感じる問題の方がはるかに重要だということだ。
そして、時代はすでに変わっていて、仮に北京の共産党政府が倒れたとしても、仮に「言論の自由」(ところで日本に言論の自由などあるのだろうか?)を手に入れたとしても、日々感じている問題が自動的に解決するわけでもないことを、すでに知っているのだ。
ほとんどの日本人や欧米人は、中国人に対して、大いなる「啓蒙主義的勘違い」をしているのだろう。つまり、こういう勘違いだ。
「中国には言論の自由がないので、ほとんどの中国人は、安替氏のような考えを持ったことさえないに違いない。かわいそうだ」
公に発言する自由がないこと、すなわち、自由な考えを持つことができない、という、大いなる勘違いである。仮に、中国人が自由な考えを持つことができないなら、どうして自国政府を冷笑できるだろうか。
一定の教育水準をもち、国営放送のCCTVを「CCAV」(AVは中国ではアダルトビデオのこと)と呼び、国内の新聞やテレビの情報を話半分に受け取る中国人の方が、産経新聞または朝日新聞の記事をうのみにする一部の日本人より、よほどメディアリテラシーが鍛えられている、と言ったら言い過ぎだろうか。
まあ、欧米や日本に、中国に対する「啓蒙主義的勘違い」が存在する限り、安替氏のような「中国人なのに自由主義に啓蒙されている!すごい!」言論人は、食いぶちに困らないので、悪くはないのだけれど。
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