電子書籍なんて、やめてしまえばいい

以前この「愛と苦悩の日記」に書いた『シャープの電子書籍端末「ガラパゴス」は完全にバカげている』は、まんざら誇張でもなくなってきたような気がする。
以前書いたのは、「ハードウェアに依存した特殊仕様のタブレット型情報端末」が100万契約も売れるはずがないという主旨だ。ソニーのReaderも結局、「ハードウェアに依存した特殊仕様のタブレット型端末」という意味では同じことだ。
iPadユーザは、閉鎖的な電子書籍端末をつかまされなくて助かった、と思っているかもしれないが、iPad向けに日本国内でまともな電子書籍販売サービスが始まっているわけではない。
個人的に読みたい本は、いまのところ「自炊」(自分で電子データ化)するしかないので、電子書籍端末の観点だけからすると、iPadも大差ない。
何がネックになっているかと言えば、単純なことで、過剰な著作権保護技術と、その原因になっている、既得権益をうばわれたくない出版業界の抵抗だろう。
先日、裁断済みの書籍を提供し、お客が有料で複合機をつかって「自炊」できる場所を提供していた業者「自炊の森」が、ネットで批判にさらされ、サービスの変更に追い込まれたというニュースがあった。
その批判に対抗して、書籍の提供から収入を得なければ、図書館と同じで、著作権法に違反しないだろうということで、課金の範囲を変更して営業を再開したようだ。
『著作権侵害?書籍電子化、自炊代行業者にNO!出版社が対抗策』(2011/01/24 SankeiBiz)
ただ、日本の出版業界や出版関係者は、「自炊の森」のような業者を個々につぶしていくだけでいいはずがない。そもそも「自炊の森」のような業者は、需要があるから出てきたわけだ。
その需要はどこから出てくるかと言えば、デジタル技術でガチガチに保護された電子書籍である。
本来、著作物に認められている私的利用を制限するような、過剰な著作権保護技術こそが、消費者が「勝手に」自分で書籍を電子化する需要が出てくる原因だと言える。
ソニーがiTunesにコンテンツ提供を拒否し、結果としてソニーのReaderがMacintosh非対応になるのも、ソニーが自社で利用している著作権保護技術の保護水準にこだわるからだ。
また、日本国内のメーカー間でさえ、電子書籍の規格が乱立するのも、各メーカーが別々の著作権保護政策と技術を採用しているためだ。
結果として、権利者の立場からすると、書籍を電子化しても十分な読者数を獲得できないことが最初からわかっているので、電子化するメリットがないという本末転倒の状況になっている。
電子書籍を爆発的に流通させようとすれば、メーカー間で著作権保護技術を共通化し、電子データの購入手続きを簡素化する必要がある。誰が考えてもわかる、当たり前のことだ。
ただ、技術を共通化し、購入手続きを簡素化すれば、一点突破で著作権保護が解除され、違法コピーが大量に出回るおそれもある。
読み手にとっての利便性と、権利者保護のための技術の厳格化は両立できないからこそ、権利者側が一定の妥協をしなければ、電子書籍市場そのものをつぶしてしまうことになる。
音楽業界はコピー・コントロールCDをはじめとする、さまざまな失敗を通じて、すでにこのことを学んでいるはずなのだが、出版業界は前例から学ぶ意思がないようだ。
仮に、出版業界が、電子書籍化によって消費者がうける便益と市場の拡大よりも、書き手の権利保護を優先したいというなら、完全に電子化をやめる選択肢もあるだろう。
中途半端に電子化して消費者を混乱させたり、電子書籍化にムダな資金を投じるくらいなら、電子書籍から撤退し、「自炊の森」のような業者を徹底的に排除するのも、出版業界としては一つの合理的な選択だと考える。
少なくとも、電子書籍が現時点で見られる程度の利便性しかないなら、電子書籍がなくなっても大した混乱は起きない。
>>「シャープの電子書籍端末『ガラパゴス』は完全にバカげている」(2010/09/28)
>>「続・シャープの電子書籍端末『ガラパゴス』は完全にバカげている」(2010/12/14)
>>「SHARP、GALAPAGOSが海外展開するというアホらしさ」(2010/12/31)
>>「SHARP、GALAPAGOSをインドやアフリカの電子教科書に!?」(2011/01/03)
>>「著作権保護つき電子書籍の普及は、弱者から本を奪う」(2011/02/02)
>>「電子書籍端末って、一体だれが、どこで使うの?」(2011/02/04)