新入社員くんの誤請求対応に「正義」を考えさせられた

先日、オフィスで今年の新入社員が、納入業者対応に苦労しているのを横で聞いていて、ちょっと考えさせられた。
納入業者が、本来は2か月ほど前に解約すべき保守契約を、手続きを忘れて解約しないままにし、うちの会社に請求書を送ってきたのだ。
当然、その業者が事務処理を忘れただけで、うちの会社に全く非はないので、そんな請求額は支払う必要もない。
サプライヤーいじめが大好きなベテラン会社員なら、この誤請求をネタに、業者をネチネチと問い詰めているところだろう。
ところが、その新入社員くんは、請求書の内容について電話で納入業者の担当者に確認してから、部長にどうすればいいか質問していたのだ。
そこでやさしい部長さんは、こう答えた。
「もし頼んでもいない新聞を勝手に入れられて、お金を請求されたらどうする?払わないよね。こんな請求書は払えません、破って捨てればいいですか?って言ってやって」
頼んでもいない新聞というのは、けっこうありそうな話なので、例えとしてはかなり分かりやすい。新入社員くんも納得して、おそるおそるではあるけれど、納入業者の担当者に、支払えませんと電話で伝えていた。
会社員をもう15年も続けている僕にとっては当たり前のことも、新入社員くんには部長に確認しないと分からない。
ということは、僕自身が、会社員になるまで持っていなかった価値観や行動規範を、いつの間にか身につけていることになるが、それは一体何なのだろうと考えてみた。
たぶん、「組織の利害を組織外の人間に代弁する」という立ち位置を、新入社員くんはまだ十分わかっていないのだろう。
15年も会社員をやっていると、ある会社組織に属する人間として、会社組織の利害を代表する立場で、組織外の人間にものを言うのが当たり前になっている。
しかし、会社が数十万円の請求書をうっかり支払ったからと言って、自分個人の財布は痛まないわけだから、組織人の立場にどっぷりつかったことがない新入社員くんが、部長に質問するまでピンと来なかったのも無理はない。
逆に言うと、僕自身の方は、いつの間にか組織の利害と一体になってしまっている自分を、相対化できていなかったことになる。
納入業者イコール、自分の属する会社と利害が対立する組織であり、相手はスキあらば自分たちの利益になるように事を進めようとしているのではと、つねに警戒しなければならない。
こういう認識は、ぼくが会社員として知らない間に身につけてしまった、かなり悲しい価値観というか、行動規範である。
「納入業者を見たら泥棒と思え」というとヒド過ぎるが、会社員の皆さんであれば、ほぼこれに近い行動規範で、サプライヤーに対応しているはずだ。
先方のミスで送られてきた請求書に対して、電話口で「申し訳ありませんが、これはお支払いできないんですけど」と話す新入社員くんと、「おたくのミスですから、破って捨ててもよろしいですね」と話すベテラン会社員と、どちらがより道徳的で、正義にかなっているだろうか。
なんていうことを、ふと、考えさせられた。