CEATEC JAPAN 2010:中核事業に集中できない日本メーカーの愚

今日はCEATEC JAPAN 2010の無料入場日だったので見学に行ってきた。
シャープの電子書籍端末「ガラパゴス」、同じくシャープが製造してKDDIから発売されるAndroid OSスマートフォン、各社の3Dテレビなどなど、今話題の消費者向け家電・情報機器がいろいろ展示されていた。
まずシャープの「ガラパゴス」と、東芝のAV機器・情報端末向けクラウドサービス「Regza Apps Connect」を見て、なぜ日本メーカーは懲りずに自社独自規格のサービスをやりたがるのだろうかと、疑問に感じずにいられなかった。
シャープの電子書籍端末「ガラパゴス」については先日、この「愛と苦悩の日記」で書いたとおりだ。
『シャープの電子書籍端末「ガラパゴス」は完全にバカげている』(2010/09/28)
いくらTSUTAYAと提携して書籍・動画コンテンツを提供する流通経路を確保したところで、著作権保護がガチガチにかかっており、「ガラパゴス」を使わなければ閲覧できないなら、そんなコンテンツは無数のウェブサイトや、USTREAM、YouTubeといった動画サイトで、無料で提供されているコンテンツに比べれば何の魅力もない。
端末自体に可搬性があっても、例えばダウンロードしたコンテンツを、自分のパソコンに私的利用目的に限って自由にコピーできるなど、コンテンツ自体に「可搬性」がなければ、この種のコンテンツ閲覧用端末は、存在自体が無意味なのだ。
新しもの好きが物珍しさに購入して、遠からず放置される運命にある。それはこれまで登場した電子書籍端末と何ら変わりない。
コンテンツの可搬性を劇的に高める、著作権管理についての大胆な制度変更をしない限り、いくらセンセーショナルに売り出したところで、「ガラパゴス」のような電子書籍閲覧端末は必ず不発に終る。必ず、である。
東芝の「Regza Apps Connect」も、「懲りないなぁ」としか言いようがない。
iPhoneなどのスマートフォンに、東芝のHDDレコーダーや液晶テレビを制御できるアプリを無償提供し、例えば録画しておいたサッカーの試合のハイライトシーンに、自分で「しおり」(タグ)を設定できるらしい。
そしてそのタグの情報を、東芝の提供するクラウドサービスに送信することで、東芝のHDDレコーダー利用者どうしで、そのサッカーの試合の「名場面集」を共有できる。
こういった使い方を想定したのが東芝の「Regza Apps Connect」らしい。詳細は下記の記事を参照のこと。
『「Regza Apps Connect」はテレビの“サードインパクト” - 東芝・片岡氏に聞くクラウドテレビ構想のねらい』(ファイル・ウェブ 2010/10/04付け記事)
しかし、東芝のHDDレコーダーを使っており、かつ、iPhoneまたはAndroidまたはWindows Mobile搭載スマートフォンを使っており、かつ、同じ番組を録画する人間が、世界中にいったい何人いるというのか(東芝はこのサービスを欧米でも展開するらしいので)。
また、英語の出来ない日本人が日本語で名前をつけたタグは、正確な自動翻訳機能が存在しない限り、欧米人にはちんぷんかんぷんだ。英語のできない欧州人もたくさんいる。
大々的にクラウドサービスと謳い上げるのはいいが、あまりに想定できる利用者の母数が少なすぎて、こんなものが東芝の液晶テレビ、HDDレコーダー、ダイナブックを購入する動機づけになる訳がないではないか。
もっと言えば、ニコニコ動画のコメント機能は、まさに「Regza Apps Connect」がやろうとしている、同じ番組に視聴者がよってたかってタグを付けるというサービスそのものではないか。
東芝はニコニコ動画ですでに実現されている、今やごく当たり前になったオンライン・コンテンツの楽しみ方を、わざわざ東芝製品という縛りを付けることで、台無しにしようとしているに過ぎない。
ソニーを唯一の例外として、やっぱり日本の家電メーカーはハードウェア・メーカーとしての固定的な発想から、絶望的なほど抜け出せていないのだ。
東芝が売りにできるのは、専用のメガネを使わずに立体視を実現した液晶テレビの、超高性能な画像処理演算装置を開発した、優秀な技術力であって、決してニコニコ動画の二番煎じのクラウドサービスなどではないはずだ。
中核となる競争力のないところに経営資源を投入するのは、明らかに経営効率が悪い。だから日本企業はいつまでたっても、従業員は一流なのに経営は三流だと言われるのだ。
10年ほど前からCEATECをほぼ毎年見ていると、そう感じざるを得ない。