尖閣諸島問題で日経ビジネスオンラインに再び「トンデモ記事」!

先々週この「愛と苦悩の日記」で、日経ビジネスオンラインに尖閣諸島問題に関するトンデモ記事が掲載されたと書いた。
『尖閣諸島問題で日経ビジネスオンラインに「トンデモ記事」!』
この記事の筆者、北京支局長・坂田亮太郎氏が今日、再び尖閣諸島問題について日経ビジネスオンラインに記事を掲載した。
『日中関係は2005年以上に悪化する~中国で最も注目を集める日本人、加藤嘉一氏が予測する尖閣問題の今後』(日経ビジネスオンライン 2010/10/07掲載記事)
前回、尖閣諸島の中国名を「魚釣島」とする恥ずかしい間違いをして不安になられたか、今回は援軍を得てタイトルも仰々しい。
言うまでもなく、中国で最も注目を集める日本人は加藤嘉一氏ではなく、たぶん、浜崎あゆみあたりだと思うのだが、いぢわるな茶々はやめておこう。
今回の記事も「トンデモ度」の高い内容になっている。
何しろ下記に論じるように、「日中関係は2005年以上に悪化する」という加藤嘉一氏の根拠薄弱な推測を大々的に取り上げているのだから。仮にこの推測がはずれても、加藤嘉一氏の誤りであり、筆者に累は及ばない。賢いと思う。
しかし記事の冒頭で、2010/09/29に神戸市の華僑学校の窓ガラスが割られる事件を、だから言わないことはない、これこそ『愛国無罪』の典型だと、鬼の首を取ったように書いているのはやり過ぎ。
ほとんどの日本人は、こんな事件など誤差の範囲内だと受け流しているはず。日中関係に限らず、人騒がせな活動家はたくさんいらっしゃる。広島平和公園の石碑にペンキを塗ったり…。
また、坂田氏は「尖閣諸島沖で起きた中国漁船の衝突事件の影響で日本と中国の関係は一気に冷え切った」と書いているが、外交問題について、政府間の関係と、民間人レベルの関係をはっきり訳ない議論は、それこそ「愛国無罪」的な暴論だ。
僕も中国のマイクロブログ・サービス「新浪微博」で、思い切って尖閣諸島問題について言及してみたが、中国語でいう「憤青」のコメントは1件だけ。
もちろん中国人は釣魚島は中国領という前提で発言しており、この点で一般の中国人と日本人が合意点を見出すのは不可能だ。ただ、それがお互い様ということも双方わかっている。
今回の漁船衝突問題は、すでに中国の民間人レベルでは下火になっている。中国の月探査ロケットの打ち上げ成功や、今年の中秋節が人によって11連休になるなどが、ホットな話題だろう。
たぶん今回の日経ビジネスオンラインのような記事は、普通の中国人が見つけたら、大新聞傘下のネット雑誌は、まだ漁船の件で中日関係が悪化するうんぬんと書いている?と思われるだけだろう。
そしてインタビューに答えている加藤嘉一氏も「トンデモ」感たっぷりだ。
インタビューの冒頭でいきなり、シドニーのマラソン大会から北京へ帰ってきた朝5時の地下鉄で、8人ほどの「暴漢」に取り囲まれた話をしている。
日中関係が悪化したことを誇張するために、加藤嘉一氏がわざとこの逸話を選んだなら、真にうけた坂田氏に記者としての客観性が足りない。
「暴漢」というから、どんなひどい目にあったのかと思ったら、胸ぐらをつかまれて「日中関係がこんな状態なのに中国にいないのは卑怯だ」(引用)と非難されたそうだ。
これは、ふつうに考えれば名誉なことではないか。
あんたみたいに普段から中日関係について積極的に発言している重要な日本人が、こんな大事なときに外国に遊びに行っている場合じゃないだろ!と、加藤氏の中国での存在価値を、プラス評価する言葉にしか読めない。
それにこんなちょっとしたいざこざは、加藤氏が中国語で、顔を出して実名で情報発信していることで支払うべき「有名税」のうちだろう。
日本に住んでいる日本人記者や評論家でも、政治的に敏感なテーマをメディアで積極的に取り上げる著名人なら、加藤嘉一氏のような目にあうことは一度や二度ではなかろう。
仮に加藤嘉一氏が、普段の政治的発言にともなう、ご自身の政治的リスクさえ自覚していないなら、日本の外交上のリスクを論じる資格はない。
インタビューの後半は、日経ビジネスオンラインおなじみの民主党政権批判が延々と続き、目新しい論点は全くなく、読む価値なし。
一点だけ、加藤嘉一氏の民主党政権批判の論拠薄弱ぶりを示しておこう。
加藤嘉一氏は次のように話している。そのまま引用する。
「僕はこれまで中国で言論活動をしていく中で、日本人として1つのよりどころがありました。それが『日本は法治国家である』ということでした。」
そして今回、那覇地検が外交関係を考慮して船長を釈放したのは、明らかに政府の圧力によると思われることから、加藤嘉一氏は次のような性急すぎる結論を出している。そのまま引用する。
「だけれど、金輪際、僕は『法治国家』と言う言葉を中国で口にすることはできなくなりましたね。日本が法治国家であるという前提が崩れてしまったのですから、当然です。」
ほほう、そうですか。日本の戦後史上、政府が検察に圧力をかけたのは今回が初めてだとは知りませんでしたね~。
もちろんそんな訳はない。いわゆる「国策捜査」と疑わしき検察による捜査事例は、最近のライブドアや村上ファンドの事件からロッキード事件まで、いろいろある。
今回の政府の那覇地検への圧力も、今のところ疑惑でしかないが、逆に政府自身が疑惑のままにすることで、問題のさらなる悪化を防げているのだ。
今回の一件だけで「日本が法治国家であるという前提が崩れてしまった」のが本当なら、日本は歴史的な転換点に立たされていることになるが、誰がそんなことを信じるだろうか。
こういう加藤嘉一氏の露悪的なセンセーショナリズムを見るだけで、はっきり言って氏が取るに足りない論客だと分かる。
最近の日経ビジネスオンラインは、民主党外交を批判したいがために、日中関係の悪化を必要以上に喧伝しているふしがある。ためにする民主党政権批判は、日本経済新聞の名を汚すだけなので、もう少し冷静な議論をしたらどうか。