佐藤俊樹『社会は情報化の夢をみる』(河出文庫)を読んだ

佐藤俊樹『社会は情報化の夢をみる』(河出文庫)を読んだ。

どこかで聞いたことのある書名だと思われたら正解。映画『ブレードランナー』の原作、フィリップ・K・ディックのSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』のタイトルのパロディになっている。
(ちなみに、残念ながらこの小説を読んだことがないし、莫大な資金を投入した映画は観ない主義なので、佐藤俊樹の日本の情報化社会論批判と、この小説の内容に、どれくらい関連があるのか分からない。これが分かったらもっと面白いのかもしれないが)
佐藤俊樹氏の著作は、1年半前ほどに社会学者ルーマンの社会システム論に関する『意味とシステム』を読んで以来だ。

この「愛と苦悩の日記」でも、梅田望夫のウェブ2.0論や、勝間和代のツイッター論などを、何の根拠もない空論だと批判してきた。
そして、佐藤俊樹氏のこの『社会は情報化の夢をみる』は、梅田望夫や勝間和代が展開しているような、通俗的な情報化社会論のさまざまな変奏に対する、とても体系的、かつ、根本的な批判になっている。
勝間和代と、「Tsudaる」というネット俗語の語源になった津田大介の対談は、本書の中で「大笑い」の対象でしかない。
日本に限らず、世界で何度となく現れては消えていく、「新しい情報技術が社会を変えるのだ!」というもっともらしい情報化社会論が、いかにいい加減な土台の上に築かれているか。
佐藤俊樹氏は、ルーマンの社会システム論を援用しながら、バッサバッサと斬っていく。とっても痛快な本だ。
有名なマクルーハンのメディア論(と書きながら僕は未読なのだが)『グーテンベルクの銀河系』でさえ、本書では情報化社会論の典型例に過ぎず、本来は結果であるものを、誤って原因と見なす間違いを犯していると、根本的に批判されている。
本書に通底する佐藤俊樹氏の議論は一貫しているが、それをさまざまな事例に当てはめて説明しているので、ルーマンの社会システム論を援用しているものの、決して難解ではなく、十分納得できる内容になっている。
日ごろから梅田望夫や勝間和代のような論客が展開している、「新しいXXXという技術は社会を変える力をもっている!」といった議論にうんざりしている人は、本書を読んで自分の中で彼らにトドメを刺してみよう。
かなりスッキリすること間違いなしである。