イランのサキネさん解放を求めているパリの団体は説得力なし

イランのサキネさんの死刑中止と解放を求めているパリの団体、英語のサイトをよくよく読んでみると、全然ダメだ。
「Free Sakineh(サキネを開放せよ)」http://freesakineh.org/
ここの英語版の署名欄を読むと、次のように書いてある。
We call for the elimination of stoning as a practice in Iran, a practice which violates any and all definitions of human rights.
(イランにおける石打ちの刑は、いかなる意味でも人権を侵害であり、廃止を求める)
We call for the elimination of other forms of the death penalty or flogging or imprisonment for those convicted of “adultery”.
(「姦通」により有罪となった人々の死刑、鞭打ちまたは収監以外の形式による処罰の廃止を求める)
つまり、彼らの主張は次の2点だ。
(1)「石打ちの刑」は人権侵害だ。
(2)「姦通」を処罰するな。
まず(1)についてだが、「石打ちの刑」が人権侵害で、他の死刑執行の方式が人権侵害でないというのは、あまりに恣意的な線引きだ。例えば、日本の絞首刑は人権侵害にならないのとすれば、それは何故か?中国の銃殺は?米国の薬物注射は?
こんな恣意的な線引きでは何の説得力もない。
次に(2)についてだが、女性の姦通を処罰するのがいけないなら、麻薬の密輸で死刑になる東南アジア諸国はどうなのか。そもそも女性の姦通と麻薬の密輸の、どちらがより重罪かなどということを、完全に客観的に比較することなどできるのか。
やはり女性の姦通は処罰の対象にするべきでないというのは、あくまで特定の先進諸国の価値観でしかない。その価値観を、そもそも政教分離の考え方も相対化されてしまうイランのような国に強要するのは、価値相対主義、思想・信条の自由に反する。
ところで、中国のTwitter(ツイッター)ライクなマイクロブロク「新浪微博」に、死刑廃止論を勇気を出して書き込んでみたところ、とくにアカウント停止などの憂き目にはあっていない。
一人だけコメントをもらったが、「石打ちは残忍だ」という主張で問題外。中国でいまだ主流の銃殺が残忍でない理由は何ですか?と反論したかったが、水掛け論になるのでやめておいた。
もう一人、Twitter(ツイッター)の方で、香港在住の中国人から中国語でリプライがあったが、こちらは「姦通を石打ちの刑にするなんてありえない。やめないならイスラム教など消えてしまえ」という主旨で、中国共産党の昔からの宗教嫌いイデオロギーでしかなく、やはり問題外。
いずれにせよ、サキネさん解放を求めているパリの団体と、その賛同者は、人権擁護の名のもとに、先進国の価値観を一方的にイスラム世界に押し付けているだけだ。これでは何の説得力もない。
ただし、「新浪微博」上でサキネさん解放署名を呼びかけた文章に、僕が見つけた限り一つだけ「各国には各国の制度があるので、この種の署名をするのは内政干渉だ」という主旨の中国語のコメントを見つけた。
中国人の中に、文化相対主義を理解している人が確かに存在するということだ。これは個人的にかなり心強いと感じた。中国で信仰の自由についての議論が、公然と行われる時代もそう遠くないかもしれない。