機密情報管理を無視した日経ビジネスオンラインのiPad活用記事

もう一つ、日経ビジネスオンラインの奇怪な記事。こちらはiPadブームに便乗した連載だ。
「川口部長の仕事に使うiPad 第1話『クラウド三種の神器』の巻」(日経ビジネスオンライン2010/08/04掲載記事)
要約すると、iPadのことをパソコンと勘違いしている「川口部長」に、iPad用の3つのアプリ、Dropbox、Evernote、GoodReaderを紹介して、仕事に活用してもらうという、日経の大好きなストーリー仕立ての連載だ。
問題はこの3つのうちキーとなるクラウドサービスの「Dropbox」の利用規約にある。
この記事の中では「Dropbox」の利用規約について一切ふれられていないが、実際に「Dropbox」サービスのサイトに行って「Policies」をよく読んでみると、驚くべきことが、ちゃんとその部分だけ全て大文字で書いてある。以下に引用する。
「BY UTILIZING THE SITE, CONTENT, FILES AND/OR SERVICES, YOU CONSENT TO ALLOW DROPBOX TO ACCESS YOUR COMPUTER TO ACCESS ANY FILES THAT ARE PLACED IN THE ‘MY DROPBOX,’ ‘DROPBOX’ FOLDERS, AND/OR ANY OTHER FOLDER WHICH YOU CHOOSE TO LINK TO DROPBOX.」
(出典:Dropbox : Terms of Service
日本語に翻訳してみる。
「当サイト、コンテンツ、ファイル、および、サービスを利用することにより、あなたはDROPBOX社に対し、あなたのコンピュータへアクセスし、『MY DROPBOX』『DROPBOX』フォルダー、および、あなたがDROPBOXにリンクすることを選択した他のすべてのフォルダーの中に置かれている、すべてのファイルにアクセスすることを許可することに同意します」
要するに、利用者がDropboxクラウドサービスにアップロードしたすべてのファイルについて、DROPBOX社が任意にアクセスすることに同意した上で使ってくださいね、ということだ。
これはDropboxサービスにおける「パブリックフォルダ」や「共有フォルダ」だけではなく、それ以外のプライベートなフォルダ内のファイルについても、DROPBOX社が任意にアクセスできることに同意する必要があることを意味する。
このような利用規約では、まず日本では、個人情報保護法に定められた、個人情報の委託先管理の要件を満たせないと思われるので、個人情報を含むファイルはDropboxにアップロードできない。
また、通常の商習慣から考えて、DROPBOX社のような全くの第三者に、取引先からあずかった重要な情報に任意にアクセスさせることはできない。なので、自社の商取引に関する重要な情報をDropboxにアップロードすることもできない。
また、取引先と無関係な、純粋な自社の情報であっても、インサイダー情報を、全くの第三者であるDROPBOX社に任意にアクセスさせるわけにはいかないので、自社の経営状況や事業展開に関わる重要な情報をDropboxにアップロードすることもできない。
DROPBOX社が利用者に約束してくれるプライバシーポリシーとセキュリティーは、あくまで、利用者自身の個人情報の保護と、DROPBOX社と利用者「以外」に対する漏えいを防ぐことである。
DROPBOX社自身は、利用者がアップロードした、利用者自身「以外」の個人情報や、利用者自身の個人情報「以外」の重要情報を、いわば覗き放題という利用規約になっている。
上記の日経ビジネスオンラインの記事は、この点にまったく触れずに、DropboxをiPadのビジネス活用に不可欠な「三種の神器」の一つとして積極的に紹介している。
実務上の利用を想定した記事として、はなはだ不用意としか言いようがない。

機密情報管理を無視した日経ビジネスオンラインのiPad活用記事」への2件のフィードバック

  1. 制作日誌 - Gii !! -

    [著作権]Dropboxの利用規約にあるファイルの権利放棄に関する記述

    Dropboxを使おうかと思い利用規約を読んでいたら、こんな記述があった。 ’Files and Folders’の項の最後の文。 ..and you agree to waive, and hereby do waive, any legal or equitable rights or remedies you have or may have against Dropbox with respect thereto. 拙…

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